映画評「セラヴィ!」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2017年フランス=ベルギー=カナダ合作映画 監督エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
ネタバレあり

「ウェディング・プランナー」(2001年)というアメリカ映画など、この職業を主軸に扱う映画は幾つかあるが、本作はその職業紹介編として最適と言って良いフランス製(ベルギー、カナダとの合作)コメディーではないか。

ベテラン・プランナーのジャン=ピエール・バクリが、古い城での結婚式を取り仕切ることになり、いつものようにメンバーを集めて進行するものの、新郎バンジャマン・ラヴェルネはうるさい要求を突き付けて来るし、雇用人たちはズッコケ連中ばかりで、四苦八苦。

一々書き切れないズッコケ、ポンコツぶりは実際に観てもらうに如くはないが、とにかく、結婚式の舞台裏がよく解り、非常に参考になる。そこに個人事情を交えるのは、定石と言えば定石ながら、映画製作の舞台裏を描いたフランソワ・トリュフォー監督「アメリカの夜」(1973年)にも似て良いアクセントとなっているので、悪くない。

スッコケと言っても、常識以下の泥臭いお笑いが避けられているのが好もしい反面、やや間延びしてもたつくところがあるので★一つがとこマイナスするが、最近観たフランス喜劇の中では、日本だけで評判が良かった「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」とは比較にならない好調ぶり。

日本人としては、お客もサーヴィス提供側も、あるいは雇用者側も被雇用者側も自己主張が強くて一触即発寸前の場面がよく出て来るところがフランス人らしいと興味深い。

ただ笑っていれば良いという作品でもなく、被雇用者の中に旧植民地からの移民がいてズッコケ即ち雇い主としてはマイナスとなることに大いに貢献する(白人はそれ以上にポンコツ)一方、そんな彼等が、式の終盤での大減点を音楽で補ってくれるという場面で、移民たちあるいはポンコツの白人たちを讃える形で終了するのは、近年世界的に目立つ差別や格差に対する、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの映画監督コンビの主張と思って良いだろう。

その昔「セ・ラ・ヴィ」というフランス映画があり、非常に紛らわしい。セラヴィと一語のようにすると、ワラビのような感じがしてくるのがおかしい。

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