映画評「パリ、噓つきな恋」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年フランス=ベルギー合作映画 監督フランク・デュボスク
ネタバレあり

喜劇俳優のフランク・デュボスクが主演を兼ねて、脚本と監督も担当した恋愛コメディーである。

靴流通企業のパリ支店長デュボスクが、母親の死後、その家で車椅子に坐っていたのを、隣に越してきたソーシャルワーカーの美人キャロリーヌ・アングラーデに誤解された為、彼女をたらし込もうと良からぬ考えを起こし、身体障碍者を装う。彼女に実家に招待されたのに気を良くして出かけたものの、彼女の目論見は交通事故で足が動かなくなった姉アレクサンドラ・ラミーと見合いさせること。彼はがっかりするが、オーケストラのバイオリン弾きであり、車椅子テニスのプレーヤーである彼女と無理に付き合ううちに、次第にその積極的・能動的な生き方に惹かれて行く。

嘘と誤解は殆どのシチュエーション・コメディーに使われる手段だから、全く典型的な設定と言うべきだが、どちらかと言えば、趣味としては余り良くない。身体障碍者を騙る(身体障碍者をダシにお話を作る)とは何事か、という思いがまず出て来る。それを多少挽回するのが、その相手を彼が狙った美人ではなく、その姉である身体障碍者にしたところの一工夫である。

相手が誰であっても、いつかは偽装者は真実を告白しなければならない。関係が深くなればなるほど、彼の気持ちが真剣になればなるほど、それが難しくなる。定石的とは言え、このシチュエーションにより可笑し味がたっぷり出て来る、という次第。
 彼のインチキを色々とバックアップするのが彼に長年仕えている秘書エルザ・ジルベルスタインと医師ジェラール・ダルモン。二人は何とか早めに告白させようという立場で、彼らの困惑も可笑しく見られる。
 主人公はルルドの泉による奇跡で誤魔化そうとするものの、当のアレクサンドラが以前から彼の嘘に気付いていたと知って、大いに後悔する。

後の展開は見てのお楽しみだが、要は嘘の恋をすることで三人の女性と絡んだことにより、彼自身が女性の気持ちを理解できるまでに成長する、というお話であると言って良い。最終的に身体障碍者に思いを馳せたような終わり方に仕立てられているものの、やはりこの手の嘘は映画の嘘と分っていても不愉快さを完全には払拭できない。

この作品は男性の手になる作品ながら、昨日の「ニューヨーク 最高の訳あり物件」同様、女性にくらべ男性は何と情ない存在であることか、という内容と言うべし。男性諸君は肩身が狭いですな。

ここ五日で、四本目の出演者が監督をする作品。いや、驚きましたな。

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