映画評「ミネソタ無頼」

☆☆★(5点/10点満点中)
1964年イタリア=フランス=スペイン合作映画 監督セルジョ・コルブッチ
ネタバレあり

「荒野の用心棒」と同じ1964年の製作だからマカロニ・ウェスタンとしてはごく初期の作品に当たり、当然のようにアメリカから俳優を招聘して作られている。監督はセルジョ・コルブッチだが、後年のように妙なズームを使うことなく(普通のズームが序盤の一か所あるだけ)、アメリカ製のB級西部劇と言えばそのまま通じるような画面である。但し、音声を聞くとばれてしまう。

中年懲役囚キャメロン・ミッチェルが古い知人ジョルジュ・リヴィエールに18年前の殺人の無実を証明して貰おうと脱獄する。ここで少々疑問なのは18年間も何をしていたのか、ということだ。しかし、それを言うとお話が始まらない。或いは視力が落ちてきたのがモチヴェーションになったのかもしれない。 

さて、リヴィエールが彼を罠に嵌めた張本人であるから会ったところで証言するはずもないのだが、ミッチェルはメキシコ国境に程近い場所で救難を施す。ここで山賊の頭フェルナンド・サンチョの愛人エセル・ロホと知り合い、拳銃も手に入れ、娘ダイアナ・マーティンを養っている兄と再会する。町ではリヴィエールが保安官のくせに配下を使っての悪行三昧で、山賊と共に町民は困っている。
 エセルがリヴィエールに寝返って山賊一味を破滅に陥らせる。しかし、彼に邪険にされた彼女は彼に捕えられたミッチェルを解放して彼と対決させるよう仕向ける。早撃ちミッチェルは視力の弱いのを逆手に取って保安官配下を全滅させ、遂にリヴィエールと対決する。

所謂ラス・ボスとの典型的な対決の図式で型通りと言えばそれまでだが、正体を明かしていない娘に渡したペンダントが上手く生かされているし、暗闇を利用しようという主人公の作戦も面白い。但し、面白いのはアイデアとしてだけで、悪党側に不都合だったように、観客にも暗くてよく解らず、視覚的には戴けない。

一番弱いのは、アメリカでも地味な脇役俳優だった当時45歳のキャメロン・ミッチェルを早撃ちガンマンに仕立てたこと。まるで牧童のように見えて迫力不足この上ない。同じ脇役でもリー・マーヴィンのようなタイプなら話が全然違って来るのだが。

その昔「タイタニック」の監督をキャメロン繋がりでキャメロン・ミッチェルと書くという失態をやらかしたことがある。ところで、本作邦題は主人公の役名ミネソタ・クレイから来ている。舞台は北部ミネソタとは正反対の南部乾燥地帯。脚本家が地理を知らなかったのかもしれない。

この記事へのコメント

蟷螂の斧
2020年02月02日 08:13
おはようございます。先ほどこの映画を見ました。

>暗闇を利用しようという主人公の作戦も面白い。

座頭市みたいです(笑)。

>アメリカでも地味な脇役俳優だった当時45歳のキャメロン・ミッチェル

経歴を見ても地味です。「続・荒野の七人」のメンバー、クロード・エイキンスに似ています。

>彼は自分の下手な操縦の為に亡くなった

ジョン・デンバーの大ヒット曲「故郷へかえりたい」の歌詞。地理的に考えて、おかしな部分があるそうです(ウィキより)。

>Please Please Meのメロディーもありますね。

良いハーモニカです。

>♪これからもよろしくね~ の″ね~”からのドコドコドコの繰り返し

リンゴ・スターっぽいドラム。
オカピー
2020年02月02日 21:05
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>座頭市みたいです(笑)。
「暗くなるまで待って」作戦でもありますね。あの作品は事前に家の配置をしっかりと憶えさせてから展開しているので実に面白いのですが、この作品が良いのはアイデアまで。

>クロード・エイキンスに似ています。
また渋い男優が出てきましたね。エイキンスのほうが少し丸顔かな?

>「故郷へかえりたい」の歌詞。地理的に考えて、おかしな部分がある
シングル盤を買いました。(日本盤では)B面が「悲しみのジェットプレーン」(既にPPMのバージョンが知られていました)で、個人的にはこちらのほうが好きでした。

>リンゴ・スターっぽいドラム。
どこを切ってもビートルズ前中期っぽい作品でしたので、どこを切っても後期っぽい曲を奥田民生氏には作って貰いたいですね。
蟷螂の斧
2020年02月03日 06:25
おはようございます。現在他のブログ(ネタ・ヴァレー)でもこの映画を話題にしているところです。ハッピーエンドになるのはイタリア本国版だけで、世界公開版ではキャメロン・ミッチェルが死んで娘が悲しむところで終わるそうですね。

>「暗くなるまで待って」

未見です・・・(汗)。

>また渋い男優が出てきましたね。

「続・荒野の七人」映画の雇い主(?)でもあるユル・ブリンナーはわざと地味なメンバーを集めた感じです(笑)。

>悲しみのジェットプレーン

今、聞きました。いい歌ですね~!ベトナム戦争に行く若者の事を歌った曲ですよね?映画「ディア・アメリカ 戦場からの手紙」を思い出します(涙)。
オカピー
2020年02月03日 20:48
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ハッピーエンドになるのはイタリア本国版だけ
今回NHKが買ったのはそのバージョンだったわけですね。僕はジュリアーノ・ジェンマ、クリント・イーストウッド、フランコ・ネロ以外のマカロニ・ウェスタンは数えるほどしか観ていないので、それは知りませんでした。

>>「暗くなるまで待って」
未見です・・・(汗)。

この作品のヴァリエーションも多いですし、監督が「007」でもお馴染みのテレンス・ヤングですし、見て損はないと思います。

>>悲しみのジェットプレーン
>いい歌ですね~!ベトナム戦争に行く若者の事を歌った曲ですよね?

PPMが取り上げたのも反戦歌と解釈できるからでしょうね。
蟷螂の斧
2020年02月04日 06:18
おはようございます。

>今回NHKが買ったのはそのバージョン

そうか・・・買うんですよね(当たり前か・・・)。とすると視聴率を考えて、ハッピーエンドのバージョンを放映しますよね。

>PPMが取り上げたのも反戦歌と解釈できる

ボブ・ディランの「風に吹かれて」のカバーは全米2位を記録!
「悲しみのジェット・プレーン」は全米1位。

>愛人エセル・ロホ

1937年12月23日~2012年6月24日。イタリア版ウィキによると、アルゼンチンの女優、ベデット、ダンサー、劇場監督。
オカピー
2020年02月04日 21:21
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>そうか・・・買うんですよね(当たり前か・・・)。
リマスターしたのがそのバージョン(国内版)しかないのかもしれませんね。

>>愛人エセル・ロホ
>アルゼンチンの女優、ベデット、ダンサー、劇場監督。

よくぞ調べられました。素晴らしい!
ベデットが何だかよく解りませんが(笑)。
蟷螂の斧
2020年02月05日 06:27
おはようございます。

>ベデットが何だかよく解りませんが(笑)。

「キャバレーまたはナイトクラブのショーでは歌い、踊り、舞台で演技をして大衆を楽しませる」のが仕事だそうです(これまたイタリア版ウィキより)。

>ジョルジュ・リヴィエール

この人は名悪役リー・ヴァン・クリーフにちょっと似ています。
1924年生まれ。95歳。まだ健在だそうです。

>フェルナンド・サンチョ

この人はマカロニ・ウェスタンの名悪役ですよね?
オカピー
2020年02月05日 21:19
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>これまたイタリア版ウィキより)。
あら、イタリア語がお解りになりますか?

>>ジョルジュ・リヴィエール
>95歳。まだ健在だそうです。

フランス人で、70年代に早めに引退したみたいですね。

>>フェルナンド・サンチョ
>この人はマカロニ・ウェスタンの名悪役ですよね?

そうですね。僕も十本くらいは観ているでしょう。
スペイン人。
 アメリカ人、フランス人、スペイン人、アルゼンチン人、随分国際的な顔ぶれで作ったものです!

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