映画評「見えない目撃者」(2015年版)

☆☆★(5点/10点満点中)
2015年中国=韓国合作映画 監督アン・サンフン
ネタバレあり

韓国映画「ブラインド」(2011年)を韓国人監督アン・サンフンが中国でセルフ・リメイクした作品。日本の再リメイク版と同時放映されたので、観てみることにしたのだが、逆に同時放映でなければ、両方とも観ない可能性があった。まあその程度の興味しかない作品群ということです。

新人警官の美人ヤン・ミーが、大学にも行かずバンド活動に明け暮れている弟リウ・ルイリンを強引にライブハウスから引っ張り出した結果、交通事故を起こして弟を失い、自らは失明する。そんな彼女がタクシーを呼んで、勘違いでタクシーでない不審な車に乗ってしまう。運転手チュン・ヤーウェンと争っているうちに車は若い女性をはねた後運転手は逃げ、彼女は警察に救助される。
 はねられた女性が発見されない為に当初はヤン・ミーの勘違いと扱われるが、この事故を目撃したスケボー名人の若者ル・ハンも証言をする。3年間の経験により視覚以外の感覚が研ぎすまされていて犯人の特徴を正確に把握するヤン・ミーの前にル・ハン君が、証言を怖れるチュンに襲われる。その情報を合体した結果、チュンが世間を騒がしている連続女子大生誘拐事件の犯人として浮かび上がってくる。
 交際サイトで遊び惚けている妹を見かねて過失死させたチュンが、弟を過失死させたヤン・ミーが車内に落とした日記を読んで同病相憐れむ仲として、強引に心中しようと執拗に狙って来る。以降、ヤン・ミーとル・ハンのカップルが犯人から逃げつつ逆襲し、些か頼りない刑事二人組が犯人を追跡するという構図で進行する。

視覚障害者がその勘を生かして犯人を割り出すというアイデア自体にそう新味があるわけではないが、スマホの機能がその能力に加わって面白味を増している。特に力が入っているのが、ル・ハンがスマホのビデオカメラ機能を使って、お姉さんと慕うようになったヤン・ミーがうまく犯人から逃げられるよう盲導犬ならぬ盲導人間ぶりを発揮するシークエンスで、小ヒットのアイデアと言える。

その代わり、脚本と監督に韓国人が絡んでいる為、韓国映画同様、前半において刑事の二人組がギャグを繰り広げるのは戴けない。

終盤のチュンの家での騒動、続くヤン・ミー豪邸での大サスペンスにも疑問が多い。
 チュンの家では、上司ワン・ジンチュンが犯人と格闘している時に部下が全く別室で活動している。犯人に襲われる可能性がある犯人宅では余程の事情がない限り二人組は一緒に行動すべきで、さもなければ、そうできない理由を設定かつ明示しておく必要がある。日本の大衆刑事映画の類にも分散してわざわざ自らピントを招くという、実にわざとらしい見せ方が多い。
 最後の大サスペンスでは、屋敷の電気を消す「暗くなるまで待って」作戦が通じず、犯人との対決が長すぎてもたつく。ここは、警察が屋敷に迫って来るカットを二回ほどインサートして違う形で緊張感を醸成したほうが良い。急行しているはずの警官の到着が遅くてイライラさせられる次第だが、そのおかげでヒロインの最後の頑張りが機能するので、良し悪しといったところだろうか。

この邦題はなっていない。「見えない目撃者」なら目撃者は透明人間かよと突っ込みたくなる。それを言うなら「目の見えない目撃者」であるべきだが、題名としてはぎこちない。「盲目の目撃者」がベターだが、放映自粛用語に近い言葉なのでこんなぎこちない題名にしたのだろう。

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