映画評「侵入する男」
☆☆(4点/10点満点中)
2019年アメリカ=カナダ合作映画 監督デオン・テイラー
ネタバレあり
日本の映画館では公開されなかったが、本年4月にデジタル配信された由。
広告代理店社員として大成功した黒人青年マイケル・イーリーが、美人の細君ミーガン・グッドと、これから子供を作って家族団欒に備えようと、かなり森の奥にある広大な邸宅を買うことにする。持主デニス・クエイドがいきなり眼前で鹿を撃ち殺した為に、銃に嫌悪感を抱くイーリー氏は相手を嫌って買うのを止めようかとさえ思うが、細君はそうでもなく、結局買う。
しかるに、妻を失ってフロリダにいる娘のところへ行くのだと告げたクエイド氏はその後勝手に敷地に入ってきて芝生を刈るのを始め、一向にフロリダに出かける様子を見せず、それどころか細君が一人でいる時にプレゼントを持って頻繁に訪れる。
車にはねられて入院したイーリーは不審に思って同僚ジョセフ・シコラに頼み色々と調べさせると、クエイドは借金に追われ家を売ったこと、細君の死に疑惑があることなどが解って来る。しかも、友人の代りに邸宅に様子を見に行ったシコラはクエイドに襲われて死ぬ。
後日クエイドに迫られたミーガンは漸く相手の人物像に気付き、やがて屋敷に秘密の地下室があることを知る。直後にイーリーが病院から帰宅し、銃を持ち出したウエイドと夫婦で対峙することになる。
隣人の恐怖を描いた作品のヴァリエーションだが、売った本人が(家を偏愛し)秘密の地下室に暮らしていたというのはちょっと例がない。褒められるアイデアかと言うと、日本円にして億単位の家を買うのにそんな基本的なことにも気づかない夫婦の迂闊さかげんに呆れるのが関の山。
迂闊と言えば、あれほどクエイドを嫌っているイーリー氏がさっさと警察に捜査その他を依頼しないのが妙だ。彼を悪く思わない細君に遠慮したと理解はできるものの、観客には細君の人が好すぎるように見えるので、余り説得力がない。僕らの疑問を解くように、かなり恐怖を実感するに至って警察に接近禁止命令を依頼する場面があるのに、その後どうなったか全く触れないのは、脚本家が迂闊である。
かくしてお話の為のお話になっているのが本作最大の弱点であるが、そう短くする必要もないところでカットを短くし、しかもちょっと妙なタイミングで変える監督のタッチも気になる。出て来る家は豪華ながら貧弱なプロダクションと言わざるを得ない。
俳優上がりの監督ドン・テイラーも大したことなかったけれど、名前の似たこの監督もこの調子ではあきません。後年大化けするかもしれませんが。
2019年アメリカ=カナダ合作映画 監督デオン・テイラー
ネタバレあり
日本の映画館では公開されなかったが、本年4月にデジタル配信された由。
広告代理店社員として大成功した黒人青年マイケル・イーリーが、美人の細君ミーガン・グッドと、これから子供を作って家族団欒に備えようと、かなり森の奥にある広大な邸宅を買うことにする。持主デニス・クエイドがいきなり眼前で鹿を撃ち殺した為に、銃に嫌悪感を抱くイーリー氏は相手を嫌って買うのを止めようかとさえ思うが、細君はそうでもなく、結局買う。
しかるに、妻を失ってフロリダにいる娘のところへ行くのだと告げたクエイド氏はその後勝手に敷地に入ってきて芝生を刈るのを始め、一向にフロリダに出かける様子を見せず、それどころか細君が一人でいる時にプレゼントを持って頻繁に訪れる。
車にはねられて入院したイーリーは不審に思って同僚ジョセフ・シコラに頼み色々と調べさせると、クエイドは借金に追われ家を売ったこと、細君の死に疑惑があることなどが解って来る。しかも、友人の代りに邸宅に様子を見に行ったシコラはクエイドに襲われて死ぬ。
後日クエイドに迫られたミーガンは漸く相手の人物像に気付き、やがて屋敷に秘密の地下室があることを知る。直後にイーリーが病院から帰宅し、銃を持ち出したウエイドと夫婦で対峙することになる。
隣人の恐怖を描いた作品のヴァリエーションだが、売った本人が(家を偏愛し)秘密の地下室に暮らしていたというのはちょっと例がない。褒められるアイデアかと言うと、日本円にして億単位の家を買うのにそんな基本的なことにも気づかない夫婦の迂闊さかげんに呆れるのが関の山。
迂闊と言えば、あれほどクエイドを嫌っているイーリー氏がさっさと警察に捜査その他を依頼しないのが妙だ。彼を悪く思わない細君に遠慮したと理解はできるものの、観客には細君の人が好すぎるように見えるので、余り説得力がない。僕らの疑問を解くように、かなり恐怖を実感するに至って警察に接近禁止命令を依頼する場面があるのに、その後どうなったか全く触れないのは、脚本家が迂闊である。
かくしてお話の為のお話になっているのが本作最大の弱点であるが、そう短くする必要もないところでカットを短くし、しかもちょっと妙なタイミングで変える監督のタッチも気になる。出て来る家は豪華ながら貧弱なプロダクションと言わざるを得ない。
俳優上がりの監督ドン・テイラーも大したことなかったけれど、名前の似たこの監督もこの調子ではあきません。後年大化けするかもしれませんが。
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