映画評「ショック療法」

☆☆★(5点/10点満点中)
1972年フランス=イタリア合作映画 監督アラン・ジェシュア
ネタバレあり

昨日の毒薬も怖いがこちらも怖い。

45年ぶりくらいの再鑑賞になるが、前回味わったパッとしない印象を今回も払拭できず。肝心のサスペンス場面において、VHSのボケボケ画面故に暗すぎて何をやっているのか解らないところがあり、いけません。
 公開当時はアラン・ドロンの全裸シーンのみが話題になった。

40歳くらいの女性工場経営者アニー・ジラルドが友人男性に誘われ、休暇も兼ねて、ドロンが院長を務める若返りの施療院に入る。周囲も富豪連中ばかりで、正体不明の注射などを施されて蘇生感を味わううちに、破産した友人が自殺してしまう。
 彼の自殺はミスリード気味に扱われ、この事件で刑事が登場する。この刑事は終盤において重要な役目を負う為にここに出したと考えられる

アニーが気になるのは、施療院で雑用などをするポルトガルの若者(ブラジル人のようにも見える)たちの顔触れが頻繁に変わることで、彼女に助けを求めて来た若者の脱出に協力しようとした結果、この施療院が隠匿する大いなる秘密に気付く。

これから観る人も大していそうもない、古い映画なので秘密の詳細を明かしても問題はないと思うが、ヒロインがTVのサスペンス劇場の素人探偵のような活躍をするミステリーの体裁になっているので、一応伏せておきます。
 この手の素人探偵の場合、悪の魔の手が近付いてくるのが定石で、謎解きではなくサスペンスのほうが眼目となっている。

解決と言って良い幕切れがあるが、実に暗澹たるもの、実はこの刑事もこの施療院の会員なのである。十分予想がつくものの、一応のどんでん返し的落ちだ。

画面の事情だけでなく、他の作品を全く知らないアラン・ジェシュアという監督(兼共同脚本)の進行ぶりとサスペンス描写に気の抜けたようなところが多く、今一つ面白くない。欧州における一種の南北問題を扱っているところが素材的に僅かに興味になる程度。

アラン氏、最後にドロンと消える。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック