映画評「三尺魂」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・加藤悦生
ネタバレあり

WOWOWのパンフレットでタイムループものと知り、二か月前に「アルカディア」という低予算のタイムループものを観たばかりということもあって、この手の相場通り低予算のワン・シチュエーションものなのだろう…と鑑賞しようかどうか少し逡巡したが、邦画らしいアプローチもあるかもしれないと思い結局観た。

SNSを通じて、集団自殺の発案者にして花火師津田寛治の作った巨大な三尺玉の置かれた小屋に、仕事で悩んで鬱病になった研修医の木ノ本嶺浩、息子を事故死させた主婦の辻しのぶ、そしてイジメを苦にする女子高生・村上穂乃佳の計四人が集まる。最後に現れた少女が余りに若いのに驚いた他の三人が彼女を除外しようとするのを振り切って彼女が発火装置のボタンを押す。
 が、その瞬間に津田氏は前の記憶を持ったまま同じ状況にいることに気付く。それを繰り返すごとに研修医、主婦がタイムループの共通認識を持つ。少女だけはこれを夢と思うが、その“夢”の中での彼らの発言に感じ入って自殺を止める。そして彼女の自殺防止を懸命に考えたことが彼ら自身の死への願望を思い直す結果となる。

すれた大人らしく言えば、実に解りやすい自殺防止キャンペーン映画である。もう少し内容に溶け込むように自然体にその思いを表現できたら優れた作品と言えたであろうが、余りに直球すぎて映画的には物足りない。
 例えば、観客に少女が花火のボタンを押させないことが無間地獄のタイムループを終わらせる方法であると早々に気付かせる作劇なので、どんなに不純なことであっても彼女にボタンを押させない方法を案出するという、もっとコメディー色の強い作り方の中に自殺を引き留める幾つかの強烈な台詞を配分した方が“商業映画”として見応えのある作品になったであろう。

ただ、人生は諦めてはいけないという作者(脚本・監督=加藤悦生)の思いは十分に伝わり、後味は実に爽やかと言うべし。元気づけられる映画とは言って良いかもしれない。

元気と言えば元号(強引ですな)。今日は平成最後の日。先日以来「東大王」で司会者や回答者が西暦の事を“年号”と繰り返しているのに遭遇した。年号=元号であることを知らない人が多いことに僕はびっくり。厳密には、一世一元になった明治以降年号を元号と公称するようになったらしい。

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