映画評「マイ・サンシャイン」
☆☆(4点/10点満点中)
フランス=ベルギー=中国=アメリカ合作映画 監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
ネタバレあり
昨日に続く“なんちゃってアメリカ映画”。昨日は実質スウェーデン製、本作は実質フランス製(ベルギー=中国=米国との合資映画)だが、英米人俳優を使ってアメリカを舞台にしているから“なんちゃってアメリカ映画”というわけ。
昨年観た秀作「ロング、ロングバケーション」も同様で、アメリカを舞台に若しくは英米語で映画を作った方が当たるということもあるのだろうが、地味な素材の作品が多いだけに、悦ぶべきなのか否か?
いずれにしても“何でも娯楽映画にしてしまうハリウッド映画”という本作に関する感想は大間違い。ハリウッドの資本はどこにも入っていない。
1992年ロサンゼルスは貧困率・犯罪率の高いサウスセントラル。同地区で二人の黒人が不条理な暴力を受けた事件の裁判が加害者側に有利に終わったのに憤った黒人たちが暴動を起こす。他方、善意の女性ハリー・ベリーは町で見かけた不遇の子供達を拾っては育てている。
彼らの面倒を見るのは長男的な位置にあるハイティーンのラマー・ジョンスンで、彼が助けて来た美少女レイチェル・ヒルスンと兄弟分カーラン・ウォーカーが出来てしまったのが面白くなく、暴動で異様な空気にそそのかされたせいもあるのか、ウォーカーを刺し、最終的に死なせてしまう。
その前に行方をくらましていた中間年齢層(10歳から12歳くらい?)の子供達を、予想外にも好人物と判明する白人の隣人ダニエル・クレイグと共に探すうちに、ハリーは警官の不当な疑いをかけられて二人揃って街灯にくくられてしまう。朝まだき悪戦苦闘の末に何とか手錠を切り離した彼女は、死体と共にいるレイチェルを発見する。ジョンスンは呆然の体で帰宅する。
トルコのイスラム少女が経験している(であろう)ひどい普遍的実態を暴き出した「裸足の季節」(2015年)がなかなか素晴らしかった在仏トルコ女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの新作は、大分舌足らずである。海外の評価は概ね妥当と思う。
差別的な扱いを受けるロサンゼルス貧困地帯の子供達を描くという意味で前作に通ずるものがあるが、僕も記憶している1992年の暴動)の中にそれを描くという狙いの核となるところが効果的に浮かび上がって来ない。多くは有色人種の子供達がこうした差別社会に生きるうちにまた悪に染まり、それが偏見と差別を再生産し続けるということを言いたいのではないかと思うが、それが自ずと醸成されるようでないと映画としてきちんと成立しているとは言い難いのである。
声高に言えということではない。叫び過ぎては却って観客が白けてしまう。抑制的な描写でもって最大限の効果を発揮させるのが映画作家の手腕であろう。しかるに、実際にはこれがなかなか難しい。
邦題について。一人称・二人称が日本人は好きなんかねえ。サンシャインというのも何だかねえ。
フランス=ベルギー=中国=アメリカ合作映画 監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
ネタバレあり
昨日に続く“なんちゃってアメリカ映画”。昨日は実質スウェーデン製、本作は実質フランス製(ベルギー=中国=米国との合資映画)だが、英米人俳優を使ってアメリカを舞台にしているから“なんちゃってアメリカ映画”というわけ。
昨年観た秀作「ロング、ロングバケーション」も同様で、アメリカを舞台に若しくは英米語で映画を作った方が当たるということもあるのだろうが、地味な素材の作品が多いだけに、悦ぶべきなのか否か?
いずれにしても“何でも娯楽映画にしてしまうハリウッド映画”という本作に関する感想は大間違い。ハリウッドの資本はどこにも入っていない。
1992年ロサンゼルスは貧困率・犯罪率の高いサウスセントラル。同地区で二人の黒人が不条理な暴力を受けた事件の裁判が加害者側に有利に終わったのに憤った黒人たちが暴動を起こす。他方、善意の女性ハリー・ベリーは町で見かけた不遇の子供達を拾っては育てている。
彼らの面倒を見るのは長男的な位置にあるハイティーンのラマー・ジョンスンで、彼が助けて来た美少女レイチェル・ヒルスンと兄弟分カーラン・ウォーカーが出来てしまったのが面白くなく、暴動で異様な空気にそそのかされたせいもあるのか、ウォーカーを刺し、最終的に死なせてしまう。
その前に行方をくらましていた中間年齢層(10歳から12歳くらい?)の子供達を、予想外にも好人物と判明する白人の隣人ダニエル・クレイグと共に探すうちに、ハリーは警官の不当な疑いをかけられて二人揃って街灯にくくられてしまう。朝まだき悪戦苦闘の末に何とか手錠を切り離した彼女は、死体と共にいるレイチェルを発見する。ジョンスンは呆然の体で帰宅する。
トルコのイスラム少女が経験している(であろう)ひどい普遍的実態を暴き出した「裸足の季節」(2015年)がなかなか素晴らしかった在仏トルコ女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの新作は、大分舌足らずである。海外の評価は概ね妥当と思う。
差別的な扱いを受けるロサンゼルス貧困地帯の子供達を描くという意味で前作に通ずるものがあるが、僕も記憶している1992年の暴動)の中にそれを描くという狙いの核となるところが効果的に浮かび上がって来ない。多くは有色人種の子供達がこうした差別社会に生きるうちにまた悪に染まり、それが偏見と差別を再生産し続けるということを言いたいのではないかと思うが、それが自ずと醸成されるようでないと映画としてきちんと成立しているとは言い難いのである。
声高に言えということではない。叫び過ぎては却って観客が白けてしまう。抑制的な描写でもって最大限の効果を発揮させるのが映画作家の手腕であろう。しかるに、実際にはこれがなかなか難しい。
邦題について。一人称・二人称が日本人は好きなんかねえ。サンシャインというのも何だかねえ。
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