映画評「王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年中国=香港合作映画 監督ツイ・ハーク
ネタバレあり

オランダの推理作家ロバート・ファン・ヒューリックが唐王朝に実在した人物を基に作り上げた判事ディーをシャーロック・ホームズに相当する探偵役とする時代ミステリー第3弾。第2弾は題名から「王朝の陰謀」が消えていたため見落としたらしい。

高宗と共に政権を担っている則天武后(カリーナ・ラウ)が、もっと権力を集中させるべく、高宗がディー判事(マーク・チャオ)に授けた神剣・降龍杖を奪おうと、幻術(妖術)を使う“異人組”を使って襲撃をかける。唐王朝に恨みを抱く封魔族がその間隙をぬって王朝を倒そうと壮大な幻術を駆使し、判事の指揮を取る大理寺(最高法務機関)を高宗と則天武后の避難先と信じて襲い掛かる。

個人的には、壮大なスペクタクルとアクションよりミステリーの方に注力してもらいたいのだが、今回はやはりミステリー性の希薄だった第一作以上にスペクタクル性が強く、避難していた判事が表舞台に出て来る1時間過ぎくらいから面白くなる。即ち、それまでの1時間がかなりもたついているということ。ここをもう少し楽しく作ってくれれば、★一つくらいは余分に進呈できた。

僕の期待するミステリー性もあるにはあるが、幻術のまやかしを暴くという程度で、結局はスペクタクルの要素に落ち込んでしまうから、それほどワクワクすることが出来ないのである。従って、日本の伝奇ファンタジー「陰陽師」二作をぐっとスケールアップした感じと言えば、当たらずと雖も遠からず。

しかるに、今回のスペクタクルは一種の忍術合戦であるからなかなか楽しい。中でも封魔族が繰り出す妖術を三蔵法師と孫悟空(殆ど白いキングコング)が退けるところがゴキゲン。昔見て結構気に入った東映映画「快竜大決戦」(1966年)の気分があり、未だVFXにやや貧弱な部分がある(第一作とは格段の差で相当改善されている)とは言え、こういうのは決して嫌いではないのだ。

第二作を見ないうちに、ディー判事はアンディ・ラウから若いマーク・チャオに代わり、ワトソン博士に相当する医官まで加わりやはり若いケニー・リンが演じている。さらに若い司法長官(ウィリアム・フォン)が仲間の一人として活躍する。
 この三人が年齢差が余りなく区別しにくいのが良からず、幻術遣いと対決するのはお手伝い組を別にすると判事と医官二人にしたほうが見通しが良くなりすっきり見られたのではないか。

監督がツイ・ハークだからワイヤー・アクションがふんだんに使われている。VFXではなくSFXが基調だった「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の頃とは周囲の風景に隔世の感がありますがね。

まだ頑張っている監督に、つい拍手をしたくなります。このダジャレ解りましたか?

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