映画評「ボヘミアン・ラプソディ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2018年イギリス=アメリカ合作映画 監督ブライアン・シンガー
ネタバレあり
僕がクイーンの名前を憶えたのはシングル「キラー・クイーン」Killer Queenによる。ビートルズ亡き後強力なポップなロック・バンドがほぼいなくなったので、良い後釜ができたと感じた。中学の時かと思っていたら、Wikipediaに当たったところ1974年発表なのでもう高校生でしたな。ファンになる程ではなかったものの、その後の活躍はほぼ期待通りだったと思う。
本作は昨年尋常ならぬ大ヒットを遂げたクイーン・・・というよりリード・ボーカル(キーボード)担当フレディ・マーキュリーの伝記映画であるが、世間の反応を考えると肩透かしの出来栄えだった。特にクイーンというバンドが出来て一流になっていくまでが余りに駆け足すぎて大いに不満が残る。ベースのジョン・ディーコンに至ってはいつの間にかメンバーに加わっていたという感じ。
後にバンド・メンバーになるブライアン・メイ(グウィリム・リー)やロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)と知り合った頃(1969年)ガールフレンドのメアリー・オースティン(ルーシー・ボーイントン)とも親しくなったフレディ(ラミ・マレック)は、彼女を婚約者として愛しながらも、次第に頭をもたげる同性愛志向に苦悩する。バンドは成功を積み重ねながらも、彼の独断的な性格や同性愛に基づくであろう付き人の偏重などから、他のメンバーとの間に大きな軋轢が生じて行く。そうした苦悩の末に付き人と決別してメンバーと和解、エイズと闘病しながら1985年のライブ・エイドの舞台に立つ。
多くのファンが、出自や容貌における問題や同性愛絡みの葛藤、エイズ発症、他メンバーとの確執を経ての感動的な復活であるこの幕切れを大いに歓迎したのであろうが、残っている音源に合わせてのライブ再現の見事さはともかく、水準を大きく凌駕するものとは言い難い。その前段が余りにも型通りなのである。
“長いからラジオ向きではない”とプロデューサーにシングルカットを反対された「ボヘミアン・ラプソディ」を完奏させないのも平仄が合わない(ライブは実際通りだろうから仕方がないとして、エンディング・ロールに流すには丁度良い長さではないの?)。
その代わり「ボヘミアン・ラプソディ」「地獄へ道づれ」Another One Bites the Lust製作過程や「ロック・ユー」We Will Rock You 誕生秘話が興味深い。但し、「ロック・ユー」は僕が大学に入ったばかりの1977年の発表だから、この映画のように1980年発表の「愛という名の欲望」Crazy Little Thing Called Love「地獄へ道づれ」の後のエピソードと成しては、個人的な記憶と大きな齟齬が生れ、個人的にピンと来ない感じになった。「ロック・ユー」は主にラジカセで聴き、後の二曲はカセット・デッキの高音質で聴いたわけで、この記憶との違いは非常に大きいのだ。
もう一点。「ボヘミアン・ラプソディ」は評論家受けはしなかったものの、大ヒットはした。確かに言わずもがなの事実とは言え、映画が評論家の部分だけを取り上げて大ヒットしたことに言及しないのはやや片手落ちではあるまいか。
「ロック・ユー」は日本の民謡みたい。高校野球の応援曲として昔はビートルズ「オブラディ・オブラダ」が定番だったけれど、最近は「ロック・ユー」が目立つ。あっさり終わってしまった日本シリーズでも盛んにかかっていた。ビートルズ・ファンとしては残念だね。
2018年イギリス=アメリカ合作映画 監督ブライアン・シンガー
ネタバレあり
僕がクイーンの名前を憶えたのはシングル「キラー・クイーン」Killer Queenによる。ビートルズ亡き後強力なポップなロック・バンドがほぼいなくなったので、良い後釜ができたと感じた。中学の時かと思っていたら、Wikipediaに当たったところ1974年発表なのでもう高校生でしたな。ファンになる程ではなかったものの、その後の活躍はほぼ期待通りだったと思う。
本作は昨年尋常ならぬ大ヒットを遂げたクイーン・・・というよりリード・ボーカル(キーボード)担当フレディ・マーキュリーの伝記映画であるが、世間の反応を考えると肩透かしの出来栄えだった。特にクイーンというバンドが出来て一流になっていくまでが余りに駆け足すぎて大いに不満が残る。ベースのジョン・ディーコンに至ってはいつの間にかメンバーに加わっていたという感じ。
後にバンド・メンバーになるブライアン・メイ(グウィリム・リー)やロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)と知り合った頃(1969年)ガールフレンドのメアリー・オースティン(ルーシー・ボーイントン)とも親しくなったフレディ(ラミ・マレック)は、彼女を婚約者として愛しながらも、次第に頭をもたげる同性愛志向に苦悩する。バンドは成功を積み重ねながらも、彼の独断的な性格や同性愛に基づくであろう付き人の偏重などから、他のメンバーとの間に大きな軋轢が生じて行く。そうした苦悩の末に付き人と決別してメンバーと和解、エイズと闘病しながら1985年のライブ・エイドの舞台に立つ。
多くのファンが、出自や容貌における問題や同性愛絡みの葛藤、エイズ発症、他メンバーとの確執を経ての感動的な復活であるこの幕切れを大いに歓迎したのであろうが、残っている音源に合わせてのライブ再現の見事さはともかく、水準を大きく凌駕するものとは言い難い。その前段が余りにも型通りなのである。
“長いからラジオ向きではない”とプロデューサーにシングルカットを反対された「ボヘミアン・ラプソディ」を完奏させないのも平仄が合わない(ライブは実際通りだろうから仕方がないとして、エンディング・ロールに流すには丁度良い長さではないの?)。
その代わり「ボヘミアン・ラプソディ」「地獄へ道づれ」Another One Bites the Lust製作過程や「ロック・ユー」We Will Rock You 誕生秘話が興味深い。但し、「ロック・ユー」は僕が大学に入ったばかりの1977年の発表だから、この映画のように1980年発表の「愛という名の欲望」Crazy Little Thing Called Love「地獄へ道づれ」の後のエピソードと成しては、個人的な記憶と大きな齟齬が生れ、個人的にピンと来ない感じになった。「ロック・ユー」は主にラジカセで聴き、後の二曲はカセット・デッキの高音質で聴いたわけで、この記憶との違いは非常に大きいのだ。
もう一点。「ボヘミアン・ラプソディ」は評論家受けはしなかったものの、大ヒットはした。確かに言わずもがなの事実とは言え、映画が評論家の部分だけを取り上げて大ヒットしたことに言及しないのはやや片手落ちではあるまいか。
「ロック・ユー」は日本の民謡みたい。高校野球の応援曲として昔はビートルズ「オブラディ・オブラダ」が定番だったけれど、最近は「ロック・ユー」が目立つ。あっさり終わってしまった日本シリーズでも盛んにかかっていた。ビートルズ・ファンとしては残念だね。
この記事へのコメント
フレディ・マーキュリーですが、プロポーションがブリジットバルドーによく似ているんですよ。どちらも両性具有的なのですが、巨乳や胸毛のせいでそう見てらっしゃらない人もいそうですね。私はフレディやバルドーみたいなタイプを観音様体質の方と見なしていますが、ああいう観音様体質の方は芸能界でスターになってくれれば、それで神のギフトをみんなに分け与えることになるので、十分天命を果たしている、だから私生活の方面はそっとしておいてあげてほしいんですね。
この映画では、フレディと私生活でゆかりのあったメアリーさんとジム・ハットンの両者に花を持たせていてよかったです。
>クイーンを主題にして冷戦末期を描いた時代劇
面白い観点ですねえ。僕には思い付かない(@_@)
>万人向けの少年マンガ風になっていました
それが堅苦しい爺の僕には“型通り”という印象になったのでしょう。型通りで良いこともあり、まずいこともあり、それは人それぞれですね。
>真の主役はクイーンの曲
その通りですね。
代表的なところはほぼ紹介されていました。「ロック・ユー」を実際の発表順を無視してあの段階で紹介するのは“やりすぎ”と思いますが。
>観音様体質の方
何となく解りまする。
>私生活の方面はそっとしておいてあげてほしい
僕は芸能人やスポーツ選手の私生活に興味がないですが、ワイドショーが人気があるようにそういうことが好きな人が多いのでしょうねえ。昔、同僚の奥さんが昼のワイドショーをビデオに予約録画までして見ていたと聞いて、吃驚したことがあります。