映画評「体操しようよ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・菊池健雄
ネタバレあり
主人公は38年勤めて定年退職ということだから多分60歳なのだろう。僕は現在ほぼ同世代であるので、シネフィル的な分析をすると特にな~んということない作品と言うべきなのだが、共感したり身に染みるところが多く、★一つがとこ余分に進呈する。同時に、演ずる草刈正雄は実際には兄と同じ生年で、ちと不思議な感じ。
文具メーカーを定年退職した草刈氏が自由を満喫しようと思っていると、妻の死後18年間一人で育てて来た娘・木村文乃30歳にこれからは家事は全部自分でしなさいと宣言されたので大弱り。暇を持て余しているある時、涙を流している中年女性・和久井映見が気になって追いかけるうちに、彼女の経営する喫茶店にお邪魔することになって、町民二十名ほどでやっている朝の体操に誘われる。気になる彼女の誘いだから断るはずもない。
しかし、真面目一方で融通の利かない彼は、怪我をした会長きたろうが留守の時に、張り切りすぎてきちんとした体操を強要して皆から顰蹙を買い、体操グループが二分されてしまう。きたろうの経営する便利屋にも勤め始めた結果、その若い同僚・渡辺大知が娘の恋人と判明、普段の言葉に反して反対してしまう。
益々娘の心が離反するも、きたろうの勧めにより、主人公、娘、その恋人とで、映見ちゃん(笑)の息子との再会を画策する。その結果全てが好循環に進み、父親と和解した娘は米屋の実家に戻ってやり直すことにした渡辺君と結婚、家を出る。文字通り一人暮らしになった彼は身を入れて家事をこなし、今日もまた体操に出て行くのである。
テーマは、定年退職した人間の居場所についての考察である。仕事人間として定年退職を迎えた中年男性は会社という居場所を失くすと、特段の趣味もないと、居場所がないのである。自由を満喫すると言っても実はやることがない。そういう意味では娘が彼に家事を強要するのは、親心ならぬ子心(?)と言えないこともないという気がする。
また、女性へのちょっとした助平心(性的なことではありませぬ)が主人公を体操に結び付け、その結果彼は地域住民とも良い関係を築き、結果的に娘とも和解する。助平心と体操は使いようというやつですな。
多分に細君のいる定年退職待機組にこの映画が参考になるところは限られるが、コミュニケーションの重要性は普遍的。頑張ってください。
僕もコミュニティーの催し物にはなるべく参加して交流を図っている。
2018年日本映画 監督・菊池健雄
ネタバレあり
主人公は38年勤めて定年退職ということだから多分60歳なのだろう。僕は現在ほぼ同世代であるので、シネフィル的な分析をすると特にな~んということない作品と言うべきなのだが、共感したり身に染みるところが多く、★一つがとこ余分に進呈する。同時に、演ずる草刈正雄は実際には兄と同じ生年で、ちと不思議な感じ。
文具メーカーを定年退職した草刈氏が自由を満喫しようと思っていると、妻の死後18年間一人で育てて来た娘・木村文乃30歳にこれからは家事は全部自分でしなさいと宣言されたので大弱り。暇を持て余しているある時、涙を流している中年女性・和久井映見が気になって追いかけるうちに、彼女の経営する喫茶店にお邪魔することになって、町民二十名ほどでやっている朝の体操に誘われる。気になる彼女の誘いだから断るはずもない。
しかし、真面目一方で融通の利かない彼は、怪我をした会長きたろうが留守の時に、張り切りすぎてきちんとした体操を強要して皆から顰蹙を買い、体操グループが二分されてしまう。きたろうの経営する便利屋にも勤め始めた結果、その若い同僚・渡辺大知が娘の恋人と判明、普段の言葉に反して反対してしまう。
益々娘の心が離反するも、きたろうの勧めにより、主人公、娘、その恋人とで、映見ちゃん(笑)の息子との再会を画策する。その結果全てが好循環に進み、父親と和解した娘は米屋の実家に戻ってやり直すことにした渡辺君と結婚、家を出る。文字通り一人暮らしになった彼は身を入れて家事をこなし、今日もまた体操に出て行くのである。
テーマは、定年退職した人間の居場所についての考察である。仕事人間として定年退職を迎えた中年男性は会社という居場所を失くすと、特段の趣味もないと、居場所がないのである。自由を満喫すると言っても実はやることがない。そういう意味では娘が彼に家事を強要するのは、親心ならぬ子心(?)と言えないこともないという気がする。
また、女性へのちょっとした助平心(性的なことではありませぬ)が主人公を体操に結び付け、その結果彼は地域住民とも良い関係を築き、結果的に娘とも和解する。助平心と体操は使いようというやつですな。
多分に細君のいる定年退職待機組にこの映画が参考になるところは限られるが、コミュニケーションの重要性は普遍的。頑張ってください。
僕もコミュニティーの催し物にはなるべく参加して交流を図っている。
この記事へのコメント
>RCサクセションの ”体操しようよ”
ないと言えばないし、あると言えばありますデス。
というのも、エンドロールでこの曲がかかります。タイトルも戴いたのかな?
最近の邦画はほとんど観ないんですが、ちょっと観てみようかな。
Prof.は産地やジャンルに拘らずに丁寧に解説してくださるので、色々観たい映画が増えてしまって嬉しい悲鳴をあげております。
大変恐縮しております。
少し調べて分かったことは、この曲の入ったLPが発売されたのが1980年。本作の主人公が勤め始めたのも(計算上)1980年。
それを考えると、脚本家がこの曲に触発されてアイデアをひねり出したことはほぼ間違いないのではないか、という気がします。
そうですか・・PLEASEが出てからもう40年ですか・・・
ふと思い出したのですが、高橋秀実の「素晴らしきラジオ体操」と「定年入門」にも触発されているかもです。
「定年入門」は未読ですが「ラジオ体操」は面白かったです。
>高橋秀実の「素晴らしきラジオ体操」・・・にも触発されているかも
近年のノンフィクションはとんと分かりませんが、脚本家はフィクションだけでなく、様々な芸術・ジャンルに触れているでしょうから、十分あるでしょうね。
アマゾンから、二つ頼んだうちのマイルス・デイヴィス20枚セットの一つが入荷予定不明と連絡あり。多分このままキャンセルになってしまうような気がします。より欲しいほうなのでちょっとショック。
一枚一枚買うしかないのかなあ。
うちにレコードが10何枚かあります。聴かないので欲しい方があれば差し上げたいのですが、マニアの方はCBS・SONYの音は良くないとか、色々ハードルが高いのでなかなか貰い手がなくて・・・
スケッチ オブ スペイン と RELAXIN’ WITH THE ~ は
ジャケのデザインが好きなので手元に置いておきたいですが、
70年前後に買ったレコードでもよければ差し上げますが?
注文してらしたのは何が入っているセットですか?
ご提案、有難うございます。
どちらかと言うとサックスが好きで、コルトレーンやソニー・ロリンズのほうが詳しいです。
マイルス・デイヴィスは代表的なところを幾つか聞いていて、後は耳学問でLPのタイトルを憶えている程度。だから寧ろセットで買いたかったわけです。
既に入手済みのセットはBlue Note、Prestige、CBSの初期までカバーし、「スケッチ・オブ・スペイン」「カインド・オブ・ブルー」も入っています。
問題のセットはCBSを遍くカバーし、「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」からフュージョン的な「ビッチェズ・ブリュー」以降も入っています。電気楽器を取り込んだ「イン・ア・サイレント・ウェイ」が一番欲しかったわけですが。
レコードの形で手に入れたいのはやまやまですが、住所等の連絡を公に行うのはちょっと危険だなあと思います。メールもアドレスをオープンにすると、次の日からスパム・メールがとんでもない数で舞い込む(経験済み)のでこちらも避けたいところ。
7月のブログ体制変更以前であれば、ブログ専用の連絡ツールが利用出来て住所交換くらいは安心して出来たのですが。
今回のCDが最終的にキャンセルになった場合、多分大半は図書館から借りることができるようなので、当座はコピーで我慢しようかと思っています。
ビッチーズブリューも在庫してるのに残念です。
私もサックスのほうが好みです。モダンジャズ自体をほとんど聴きませんが。
中学生の時初めて聴いたジャズがソニー・ロリンズなので、
その辺はすんなり耳に入ってきますが、コルトレーンとかはしんどいです。 なぜかチャーリー・パーカーは好きです。
古い音楽が好きなので、ビリー・ホリデイ繋がりでレスター・ヤングとかは癒されますね。古くないけどストーンズのバックで吹いていたボビー・キーズも好きですね。昔のR&Bのバックのホンカーっていうんですか?吹きまくるやつ?ああいうのはベタで好きです。
今日はこれからアンプの真空管の交換に行ってきます。音のバランスが良くなったら、マイルスでも聴いてみましょう。(笑)
>名無し
ノー・プロブレムです。
>裏技
もう少し考えてみますが、ないでしょうかなあ。
>コルトレーンとかはしんどいです
僕は初期の「ブルー・トレイン」や中期の「マイ・フェイバリット・シングズ」辺りまで。後期の「至上の愛」になるともうピンと来ない。
>チャーリー・パーカーは好きです。
昔クリント・イーストウッドが監督した「バード」という作品を観ましたが、ちと勉強しないと(笑)。
>レスター・ヤング
昔「映画館でビリー・ホリデイ物語」という作品を観ましたが、日本のTVには一度も出ていないと思います。当時はダイアナ・ロスが主演なので観たというだけなので、もう一度観たい。
>ボビー・キーズ
もしかしてジョン・レノンの「真夜中を突っ走れ」も彼ですか?
いかにもそれっぽい。
>ホンカー
車のクラクションを鳴らし続けることを英語でhonkerというらしいですが、音楽用語にもなっているのですねえ。
古いR&Bと言うと、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツ辺りの賑やかなあれですよね?
>今日はこれからアンプの真空管の交換に行ってきます。
わぉ。本格的だっ!
古いレコードを聴くのはやはり管球が良いですかね。当方、オーディオフェアで聴いた程度で、専らトランジスター・アンプです。管球の方がスピードがある感じで、周波数レンジの狭い古いレコードをもたつかせないイメージがありますが、どうですか。
なにせ、アンプもスピーカーもカートリッジも70年代のレコード全盛期のものなので、レコードには良いようです。
ボビー・キーズはレノンにも参加してると何かで読んだことがあります。
ビリーホリデイ物語はオリバーストーンのドアーズと並んで、最悪の音楽もの映画と思っておりますが・・・あんなもの観なくていいんじゃないでしょうか。
ルイ・マルの「好奇心」の冒頭、チャーリー・パーカーが流れてるシーンがなんともお洒落です。ルイ・マルは音楽使いのセンスが良すぎます。
今、マイルスのリラクシンを聴いてますが「これぐらいならすんなり聴けるね」と言ったら夫が「初期はすごくいいねん、あのトンボ眼鏡かけるようになってから訳わからんようになった」と申しておりますが・・・
アンプに問題がなくて良かったですね。
管球アンプ欲しいわあ。
しかし、電気代がかかるのが貧乏人にはしんどい(笑)
>ルイ・マルは音楽使いのセンスが良すぎます。
確かに「好奇心」にチャーリー・パーカーがかかるようですね。先ほどYouTubeへ直行したら聴けました(良い時代だ)。
「死刑台のエレバーター」のマイルス・デイヴィスも印象深いです(あれでヌーヴェルヴァーグの背景音楽はモダン・ジャズと相場が決まったのでは?)が、「ルシアンの青春」のジャンゴ・ラインハルト「マイナー・スイング」に痺れてアメリカに出張した際にベスト盤を買ってきました。今ならアマゾンで買いますけど、当時そんなものありませんからね。
全然話が変わりますが、マルと同じ時代に活躍したロジェ・ヴァディムの作品に「花のようなエレ」という凡作がありまして、僕が2002年3月ホームページにこの映画でビートルズの「へルター・スケルター」が誰にも解らないようにこっそり使われている(わが大発見なのですよ、これ)と書きました。昨日ちょっと検索していたら、僕のこの記事が見事にパクられていました。どちらか言うと嬉しいのですがね(笑)
>今、マイルスのリラクシンを聴いてます
つられて当方もCDを取り出して聞きました。この時代のモダン・ジャズはベースにも痺れる。
>あのトンボ眼鏡かけるようになってから訳わからんようになった」と申しておりますが・・・
「イン・ア・サイレント・ウェイ」辺りでしょう?
僕もきっと訳がわからんだろうと思いつつ、聴きたいと思っているわけです。変態ですね(笑)
大丈夫ですよ、暖かい良い音しますよ。放熱させないといかんので、ラックには入れられませんけど。
マイナースイング、大好きです。何度も録音されてますけど、映画で使われたのがベストバージョンだと思います。
ルイ・マルはほんとにセンス良いです。
ルシアンの冒頭5分は完璧ですね。
>真空管の電気消費はたいしたことないそう
案外そうかもしれません。一個あたり1Wというのはいかにも少ない気がしますが(笑)。
昔、ものすごい管球アンプを使っている人が、エアコンがんがんに効かせないと居られないくらい部屋が暑くなると言っていたのを、うろ覚えで、エアコンの電気代と混乱していたかもしれないですね。エアコンを付けるとその音が気になるわけですが。
>マイナースイング、映画で使われたのがベストバージョン
そう思います。
演奏を終えた後の満足感も伝わってきますね。
うろ覚えでホンカーと書いてしまって、自分でも説明のしようががなく、「ホンカー、サックス」で検索したら詳しく映像までアップされていて、面白かったです。
ホンクにクラクションという意味があると教えていただいて、ストーンズの” country honk ” を思い出しました。
ご存じだと思いますが、” honky tonk women " と同曲アレンジ違いですが ”country honk " のほうには頭と最後にクラクションの音が入ってる謎?が解けました。洒落で入れてたんですね。
Prof.の影響で最近マイルス聞いてます。昨日は "BAGS'GROOVE"
今は ”MY FUNNY VALENTINE" です。マイルスを聴くというよりはセロニアス・モンクやソニー・ロリンズをメインに聴いてる感じですが、それにしても何十年も手に取らなかったものを聴きだすって我ながら驚きです。
(Mアドレス欄が復活したんですね。当然非表示ですよね?)
>”country honk "
LP"Let It Bleed"を持っていますから、曲は知っていますが、クラクションは忘れていたなあ。正に洒落ですね。
>"BAGS'GROOVE"
変な影響を与えてすみません。
しかし、レコードも喜んでいるでしょう!
コピーで持っているので、久しぶりに聴いてみました。
タイトル曲は、ミルト・ジャクソンのいかにもそれらしいですが、MJQみたいでやはり聞きやすい。
ピアノはセロニアス・モンクでしたか。カー・ステレオでコルトレーンを聴いていた会社の先輩が「モンクは面白い」と言っていたのを思い出します。
>Mアドレス
記事ごとにできるので、時間限定でやれはできないこともなさそうですが、それでも躊躇しますよ。
レコードは折角聴き始めたのですから、暫く持っていたら如何ですか。
モカさんが投稿を続けてくれ、当方がレコードが必要となったら、事前に時刻を伝えて、打ち込んでみることも考えてみます。
もう、この勢いでピンクフロイドにまで手を出しそうです。
あるんです、実は、1枚だけですが・・・牛のやつが・・・捨てなくてよかった・・・(ピンクフロイドは難易度高いな・・)
なんでマイルスを毛嫌いしていたのか謎です。顔が昆虫みたいで怖かったとしか思えません。セロニアス・モンクとの因縁のレコードが家にあったとは一昨日まで気づきませんでした。
モンク好きなんで、大発見です。
おっしゃる通り、せっかく聴き始めたんだし心残りのないように聴いてみます。「死とはモーツァルトが聴けなくなること」って小林秀雄でしたっけ?言ってましたが、ほんとに生きてるうちに
聴いておかなくては成仏できませんね。
>この勢いでピンクフロイドにまで手を出しそうです。
>牛のやつが
それは実に良いことです(笑)
牛は「原子心母」ですね。
僕が一番聴いたのは隙が全く無い「狂気」ですが、これのA面(これが曲としての原子心母ですが)もよく聞いたなあ。フォークロック的なB面も悪くない。
「狂気」はLPの始まりにあらましを紹介し、「原子心母」は最後の方にそれまでを総括(笑)する。この辺はクラシック趣味。
>「死とはモーツァルトが聴けなくなること」
>って小林秀雄でしたっけ?言ってましたが
小林秀雄も言いそうですが、アインシュタインらしいですよ。アインシュタインとモーツァルトは余り結びつきませんが、天才は天才を知るですかね。
いずれにしても、成仏する前に聞いておくべき音楽、観ておくべき映画、読んでおくべき本は絶対ありますね。ぼうーっと生きていてはそれこそ勿体ない。