映画評「夜の訪問者」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1970年フランス=イタリア=ベルギー合作映画 監督テレンス・ヤング
ネタバレあり
「雨の訪問者」(1970年)がヒットしたので、チャールズ・ブロンスン主演につき邦題が「夜の訪問者」となったのであった。懐かしいなあ。観たのは劇場公開より数年遅れ、四十数年前にTVのみ。94分という短い映画なのでので完全版だっただろう。
原作は「激突!」など面白いお話を考え出すリチャード・マシスンだが、これは彼にしては凡ゴロの類。しかし、内野手の前でイレギュラーし結果的にヒットになってしまった、というのが僕の印象である。
南仏で釣り船営業をするアメリカ人ブロンスンが妻リヴ・ウルマンと連れ子の娘と一応幸福に暮らしているある夜、不審な男ミシェル・コンスタンタンに家に侵入されるが、軍隊時代の経験を生かして逆に殺す。
警察に届け出ずに死体を海に投げ捨て安心して帰宅すると、今度は彼の仲間であるジェームズ・メースン、ジャン・トパール、ルイジ・ピスティッリが入り込んでいる。刑務所仲間が協力して脱獄して塀の外に出た瞬間に発見された通りがかりの警官を殴殺した時に一人逃げた運転手ブロンスンへの恨みを晴らすことと海上での麻薬売買を手伝わせるのが彼らの眼目。
ブロンスンは妻子を人質に取られるなか色々と反撃を試みるが、何をするか解らない凶暴なトパールによって、他の仲間もブロンスンも追い込まれていく。
マシスンらしからぬ捻りの足りない他愛ないサスペンスで、描写のバランスの悪さが気になるところが多いが、ブロンスンがトパールの流れ弾に当たって瀕死の重態に陥ったメースンの命を救おうとブロンスンが運転技術を生かして車を飛ばすシークエンスがなかなか充実している。VFXで大袈裟になってしまいがちな現在ではこういうわけにはいかない。ただ、車の上方にキラキラするわけのわからないもの(カバー?)が付いているように見えるのが気になった。あれは現在のVFX処理で消すべきであろう。
リヴと娘がメースンがほぼ死んだ後に隙をついて逃げ出しトパールに追われる場面は、バランスに疑問を残すものの、それなりにヒヤヒヤさせられる。
場面として優れているのは、序盤のコンスタンタン侵入におけるサスペンス。カットの割り方がなかなか良い。この辺りは「暗くなるまで待って」で家の中でのサスペンス醸成に巧さを発揮したテレンス・ヤングがその手腕を生かしていると思う。
上出来ではなくても、NHKは昔の映画を大量に放映すべし。再放映は全く構わないが、アカデミー受賞作等人口に膾炙している作品への偏りが目立ち感心しない。
高校生だか大学生の初めだかの時に「夜の訪問者」なる歌謡曲がちょっと流行った。歌ったのは小川順子というアイドル演歌歌手だが、何故か次の曲が「男の世界」。ブロンスンが登場するマンダムのCMの主題歌と同じ題名だった。実に可笑しい。
1970年フランス=イタリア=ベルギー合作映画 監督テレンス・ヤング
ネタバレあり
「雨の訪問者」(1970年)がヒットしたので、チャールズ・ブロンスン主演につき邦題が「夜の訪問者」となったのであった。懐かしいなあ。観たのは劇場公開より数年遅れ、四十数年前にTVのみ。94分という短い映画なのでので完全版だっただろう。
原作は「激突!」など面白いお話を考え出すリチャード・マシスンだが、これは彼にしては凡ゴロの類。しかし、内野手の前でイレギュラーし結果的にヒットになってしまった、というのが僕の印象である。
南仏で釣り船営業をするアメリカ人ブロンスンが妻リヴ・ウルマンと連れ子の娘と一応幸福に暮らしているある夜、不審な男ミシェル・コンスタンタンに家に侵入されるが、軍隊時代の経験を生かして逆に殺す。
警察に届け出ずに死体を海に投げ捨て安心して帰宅すると、今度は彼の仲間であるジェームズ・メースン、ジャン・トパール、ルイジ・ピスティッリが入り込んでいる。刑務所仲間が協力して脱獄して塀の外に出た瞬間に発見された通りがかりの警官を殴殺した時に一人逃げた運転手ブロンスンへの恨みを晴らすことと海上での麻薬売買を手伝わせるのが彼らの眼目。
ブロンスンは妻子を人質に取られるなか色々と反撃を試みるが、何をするか解らない凶暴なトパールによって、他の仲間もブロンスンも追い込まれていく。
マシスンらしからぬ捻りの足りない他愛ないサスペンスで、描写のバランスの悪さが気になるところが多いが、ブロンスンがトパールの流れ弾に当たって瀕死の重態に陥ったメースンの命を救おうとブロンスンが運転技術を生かして車を飛ばすシークエンスがなかなか充実している。VFXで大袈裟になってしまいがちな現在ではこういうわけにはいかない。ただ、車の上方にキラキラするわけのわからないもの(カバー?)が付いているように見えるのが気になった。あれは現在のVFX処理で消すべきであろう。
リヴと娘がメースンがほぼ死んだ後に隙をついて逃げ出しトパールに追われる場面は、バランスに疑問を残すものの、それなりにヒヤヒヤさせられる。
場面として優れているのは、序盤のコンスタンタン侵入におけるサスペンス。カットの割り方がなかなか良い。この辺りは「暗くなるまで待って」で家の中でのサスペンス醸成に巧さを発揮したテレンス・ヤングがその手腕を生かしていると思う。
上出来ではなくても、NHKは昔の映画を大量に放映すべし。再放映は全く構わないが、アカデミー受賞作等人口に膾炙している作品への偏りが目立ち感心しない。
高校生だか大学生の初めだかの時に「夜の訪問者」なる歌謡曲がちょっと流行った。歌ったのは小川順子というアイドル演歌歌手だが、何故か次の曲が「男の世界」。ブロンスンが登場するマンダムのCMの主題歌と同じ題名だった。実に可笑しい。
この記事へのコメント
>はじめの不審な男が歩いてるところだけ妙に覚えている。
>けっこう背が高くて、見た感じが気持ち悪かった記憶がありますね、
60年代後半から70年代初めには侵入ものという作品が、確かに多いですが、ミシェル・コンスタンタンは長身ですし、多分この作品で間違いないと思います。子供心には結構怖いですよね。