映画評「007/美しき獲物たち」
☆☆★(5点/10点満点中)
1985年イギリス映画 監督ジョン・グレン
ネタバレあり
シリーズ第14作で、ロジャー・ボンド第7作。これでロジャー・ムーアの007は見納めとなった。監督は3作続けて堅実なジョン・グレン。
ボンドが雪山でソ連が盗んだICチップを探り出す。
007に限らず、80年代以降のアクション映画のファースト・エピソードは主題と直接関係しないことが多いが、珍しくも本作ではこのICに導かれてお話が進んで行く。
ソ連のチップがフランスの先進企業ゾリン産業製の回路と全く一致していることと掴んだ007は、社長ゾリン(クリストファー・ウォーケン)の持つ競走馬が異様に強いことに不審を抱き、馬を買う振りをして社長に接近、馬がステロイド剤をうち込まれITでコントロールされていることを掴む。ステロイドによる遺伝子技術を開発したのがナチ絡みの老科学者で、知能指数の高いゾリン自身も人工的に生まれた可能性を掴む。
さらに色々なピンチを切り抜けながら調べていくうちに彼は、ゾリンがシリコン産業を独占しようと人工地震を起こしてシリコンバレーを水没させるという陰謀に辿り着く。
「ユア・アイズ・オンリー」にも似て比較的即実的なタッチであるが、同作が大々的な見せ場を長丁場で見せたのとは違って小粒な見せ場を多く連ねていく感じである。
その中で一番楽しめるのは、007が敵の殺し屋その名もメイ・デイ(グレース・ジョーンズ)をエッフェル塔から追い続け、街を壊しまくる一連のアクション。続くのは、007と石油会社令嬢(タニヤ・ロバーツ)が消防車を乗っ取り、警察との間で繰り広げられるカー・チェースだろうか。
クライマックスは敵基地でのアクション。地下坑道に水が押し寄せるなどスケールは大きいながらも、ショーン・コネリー時代から繰り広げられて来た敵基地パターンの繰り返しで、面白味でパリのアクションに及ばない。
コネリーの初期作品のようなスパイ映画らしさや古典的な冒険映画らしさが復活気味なのは良い。しかし、クライマックスに至るまで地味でしばしば退屈させられる。30年以上前に初めて観た時は面白かったらしく、IMDbでは7点を進呈(勿論当時ネットはなく、後年ノートを見て投票)したが、こうして連続してシリーズを見て来ると、作品の性格が半端でぐっとつまらないのである。
音楽はジョン・バリーで、人気絶頂だったデュラン・デュランと主題歌を共作している。しかし、聴感上は全くデュラン・デュランですな。
ロジャー・ボンドも終わったことだし、今年の007はこれで打ち止めかな。
1985年イギリス映画 監督ジョン・グレン
ネタバレあり
シリーズ第14作で、ロジャー・ボンド第7作。これでロジャー・ムーアの007は見納めとなった。監督は3作続けて堅実なジョン・グレン。
ボンドが雪山でソ連が盗んだICチップを探り出す。
007に限らず、80年代以降のアクション映画のファースト・エピソードは主題と直接関係しないことが多いが、珍しくも本作ではこのICに導かれてお話が進んで行く。
ソ連のチップがフランスの先進企業ゾリン産業製の回路と全く一致していることと掴んだ007は、社長ゾリン(クリストファー・ウォーケン)の持つ競走馬が異様に強いことに不審を抱き、馬を買う振りをして社長に接近、馬がステロイド剤をうち込まれITでコントロールされていることを掴む。ステロイドによる遺伝子技術を開発したのがナチ絡みの老科学者で、知能指数の高いゾリン自身も人工的に生まれた可能性を掴む。
さらに色々なピンチを切り抜けながら調べていくうちに彼は、ゾリンがシリコン産業を独占しようと人工地震を起こしてシリコンバレーを水没させるという陰謀に辿り着く。
「ユア・アイズ・オンリー」にも似て比較的即実的なタッチであるが、同作が大々的な見せ場を長丁場で見せたのとは違って小粒な見せ場を多く連ねていく感じである。
その中で一番楽しめるのは、007が敵の殺し屋その名もメイ・デイ(グレース・ジョーンズ)をエッフェル塔から追い続け、街を壊しまくる一連のアクション。続くのは、007と石油会社令嬢(タニヤ・ロバーツ)が消防車を乗っ取り、警察との間で繰り広げられるカー・チェースだろうか。
クライマックスは敵基地でのアクション。地下坑道に水が押し寄せるなどスケールは大きいながらも、ショーン・コネリー時代から繰り広げられて来た敵基地パターンの繰り返しで、面白味でパリのアクションに及ばない。
コネリーの初期作品のようなスパイ映画らしさや古典的な冒険映画らしさが復活気味なのは良い。しかし、クライマックスに至るまで地味でしばしば退屈させられる。30年以上前に初めて観た時は面白かったらしく、IMDbでは7点を進呈(勿論当時ネットはなく、後年ノートを見て投票)したが、こうして連続してシリーズを見て来ると、作品の性格が半端でぐっとつまらないのである。
音楽はジョン・バリーで、人気絶頂だったデュラン・デュランと主題歌を共作している。しかし、聴感上は全くデュラン・デュランですな。
ロジャー・ボンドも終わったことだし、今年の007はこれで打ち止めかな。
この記事へのコメント
こんばんは。昭和60年6月。月曜ロードショーで「ゴールドフィンガー」が放映されら時の事を思い出します。荻昌弘先生が言った事。
①「『美しき獲物たち』が『オクトパシー』以上のヒットだそうです。」
②「007映画も原点に戻り、この『ゴールドフィンガー』あたりに照準を合わせたのではないか?」
>「空手アマゾネス」
βのビデオで録画しましたが、一度見ればいいかなと思いました。
>「エアポート75」
持病のある小型機のパイロットが飛行中に意識不明に。
他の映画ブログで話が盛り上がりました!
>5点でしたか・・・。
最初の鑑賞記録に基づきIMDbには7点を進呈しましたし、抑制気味の見せ方は良いと思って6点もありでしたが、以前観た時とは正反対に大々的な見せ場が多く面白く観られた「ユア・アイズ・オンリー」を基準とすると物足りなかったですねえ。年をとって少し好みが変わったかな^^
>①「『美しき獲物たち』が『オクトパシー』以上のヒットだそうです。」
>②「007映画も原点に戻り、この『ゴールドフィンガー』あたりに照準>を合わせたのではないか?」
ジョン・グレンを監督に据えた時から方向性が昔に戻りましたね。「オクトパシー」はかなりおふざけでしたが。
>>「空手アマゾネス」
>βのビデオで録画しましたが、一度見ればいいかなと思いました。
全く観なくても良いと思います(笑)。
>>「エアポート75」
>持病のある小型機のパイロットが飛行中に意識不明に。
>他の映画ブログで話が盛り上がりました!
セスナのパイロット(実業家でしたね)は、ベテランのダナ・アンドリューズ。出演していたのも忘れていましたよ。
>「ユア・アイズ・オンリー」を基準とすると物足りなかったですねえ。
車ごと池に落とされたボンド。タイヤのチューブから空気を吸う。ああいう地味なアクション。好きです(笑)。
>ジョン・グレンを監督に据えた時から方向性が昔に戻りましたね。
やっぱり原点がいいです。
>ダナ・アンドリューズ
今調べたけど未見の作品ばかりです。
>木内みどりさん逝去。
40年ぐらい前に木内さんがラジオで言った事を今でも思い出します。
日本人とアメリカ人。映画館で映画を見る時の態度。
アメリカ人はジョーズがやられる場面では「ブラボー!」拍手喝采!
ご冥福をお祈り致します。
>車ごと池に落とされたボンド。タイヤのチューブから空気を吸う。
リアルな感じが出ていて良かったですね。
>今調べたけど未見の作品ばかりです。
そうでしょうねえ。
「ローラ殺人事件」「影なき殺人」などスリラー系に面白い映画が多かったですかね。
>木内みどりさん逝去。
僕は1970年代最初にアイドル木之内みどりを知って、その後木内みどりが出て来て混乱しましたよ。アイドルと女優でしたので、区別はできましたけど。
69歳。今では早い死と言って良いでしょうね。合掌。
>アイドル木之内みどりを知って、その後木内みどりが出て来て混乱
そういう人が多かったです。
僕が木内みどりさんを初めて見たのは昭和51年夏NHK銀河テレビ小説「幻のぶどう園」。尾藤イサオの彼女役。主題歌はユーミンの「晩夏(ひとりの季節)」。今でも思い出します。ちょっと切ない物語でした。
>聴感上は全くデュラン・デュランですな。
あの時代、UKロックが流行りました。
>リアルな感じが出ていて良かったですね。
ボンドが運転する車。遮断機のせいでフロントガラスがなくなる。他の車にぶつけられて後ろ半分がなくなる。あの場面も好きでした。
>昭和51年夏NHK銀河テレビ小説「幻のぶどう園」。
昭和40年代にTVドラマはほぼ観なくなりましたので、記憶ないです。
テレビは映画以上に共通の話題になるので、もう少しTVドラマも観ておけば良かったかなと後悔。
切ない話も心の浄化に良いでしょう。
>主題歌はユーミンの「晩夏(ひとりの季節)」
偶然にも、今CDチェンジャーにこの曲を収めた4番目のLP「14番目の月」を入れて週に2回ほど聞いています。昨日聴いたばかりです。
>あの時代、UKロックが流行りました。
U2とか(厳密にはアイルランドですが)。
ハウス音楽もありまして、カルチャー・クラブなんて人気でしたね。
>他の車にぶつけられて後ろ半分がなくなる。あの場面も好きでした。
可笑しかったですねぇ^^
一部で評判が悪くとも、コメディー色がもっと強くても良かったと思います。
>グレース・ジョーンズ
見かけと違って意外に怖がり。炭鉱内の洪水のシーン撮影時は絶えず悲鳴を上げていたそうで。
>タニア・ロバーツ
ムーアは、彼女の母親の方が自分よりも若いことを知って降板の決意をした(これもウィキ)。
>LP「14番目の月」
良いアルバムですよね。
>カルチャー・クラブ
「カーマは気まぐれ」が良かったです。盗作疑惑もありましたが。
>ムーアは、彼女の母親の方が自分よりも若いことを知って降板の決意
当方も、銀行の営業ウーマンの両親が共に自分より若いことを知ってショックを受けました。僕の場合は降板するわけにはいかない(笑)
>良いアルバムですよね。
前の3作でプロコル・ハルムの影響を徐々に薄めていき、この作品では全く感じられなくなりました。
このアルバムでは、ハイ・ファイ・セットの歌唱で有名な「中央フリーウェイ」が良いです。
「晩夏」の♪空色は水色に 茜は紅に、という辺り歌詞における進境を感じさせますねえ。傑作。
>「カーマは気まぐれ」が良かったです。盗作疑惑もありましたが。
仮に模倣であっても、後続の作品にその発展性が見い出せれば模倣若しくは剽窃(盗作)でなく、それは影響である旨、評論家ポール・ヴァレリーが100年前に言っていましたよ。
余り騒ぐ人は、文化・芸術というものを知らないと思います。
何がきっかけで人生が変わるか?わからないものです。