映画評「アラン・ドロンのゾロ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1975年イタリア=フランス合作映画 監督ドゥッチオ・テッサリ
ネタバレあり
偶然にもジョンストン・マッカレーのユーモア犯罪連作小説「地下鉄サム」を図書館から借り読み終えたところだ。そのマッカレーのもう一つの代表作が「怪傑ゾロ」で、御存じのように何度も映画になり、TVドラマ化されたが、本作は当時人気絶頂だったアラン・ドロン主演ということで大注目された。
リアルタイムで観た時には生意気盛りの高校生だったせいか余り面白くないと思ったが、今回再鑑賞したら、なかなかうまく作っているではないか。「黒いチューリップ」で共和派の義賊たる兄の代りに活躍する穏和な弟役を演じたドロンが類似する役を楽しそうに演じている。
新大陸にあるスペイン領ニュー・アラゴンの総督が亡くなり、その息子が新総督として赴任することが決まるが、その地位を狙っている者の派遣した刺客により殺されてしまう。
現場に居合わせた彼の親友であるディエゴ(ドロン)が、彼に成り済まして赴任するが、様子を探る為に無能な総督を演ずる一方、密かに市井の様子を伺ううちに、人々の間に伝説となっている正義の味方ゾロの存在を知り、ゾロとして活動を始める。
総督の地位を狙っているのはフエルタ大佐(スタンリー・ベイカー)で、本当の新総統の従妹で反権力的なリーダー的な存在として活躍しているオルテンシア(オッタヴィア・ピッコロ)に横恋慕する。
ゾロのディエゴは彼女を徹底的に守り、悪を倒すべく文字通り八面六臂の活躍する。
ドロンが奮闘するアクション自体も見応えがあるが、それ以上に僕が気に入ったのは、主人公が総督とゾロの二役を演ずるという設定を具体的に見せる箇所の多さである。彼が二役を首尾よく演ずるには同時に二人の存在を示す必要に迫られる場面もあるわけで、それを解決する為に下男(エンツォ・セルシコ)が意外な大活躍をする。下男は「デカメロン」的な人物で、イタリア映画的な泥臭さがあるものの、彼の活躍が奏功して楽しい作品になった。
僕は最初の映画版即ちダグラス・フェアバンクス主演の「奇傑ゾロ」(1920年)からアントニオ・バンデラスの「マスク・オブ・ゾロ」(1998年)まで何作か観ているか、記憶が定かではないものの、二役という設定を一番有効に活用したのがこの作品ではないかと思う。
この作品を観ると、やはりアラン・ドロンのアルセーヌ・ルパンが見たかったと思う。
1975年イタリア=フランス合作映画 監督ドゥッチオ・テッサリ
ネタバレあり
偶然にもジョンストン・マッカレーのユーモア犯罪連作小説「地下鉄サム」を図書館から借り読み終えたところだ。そのマッカレーのもう一つの代表作が「怪傑ゾロ」で、御存じのように何度も映画になり、TVドラマ化されたが、本作は当時人気絶頂だったアラン・ドロン主演ということで大注目された。
リアルタイムで観た時には生意気盛りの高校生だったせいか余り面白くないと思ったが、今回再鑑賞したら、なかなかうまく作っているではないか。「黒いチューリップ」で共和派の義賊たる兄の代りに活躍する穏和な弟役を演じたドロンが類似する役を楽しそうに演じている。
新大陸にあるスペイン領ニュー・アラゴンの総督が亡くなり、その息子が新総督として赴任することが決まるが、その地位を狙っている者の派遣した刺客により殺されてしまう。
現場に居合わせた彼の親友であるディエゴ(ドロン)が、彼に成り済まして赴任するが、様子を探る為に無能な総督を演ずる一方、密かに市井の様子を伺ううちに、人々の間に伝説となっている正義の味方ゾロの存在を知り、ゾロとして活動を始める。
総督の地位を狙っているのはフエルタ大佐(スタンリー・ベイカー)で、本当の新総統の従妹で反権力的なリーダー的な存在として活躍しているオルテンシア(オッタヴィア・ピッコロ)に横恋慕する。
ゾロのディエゴは彼女を徹底的に守り、悪を倒すべく文字通り八面六臂の活躍する。
ドロンが奮闘するアクション自体も見応えがあるが、それ以上に僕が気に入ったのは、主人公が総督とゾロの二役を演ずるという設定を具体的に見せる箇所の多さである。彼が二役を首尾よく演ずるには同時に二人の存在を示す必要に迫られる場面もあるわけで、それを解決する為に下男(エンツォ・セルシコ)が意外な大活躍をする。下男は「デカメロン」的な人物で、イタリア映画的な泥臭さがあるものの、彼の活躍が奏功して楽しい作品になった。
僕は最初の映画版即ちダグラス・フェアバンクス主演の「奇傑ゾロ」(1920年)からアントニオ・バンデラスの「マスク・オブ・ゾロ」(1998年)まで何作か観ているか、記憶が定かではないものの、二役という設定を一番有効に活用したのがこの作品ではないかと思う。
この作品を観ると、やはりアラン・ドロンのアルセーヌ・ルパンが見たかったと思う。
この記事へのコメント
>今日アップしましたので、よろしければどうぞ。
ありがとうございます。
>今回再鑑賞したら、なかなかうまく作っているではないか。
これが理由ですね。
>ドロンが類似する役を楽しそうに演じている。
ゾロが市場で悪党を倒す。市民が笑いながら見ている。痛快です!
>昴
日本だけでなく、アジア諸国やイラクでも大ヒット!でも・・・歌詞の内容や軍国っぽいリズム(ドラム)を嫌う人もいます。まあ、曲に対する好みは十人十色ですから。
僕は小川知子とのデュエット「忘れていいの」が好きです。
>これが理由ですね。
具体的には、一人二役(楽しいのは総督がゾロの人質になっているというところ)、二人一役の見せ方が殊勲でした。
>日本だけでなく、アジア諸国やイラクでも大ヒット!
中国へいった時も、取引先の中国人がカラオケで歌っていました。
>歌詞の内容や軍国っぽいリズム(ドラム)を嫌う
僕は少し大げさすぎるのが、「陽はまた昇る」より好きではない理由ですね。
>僕は小川知子とのデュエット「忘れていいの」が好きです。
僕は「昴」で谷村新司から卒業したので、殆ど知りません。先ほどYouTubeで聴いてみましたが、良いですね。
>総督がゾロの人質になっているというところ
そのあたりがこの映画の醍醐味です。
>下男(エンツォ・セルシコ)
いい味を出してました。最初は「この人、大丈夫?」と思わせました。
>中国へいった時も、取引先の中国人がカラオケで歌っていました。
なるほど。まさに大ヒット!「イムジン河」や「加藤隼戦闘隊」の良き影響。
>先ほどYouTubeで聴いてみましたが、良いですね。
大人のラヴソングです。
>最初は「この人、大丈夫?」と思わせました。
確かに。
イタリア古典劇的な泥臭さのある役ですが、面白かったですね。
>「加藤隼戦闘隊」
谷村新司がどこまで絡んでいるか解りませんが、恐らくアレンジャー(服部克久)がイントロで意識していますね。
>大人のラヴソングです。
僕はちあきなおみの「別れたあとで」を涙なしで聴けません。
フエルタ大佐(スタンリー・ベイカー)とゾロの決闘。特に高い場所での決闘は迫力満点でした!
>ちあきなおみの「別れたあとで」
「遊び」「浮気」そして逢うのをやめる。すごい歌詞です。
作詞担当の白鳥朝詠と言う人。都はるみの「好きになった人」もこの人の作詞ですね。どんな人でしょうか?ウィキで調べてもわからない。気になります。
>服部克久
『すごい男の唄』、『ザ・ベストテン』 テーマ曲、『ごちそうさま』 テーマ曲。いろいろ担当してますね。
>フエルタ大佐(スタンリー・ベイカー)とゾロの決闘。
若干長すぎる感じがありましたが、「黒いチューリップ」以来ではないかと思われる直球的なアクションが迫力いっぱいでしたね。
>白鳥朝詠
ほぼ1960年代後半だけで、余り長期間に渡って活躍されなかった方のようですね。有名な人の別のペンネームか?
>服部克久
「記念樹」という曲が、小林亜星が自作「どこまでも行こう」の剽窃として訴えられたのは気の毒でした。僕はこの手があると訴えられたほうに同情してしまいますね。
アリスの「明日への讃歌」の歌い出しなど殆ど「ドント・レット・ミー・ダウン」と同じ。僕などは“ああ、やっとるわい”と微笑ましく感じますが、そう思わない一般の人も多いようですね(作曲家が文句を言うのは収入の問題があるので、事情が少し違います)。
>アリスの「明日への讃歌」
似てますね~!ヒットした曲のB面という点でも「Don't let me down」と同じです。
>有名な人の別のペンネームか?
呉田軽穂みたいなもんですか?
>「地上最大のショウ」
録画しました。
大昔に二度ほど観ていますが、暫く観ていないので、近々見る予定。来年になってしまうでしょうが、楽しみです。
>>服部克久
“てにをは”が間違っていたので解りにくかったと思いますが、服部克久が「記念樹」という曲で、小林亜星に訴えられて負けました。
>>アリスの「明日への讃歌」
似ているでしょう!
この類似はどこにも出ていないので、僕の発見と言って良いのかも(笑)。
>呉田軽穂みたいなもんですか?
白鳥朝詠などという雅号みたいな風流な名前だから、そんな気もしますねえ。コンピューターで作詞の傾向を分析させると解るかもです。
おおっ!いよいよ、ゾロですね!
ふむ7点ですか。確かに説得力のある点数です。
この作品の頃のドロンは何とか人気を維持していたと思います(「ゾロ」と「個人生活」は結構稼げたようです(笑))けれど、相当なあせりがあったとも思います。ゾロでお面付けるのみならず、ひげはやしたり、刑事やったり、髪の毛カールしたり・・・。さすが当時の淀川長治さんはドロンのあせりを見抜いていたようです。
さて、この作品のドロンは案外、原点回帰のようにも思いますし、意外だなとも思えますし、私としては、というかファンとしては不思議な作品です。オカピーさんはどうですか?
一般には愛息アントニーにせがまれて撮る気になったとされていますが・・・。この撮影中に一回目の引退宣言をしていますし・・・。
ちょっと、最近気になっているのはクレマン、ヴィスコンティ、ロージー、メルヴィル、ギャバン・・・これら凄いおじさま方との関係は当ブログでも、ドロンへの影響力を何度も取り上げてきたんですが・・・もう一人今まで取り上げてこなかったドロンへの影響力の凄かったおじさまが存在していると思っています。
どうやって取り上げようか悩んでいるんですよ。資料もないし・・・。
「黒いチューリップ」「レッド・サン」「ゾロ」「エアポート80」・・・そして、あれだけ失敗しているアメリカ映画へのこだわり、1998年「ハーフ・ア・チャンス」での引退。
これ、ギャバンも含めて上記の巨匠たちの影響力だけでは理解できない作品や行動・言動ばかり。オカピーさん、どう思います?
もったい付けてすみません。
要は、バート・ランカスターの影響力も相当あったんじゃないかと・・・。
ランカスターはフェアバンクスの「ゾロ」ばかり観て育ったと述懐しているようですし、自社プロで「怪傑ダルド」「真紅の盗賊」を撮っています。「黒チュー」は「山猫」のすぐあと(その後すぐ渡米)、「ゾロ」は「スコルピオ」のすぐあとに取っています。「大空港」はランカスター主演、「ベラクルス」でのランカスターなんて「レッド・サン」のゴーシェで再登場したとしか思えませんよ。そして、1994年のランカスター死後は一度も主演作撮らずに引退宣言・・・。
ランカスターとの関係抜きだと不自然すぎるんですよ(笑)。誰もそんなこと言ってないですが…
新年早々、我流の自説ばかりですみませんでした。
では、今年もよろしくお願いします。
>バート・ランカスター
面白いところに着眼しましたねえ。
実は、彼が主演した「真紅の盗賊」と「怪傑ダルド」は結構好きでして、「黒いチューリップ」や「ゾロ」との関連性を考えたくなりますね。
「大空港」と「エアポート80」はもろにシリーズ作品ですし。
実に面白いなあ。