映画評「007/オクトパシー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1983年イギリス映画 監督ジョン・グレン
ネタバレあり
ロジャー・ボンド(ムーア・ボンドという人が多い中ファースト・ネームとファミリー・ネームの組合せの方が洒落ていると思い、僕は使っている)第6作は、シリーズ通算第13作。監督は引き続き編集者出身のジョン・グレン。
タッチは「ユア・アイズ・オンリー」以前のマンガ調に戻った感じだが、グレンはなかなかしっかり作っている。クラシックな冒険活劇の面白さはロジャー・ボンドの中で最もあるのではないだろうか? 僕は三十何年かぶりに再鑑賞したわけだが、お話を全く忘れていたので相当楽しめた。
プロローグは本編には直接関係のない、中南米の共産主義国での冒険で、追跡型ミサイルをかわす小型ジェット機での飛行がお楽しみ。直接は関係なくても、本編がソ連絡みなので対共産国対応という通奏低音をなすわけで、映画作りに大事なところを外していない。
帝政ロシアの装飾卵がオークションに出され、これがソ連の戦争準備の兆しなのではないかと怪しんだMI6がオークション会場に007ことジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)を派遣、アフガン出身のインドの大富豪カマル・カーン(ルイ・ジュールダン)との因縁が始まる。彼はデタントを嫌っている超タカ派のソ連将軍(スティーヴン・バーコフ)と手を組み、西ベルリンで核を爆破させる陰謀を巡らせている。
そのお話に辿り着くまでに、カーンに協力している謎の美女オクトパシー(モード・アダムズ)が率いるサーカス団及びアマゾネス集団が賑やかに絡んでくるお楽しみがある。彼女は単に密輸団のボスにすぎずMI6にとっては敵でないと判明、終盤にはアマゾネス軍団が007に大いなる力添えをしてくれる。
ボンドはボンドで、列車の上や横で綱渡り的な大冒険を繰り広げ、ヒッチコック「バルカン超特急」を思い出させるアクションがあったり、一方で13年後の「ミッション:インポッシブル」に影響を与えているのではないかと思わせたりする。プロローグの飛行機と言い、この列車上の活劇と言い、非常に古典的な冒険場面を次々と繰り出す趣向が行けるのである。
小説の段階からある程度マンガ的な007に余りリアリズムを求めて酷評するのもどうかと思う次第で、リアリズムであろうかマンガであろうが、007タイプのスパイ・アクションは観ている最中に面白いことが肝要である。フィクション性を排除しない以上、喜劇的であることは何のマイナスにもならない。
モード・アダムズは「黄金銃を持つ男」に続き、シリーズ史上唯一二回ボンド・ガールを務めた。
音楽はジョン・バリーが復活し、リタ・クーリッジが落ち着いた歌声を聴かせる。
原題のOctopussyは女性の陰部を指す単語とタコを組み合わせた造語だが、実際には子猫ちゃんならぬ子タコちゃんなのかもしれませんな。
1983年イギリス映画 監督ジョン・グレン
ネタバレあり
ロジャー・ボンド(ムーア・ボンドという人が多い中ファースト・ネームとファミリー・ネームの組合せの方が洒落ていると思い、僕は使っている)第6作は、シリーズ通算第13作。監督は引き続き編集者出身のジョン・グレン。
タッチは「ユア・アイズ・オンリー」以前のマンガ調に戻った感じだが、グレンはなかなかしっかり作っている。クラシックな冒険活劇の面白さはロジャー・ボンドの中で最もあるのではないだろうか? 僕は三十何年かぶりに再鑑賞したわけだが、お話を全く忘れていたので相当楽しめた。
プロローグは本編には直接関係のない、中南米の共産主義国での冒険で、追跡型ミサイルをかわす小型ジェット機での飛行がお楽しみ。直接は関係なくても、本編がソ連絡みなので対共産国対応という通奏低音をなすわけで、映画作りに大事なところを外していない。
帝政ロシアの装飾卵がオークションに出され、これがソ連の戦争準備の兆しなのではないかと怪しんだMI6がオークション会場に007ことジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)を派遣、アフガン出身のインドの大富豪カマル・カーン(ルイ・ジュールダン)との因縁が始まる。彼はデタントを嫌っている超タカ派のソ連将軍(スティーヴン・バーコフ)と手を組み、西ベルリンで核を爆破させる陰謀を巡らせている。
そのお話に辿り着くまでに、カーンに協力している謎の美女オクトパシー(モード・アダムズ)が率いるサーカス団及びアマゾネス集団が賑やかに絡んでくるお楽しみがある。彼女は単に密輸団のボスにすぎずMI6にとっては敵でないと判明、終盤にはアマゾネス軍団が007に大いなる力添えをしてくれる。
ボンドはボンドで、列車の上や横で綱渡り的な大冒険を繰り広げ、ヒッチコック「バルカン超特急」を思い出させるアクションがあったり、一方で13年後の「ミッション:インポッシブル」に影響を与えているのではないかと思わせたりする。プロローグの飛行機と言い、この列車上の活劇と言い、非常に古典的な冒険場面を次々と繰り出す趣向が行けるのである。
小説の段階からある程度マンガ的な007に余りリアリズムを求めて酷評するのもどうかと思う次第で、リアリズムであろうかマンガであろうが、007タイプのスパイ・アクションは観ている最中に面白いことが肝要である。フィクション性を排除しない以上、喜劇的であることは何のマイナスにもならない。
モード・アダムズは「黄金銃を持つ男」に続き、シリーズ史上唯一二回ボンド・ガールを務めた。
音楽はジョン・バリーが復活し、リタ・クーリッジが落ち着いた歌声を聴かせる。
原題のOctopussyは女性の陰部を指す単語とタコを組み合わせた造語だが、実際には子猫ちゃんならぬ子タコちゃんなのかもしれませんな。
この記事へのコメント
>追跡型ミサイルをかわす小型ジェット機での飛行
いきなり楽しめました。
それと僕が好きな場面。テニスの試合と観客を連想させる場面。
映画館内のお客さん達がみんな爆笑していました!
>意外に人気が長持ちしなかったなあ。
缶チューハイのCMで彼女が芸者コスチュームで歌うのがありました。面白かったです。
>似たタイプのガイ・ハミルトンよりもっと堅実
僕もオカピー教授のように監督の個性を見抜けるようになりたいです!
>僕が初めて映画館で見た007作品がこれです。
そうですか。僕は、映画館では一本も観ていない気がするなあ^^;
>それと僕が好きな場面。テニスの試合と観客を連想させる場面。
可笑しかったですねえ。さすがヒッチコックを生んだイギリスの映画ですねえ(「見知らぬ乗客」にテニスの球を追いかけて観客が頭を左右に振る名場面あり)。
>缶チューハイのCMで彼女が芸者コスチュームで歌うのがありました。
ありましたねえ。思い出しました。
>列車上の活劇
もうすぐトンネルが・・・ヒヤヒヤしながら見ました(笑)。
>リタ・クーリッジが落ち着いた歌声
歌が上手いです!元旦那のクリス・クリストファーソンと映画『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(21歳に見えない・・・汗)で共演していました。
>「見知らぬ乗客」
一度見たいです。
>僕は、映画館では一本も観ていない気がするなあ^^;
それは意外です・・・。
>もうすぐトンネルが・・・ヒヤヒヤしながら見ました(笑)。
「バルカン超特急」にはトンネルは出て来なかったと思いますが、列車の外でのアクションなど思い出しましたね。偶然かもしれませんが、ヒッチコックを感じさせるところが少なくないです。そもそもコネリー時代の007はヒッチコックの影響大と言われました。
>リタ・クーリッジ
>元旦那のクリス・クリストファーソンと映画
>『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(21歳に見えない・・・汗)で共演
インディアンの血が混じっているので大人っぽく見えたのかもしれませんね。
クリストファーソンと言えば、今たまたまジャニス・ジョプリンを聴きながら書いています。さきほど彼の傑作「ミー・アンド・ボビー・マギー」を流れていました。ジャニスに歌声があっての名曲と思います。
>それは意外です・・・。
映画館で5,6本は観られた高価なレーザーディスクは買いましたが(笑)。
WOWOWが特集を組んでくれたので全作ハイビジョンでブルーレイに保存してあります。ビデオと違って綺麗で良いです。
>コネリー時代の007はヒッチコックの影響大と言われました。
特に「ロシアより愛をこめて」ですね。
>インディアンの血が混じっているので大人っぽく見えたのかもしれませんね。
と言うよりも、当時のクリストファーソンは37歳だったので・・・(^^;
>ブルーレイ
我が家はまだありません。
>少なくとも僕に謝るには及びません
ありがとうございます。
>特に「ロシアより愛をこめて」ですね。
その通りですね。4年前の「北北西に進路を取れ」と特に意識していました。列車も出てきますし。
>当時のクリストファーソンは37歳だったので・・・(^^;
その年齢でビリー・ザ・キッドに配役するキャスティングにも問題ありでは(笑)。
>HNを忘れていました。すみません。
これは、ウェブリに問題ありです。以前はハンドルネームがないと投稿できませんでしたが、半年前の刷新により可能になってしまいました。これは修正すべきですよね。
>カマル・カーン(ルイ・ジュールダン)
彼がボンドとの勝負(バカラ)で負ける。ムッとした顔で部下から小切手を受け取ってボンドに払う。笑える場面です。
>「北北西に進路を取れ」
永遠に残る名画です。子供の頃、パロディCM(草刈正雄)の方を先に知ってしまいました。
>その年齢でビリー・ザ・キッドに配役するキャスティングにも問題ありでは(笑)。
その通りです(笑)!
>以前はハンドルネームがないと投稿できませんでしたが
なるほど。刷新が却って良くなかったんですね。
>彼がボンドとの勝負(バカラ)で負ける。
ルイ・ジュールダンは二枚目系で、悪党としての迫力が少し足りないような気がしました。
>子供の頃、パロディCM(草刈正雄)の方を先に知ってしまいました。
そんなのがありましたか。記憶にないですねえ。
>なるほど。刷新が却って良くなかったんですね。
しつこく言っていけば、いずれ修正されるでしょうけど。
>悪党としての迫力が少し足りないような気がしました。
彼のボディガード。ターバン巻いてる大男は迫力がありました。
インド人に見えて実はイギリス人でしたっけ?
>終盤にはアマゾネス軍団が007に大いなる力添え
アマゾネスが好きな男性が多いです。不思議です(笑)。
>追跡型ミサイルをかわす小型ジェット機での飛行
工場の中で飛ぶ小型ジェット機はCGなし。それがまたいいです。トリックを知った時も別にガッカリしませんでした。手作り感が好きです!
>インド人に見えて実はイギリス人でしたっけ?
僕もそんな気がしていましたが、IMDbで調べてみると、インド生まれ? やはりインド人なのかな?
>アマゾネスが好きな男性が多いです。不思議です(笑)。
そうですねえ。
映画界のアマゾネス・ブームは1973年の「アマゾネス」によって起こり、70年代半ばに安っぽい作品が結構作られました。
僕も題名にアマゾネスがつくと結構観たりしました(笑)。「空手アマゾネス」という、同じくクンフー映画と抱き合わせの作品もありましたね。
この作品は時期を外した感じがありましたが^^;
>工場の中で飛ぶ小型ジェット機はCGなし。それがまたいいです。
昨日「エアポート75」を久しぶりに観ましたが、特撮は良いですねえ。僕はCGによる画面には却って迫力を感じないです。