映画評「家族のはなし」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年日本映画 監督・山本剛義
ネタバレあり

鉄拳なるお笑い芸人によるパラパラ漫画を映画化した作品だそうで、監督は新人の山本剛義。

大学を中退してプロのバンド・トリオとして活動している岡田将生が、長野でリンゴ農家をしている父親・時任三郎が入院したと母親・財前直見から聞かされて慌てて帰って来るが、何ということはない、ただの検査入院と判明。
 怒って帰ろうとするものの、その前に幼馴染の成海璃子から卒業した中学校へ連れて行かれ、学校の40周年記念に演奏することを無理やり約束させられてしまう。一方、両親には大学中退とバンド活動について知らせていず、そのまま東京へ戻る。
 が、新曲が完成する直前にレコード会社から契約更新せずという連絡が入り、結局バンドも空中分解してしまう。落ち込んでいるところへ父親が落ちたリンゴで作ったジュースが届き、少しだけ親なるものの価値に気付き、中学校での演奏を決意する。
 演奏の帰り家に寄って母親から言われたお菓子の箱を持って駅に行くバスに乗る。蓋を取ってみると、父親が保存していた子供時代やバンド活動の記事などが出て来る。父親は彼が言わずとも知っていたのだ。息子は、父親が彼の考えるように土地の有効利用を検討していたことも知らないのに。
 父親は堤防からバスに手を振って別れの挨拶をする。土手にはリンゴで“ガンバレ”と書かれている。帰京した息子は“(捨てろと言った)長靴を取っておいて”というメモを荷物に沿える。

友人より家族を大事にしろというのが僕の定見だから、こういう映画は歓迎したい。尤も、成海璃子の友情もなかなか見上げたもので、持つなら彼女のような友人が良い。
 実際の世界ではなっていない親より友人のほうが良いケースも多々あるとは思うが、平均的な親であれば子供が想像する以上に子供を思い子供について知っている。本作の主張は、そういうことである。その思いがよく表現される終盤なので、上記の梗概ではそこについて詳細に書いてみた次第。

内容は微笑ましく、扱いも80分という小品らしく力みすぎず好感が持てるが、僕のようなマニアには映画的なうま味、凄味、新味がないと☆★は大目に付けられない。唯一、主人公が少年時代の自分ではないかと思われる子供と二回すれ違う点にが映画的に注目される。いかにもそれっぽいものではなく、バスの運転手がブレーキを踏むなど実在する少年として扱っているところに映画的面白味がある。

今日見た夢は、ある出来事についてこれは夢なのか実際にあったことなのかと考える夢だった。大学時代のアパートも少し絡んできたと思う。何だかコミックみたい。

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