映画評「レディース・アンド・ジェントルメン」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1973年アメリカ映画 監督ロリー・ビンザー
ネタバレあり
このブログによくコメントを寄せてくれるモカさんがマーティン・スコセッシが監督した「シャイン・ア・ライト」より断然良いということで薦めてくれたローリング・ストーンズの1972年の北米ライブを収めた記録映画。
9月に買ったブルーレイで観たのだが、何と先日民放のBSで放映された。少し凹みましたな(笑)。
ビートルズと違ってローリング・ストーンズの楽曲は曲を知っていても題名を憶えていないものが少なくなく、その程度の音楽ファンに過ぎない僕がどの程度楽しめるか少々疑心暗鬼で観始める。
創作性よりブルースやロックンロールの彼らなりの解釈で勝負しているように思える初期より、「夜をぶっとばせ」(1967年)あたりから「悲しみのアンジー」(1973年)くらいまでクリエイティヴになった中期(?)が好きで、曲として「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」やシングルにはなっていないはずの「ギミー・シェルター」といったハードロックを良く聴いた。
つまりこのライブは僕が一番好きな時代のライブで、全15曲のうち好みに入る曲が前半に多く演奏される。ところが、演奏自体は終わりに向うに連れて充実してくる感じで、「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」から最後の「ストリート・ファイティング・マン」へと繋がれていく演奏はブルースの系譜を継ぐロックならではの怒涛ぶりと言って過言ではない大迫力。僕の限られた文才と音楽知識ではそれ以上の表現ができないが、圧倒される。この時代がストーンズの全盛期・充実期ということになると多くのファンが仰るのも納得できる次第。
ギターはオリジナル・メンバーのキース・リチャーズとブライアン・ジョーンズの後釜ミック・テイラー。画面で見るとテイラーが主にリード・ギターを務めてい、それも淡々と演奏しているのが、時にボーカルも担当するリチャーズと対照的で非常に面白い。
それ以上は僕より詳しいモカさんに任せたほうが良いでございましょう。
最後は“映画評”論。映画としてどうかと言えば、こういう純然たる記録映画は映画演出としてどうのこうの言えるところが余りないので評価するのが難しく、かと言ってライブそのものの評価を映画の評価とするのも違うだろう。実際には映像がなくても後に残る印象はさして変わらないと思われ、“聴き応えがある”と言うべきなのだろうが、映像作品としても☆4つ進呈しますデス。
ついでに音質。音声はモノラル。演奏会場の関係もあるのだろう、ベースの音がこもって音程がはっきりしない難点がある。中音域には厚みがあり、演奏を損なわない。
WOWOWも大物の昔のライブを結構放送しているが、なかなか見る時間がなくて無視することが多い。
1973年アメリカ映画 監督ロリー・ビンザー
ネタバレあり
このブログによくコメントを寄せてくれるモカさんがマーティン・スコセッシが監督した「シャイン・ア・ライト」より断然良いということで薦めてくれたローリング・ストーンズの1972年の北米ライブを収めた記録映画。
9月に買ったブルーレイで観たのだが、何と先日民放のBSで放映された。少し凹みましたな(笑)。
ビートルズと違ってローリング・ストーンズの楽曲は曲を知っていても題名を憶えていないものが少なくなく、その程度の音楽ファンに過ぎない僕がどの程度楽しめるか少々疑心暗鬼で観始める。
創作性よりブルースやロックンロールの彼らなりの解釈で勝負しているように思える初期より、「夜をぶっとばせ」(1967年)あたりから「悲しみのアンジー」(1973年)くらいまでクリエイティヴになった中期(?)が好きで、曲として「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」やシングルにはなっていないはずの「ギミー・シェルター」といったハードロックを良く聴いた。
つまりこのライブは僕が一番好きな時代のライブで、全15曲のうち好みに入る曲が前半に多く演奏される。ところが、演奏自体は終わりに向うに連れて充実してくる感じで、「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」から最後の「ストリート・ファイティング・マン」へと繋がれていく演奏はブルースの系譜を継ぐロックならではの怒涛ぶりと言って過言ではない大迫力。僕の限られた文才と音楽知識ではそれ以上の表現ができないが、圧倒される。この時代がストーンズの全盛期・充実期ということになると多くのファンが仰るのも納得できる次第。
ギターはオリジナル・メンバーのキース・リチャーズとブライアン・ジョーンズの後釜ミック・テイラー。画面で見るとテイラーが主にリード・ギターを務めてい、それも淡々と演奏しているのが、時にボーカルも担当するリチャーズと対照的で非常に面白い。
それ以上は僕より詳しいモカさんに任せたほうが良いでございましょう。
最後は“映画評”論。映画としてどうかと言えば、こういう純然たる記録映画は映画演出としてどうのこうの言えるところが余りないので評価するのが難しく、かと言ってライブそのものの評価を映画の評価とするのも違うだろう。実際には映像がなくても後に残る印象はさして変わらないと思われ、“聴き応えがある”と言うべきなのだろうが、映像作品としても☆4つ進呈しますデス。
ついでに音質。音声はモノラル。演奏会場の関係もあるのだろう、ベースの音がこもって音程がはっきりしない難点がある。中音域には厚みがあり、演奏を損なわない。
WOWOWも大物の昔のライブを結構放送しているが、なかなか見る時間がなくて無視することが多い。
この記事へのコメント
わぁ~出ましたね!
さすが、的を得たコメントで、付け足すことなぞございません。
それにしてもどうしてこんな凄いのが何十年もお蔵入りになってたんでしょうね。
一説では、ミック・テイラーのプレイが上手すぎてキースが嫌がったんだじゃないか、とも囁かれているようですが。
それにしてもスコセッシのあれとは比べられませんよね。
あちらは初めから映画化目的の21世紀のショーですし、
こちらは70年代初頭、そんなに広くもないステージでカメラも2台くらいですか? 取り合えず録っとこか~みたいな乗りでしょうか。
その辺もルーズでタフなストーンズらしくてよろしゅうございます。
ビル・ワイマンのベースギターのコードが短くてあれ以上前に立てなかったとか・・・
そういえば、さっきニッキー・ホプキンスのCDが出てきたのでちょっと聞きながらライナーノーツを読んでたら、彼は持病があったのでスタジオミュージシャンの道を選んだらしく、たまたま体調が良かった時期にこのストーンズツアーがあったので珍しく参加した、と書いてありました。
ちらっと映ってましたね。
ストーンズはツェッペリンみたいに分厚い音を出せるバンドじゃないから、ホーンやキーボードを上手に取り込みますね。
(ストーンズはツェッペリンの登場にはかなり危機感があったようです。)
ニッキー・ホプキンスは1994年に、ボビー・キーズは2014年に天に召されましたが、いつ死んでもおかしくないといわれ続けて半世紀たったキース・リチャーズは生存記録を更新中で、人の命はわからんもんです。
1973年来日公演を楽しみにして振られてしまったご同胞の皆様は是非是非ご覧ください。
こんな凄いのが日本で観られたかもしれなかったんですよ!
ミック・テイラーは地味ですね、格好いいのに・・ジミー・ティラーと改名したら(同名の歌手がいるか・・笑)。
ロン・ウッドとまでではいいませんが、もう少し元気に(笑)ミック、キースと絡みつつギターを弾くシーンも観たかったですねぇ。
モカさんのコメントで「ストーンズは、レッド・ツェッペリンみたいな分厚い音を出せるバンドじゃない・・」とありますが、「ローリングストーン」誌でキースが、「ツェッペリンの演奏は、高速道路を18輪のトラックが暴走してるようだ!」とコメントしていました。…
もちろん、キースが良い意味で語っているのではないことは明らかですね(笑)
まあ、彼は、ツェッペリンに限らず、他のイギリスの大物バンドに対しても減らず口をたたきますが、それが良い得て妙なとこもあるんですよね(笑)
不摂生してる印象のストーンズですが、健康に無頓着でも意外と90才くらいまで元気な人もいますね。いっそのこと、あと20年、100まで頑張ってもらいたいです!
まあ、お恥ずかしいものですが。
>ミック・テイラーのプレイが上手すぎてキースが嫌がったんだじゃないか
それは想像するしかないですが、テイラー氏、職人という感じでした。
>ビル・ワイマンのベースギターのコードが短くて
そんなことが! しかも、音がこもって、唯一存在感を示せなかった感じですね(笑)
>ニッキー・ホプキンス
長生きできない星の下に生まれたんですな。才能がありながら・・・勿体ない。
>ストーンズはツェッペリンみたいに分厚い音を出せるバンド
>じゃないから、ホーンやキーボードを上手に取り込みますね。
このライブの一曲目である「ブラウン・シュガー」など、ボビー・キーズのサックスが抜群の印象を残しますものね。サックスは見た目も格好良いです。リチャーズがソロに備えてマイクをサックスのベルの前に置いてあげるのが印象的でした。
>人の命はわからんもんです。
本当にねえ。
欧米の芸能人はアルコール、麻薬を当たり前のように使用しますから突然亡くなるかと思えば、同じようにやっていても長生きする人もいます。
それにしても1970年前後に続いたあの大物ロッカーの連続死は何だったんでしょうねえ。
>顔ドアップのカットが多いこともあって
モカさんも指摘されているように、カメラが少ないということもあるのでしょうねえ。
>他のイギリスの大物バンドに対しても減らず口をたたきますが
“ビートルズで一番好きな曲は?”と訊かれ、ミック・ジャガーだったかが「ジェラス・ガイ」と答え、“あれは、ビートルズじゃなかったっけ”とコメントしたのが面白かったです。
かつて“I Wanna Be Your Man"を貰っといてそれはないんじゃないの、という印象もありますが、彼らなりの強がりだったような感じがします。
キース・リチャーズはいつの頃からか、ロック界のご意見番的存在になりましたね。若いころは鼻にかかった甲高い声で(ミックの声とは何故か相性はよかったけど)結構おとなしい感じだったのにね・・
最近は声も何だか良い感じにドスが効いてきて、海賊というよりは、映画の「アラン」に出てくる漁師みたいになってしまって。
キースはハードロックはあんまり好きじゃないんでしょうね。
所謂ロックンロールやR&B、ブルースが好きみたいです。
キースがずっと主導権を持ってたら今のストーンズはなかったとか? 私としてはそっちの方が見たかったですけど。
そういえば、ロバート・プラントって奥様がインド系だからか、ツェッペリン以降は民族音楽系をやったりしてて、そういうのも良いですね。
イギリス人はアメリカ人とはまた違って辛辣なユーモアセンスのある人が多いですね。中でもジョン・レノンが一番辛辣かな?
ボビー・キーズのサックス、カッコイイです。ミック・テイラーも彼も何故かストーンズと一緒の時が一番輝いてますね。
>キース・リチャーズ
>映画の「アラン」に出てくる漁師みたいになってしまって。
随分古い映画が出てきましたねえ。
昔観ただけなので、図書館から借りてもう一回観てみましょう。
>キースはハードロックはあんまり好きじゃないんでしょうね。
その意味では「イッツ・オンリー・ロックンロール」という曲・LPは彼の意向を踏まえたものなのでしょうか^^
>ツェッペリン以降は民族音楽系をやったりしてて、
ツェッペリン時代もそれらしいところがなくもなかったですね。
>イギリス人はアメリカ人とはまた違って辛辣なユーモアセンスのある
>人が多いですね。中でもジョン・レノンが一番辛辣かな?
それも、彼のは実に洒落ていますね。
最近ロジャー・ムーアの「007」を再鑑賞しているのですが、それを見ていてもイギリス紳士には鋭い皮肉を言うDNAがあるような気がします。但し、ショーン・コネリー時代のほうが面白いのが多い。
>演奏自体は終わりに向うに連れて充実してくる感じで、「ジャ ンピ ング・ジャック・フラッシュ」から最後の「ストリー ト・ファイティング・マン」へと繋がれていく演奏はブルース の系譜を継ぐロックならではの怒涛ぶりと言って過言ではない 大迫力。
メンバー紹介で最後に呼ばれたキースが弾くチャックベリーのお馴染みのリフから怒涛の展開に雪崩れ込んでいくところがかっこいいです。
エネルギーにあふれてて、もう誰にも止められません状態。 ちょっとぐらい音程外そうが、リズムが狂おうがお構いなし(笑)普段からそんな感じだし。
こんなのがが許されるのはストーンズぐらいで、元々誰も彼らに正確さなんて期待してませんしね。
80年代のハル・アシュビーの「レッツ・スペンド・・」
みたいに大規模会場でショーアップ(ダッチワイフのアドバルーンが浮かんででましたっけ)していく以前の、音楽だけで突っ走ってるところが良いです。
今、ウィキで調べたら、「たかがロックンロール」はロン・ウッドにインスパイアーされたと書いてました。
ロン・ウッドのやっている音楽番組を見たことがありますが、誰かゲストを一人よんで(ポール・マッカートニー、パティ・ボイド等々)ギター抱えて音楽談義していて、すごくいい人でした。
音楽愛にあふれてました。 フェイセスに帰れ、とか思ってたことを反省いたしました。
>チャックベリーのお馴染みのリフから怒涛の展開に
>雪崩れ込んでいくところがかっこいいです。
この辺りから最後まで怒涛でしたね。
曲名は「バイ・バイ・ジョニー」。題名は知らなかったけれど。
>たかがロックンロール」はロン・ウッドにインスパイアーされた
>と書いてました。
まだ正式に加入する前でしょう? そういうこともあるんだなあ。
>ロン・ウッド
>フェイセスに帰れ、とか思ってたことを反省いたしました。
そりゃまた残酷な(笑)
僕は、そこまでメンバーの違いに精通していない^^