映画評「ゴールデンスランバー」(2018年韓国版)

☆☆(4点/10点満点中)
2018年韓国映画 監督ノ・ドンソク
ネタバレあり

伊坂幸太郎の同名小説の韓国におけるリメイク。日本版は不完全なものしか観ていないので単純な比較はできないのだが、比較するまでもなく映画として出来が良くない。

宅配便の運転手カン・ドンウォンが、連絡を取って来た元バンド仲間ユン・ゲサンと会っている最中、大統領候補の暗殺を目撃、旧友から彼自身の持っている荷物も実は爆弾と知らされる。ユンは彼の車でその荷物を持ち去り、結局爆死する。
 問題はその後で、何の憶えもない暗殺犯の汚名を着せられ、追いかける謎の組織から逃走する羽目になる。要は、大統領選に影響を与えたい存在が事件を起こして選挙戦を左右し、無名の者の犯行にしてケリをつける思惑なのである。
 しかし、途中で訳ありらしいその関係者キム・ウィソンから援助を受け、抗うことが難しい巨悪を出し抜こうとする。

【Yahoo!映画】では日本版と似た平均点で、好意的なコメントが目立つが、コメントを寄せている人の多くは韓国映画贔屓という印象。短縮版でしか観ていないから確かなことは言えないものの、日本版より良いということはない。平均点で日本版を1.5くらい下回るIMDbの評価が概ね妥当と思う。

まず巨悪側の描写がバランス的に多すぎるくらいなのに、彼らが選挙戦に対し何をしたかったのか不鮮明で、終盤になると明らかにマッチポンプ状態に陥って馬鹿らしさが生まれてしまう。

タッチとしては、ユーモラスなカットがサスペンスの中に紛れ込んでいるのが良くない。韓国大衆映画は前半喜劇後半シリアスという作劇が多いのに対し、本作は途中までユーモアとサスペンスが並行して出て来るので、僕の言うトーンの問題(前後で二つの映画を観ているような問題)には至らないものの、どちらにしてもサスペンス性が殺がれることになる。これでサスペンスを感じられる人は相当人が良い。

また、信頼というテーマを構成する上で重要な回想場面挿入の呼吸が甚だ悪く興ざめる。この場面の扱いそのものも拙く、他の場面との間で全く浮いている。

劇中ラジカセやカーステレオから流れる「ゴールデン・スランバー」は本物に似ているコピー? この曲を収めたビートルズのアルバム「アビイ・ロード」(50周年記念盤)が英国で50年ぶりに1位になったそうだ。奇跡じゃね。

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