映画評「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督グレッグ・“フレディ”・キャマリア
ネタバレあり

アマゾンの無料プライム会員にさせられて有料会員になる前に抜けるつもりと書いたら、常連のモカさんから無料で観られる音楽ドキュメンタリーを4本紹介された。そのうちの一押しの一本が本作。

僕は映画でも音楽でも外側(映画や音楽の本体以外の部分)の事情を知らずに触れることが多いので、マッスル・ショールズと言われても全くピンと来ないのだが、音楽ファンではあればアビイ・ロードと言うのと同等の価値があるようだ。厳密にはアラバマ州の一町名だが、音楽ファンにはそこにあったスタジオ(フェイム・スタジオ=マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオ)を意味し、同時にリヴァプール・サウンドと言うが如くマッスル・ショールズが彼らのサウンドを指すことがあるのかもしれない。

創設者はリック・ホールと言い、そのスタジオで演奏した4名のスタジオ・ミュージシャンを通称“スワンパーズ”と言う。1961年のスタートで、初期に彼が取り上げたのがビートルズのカバー「アンナ」Annaで知られるアーサー・アレクサンダーである。

最盛期の“スワンパーズ”の演奏で有名になった曲にアレサ・フランクリンの「貴方だけを愛して」I Never Loved a Man (The Way I Love You)やウィルソン・ピケットの「ダンス天国」Land of 1000 Dances、パーシー・スレッジの「男が女を愛する時」When a Man Loves a Woman がある。格好良い演奏ばかりだが、知らなかったなあ。
 彼らは1969年に大手アトランティック・レコードのドム・ダウドにおだてられて(笑)独立し、スタジオを作る。これもマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオと言うらしい。この新しいスタジオで録音されたものを挙げると、ローリング・ストーンズの「ブラウン・シュガー」「ワイルド・ホーシズ」「ユー・ガッタ・ムーヴ」、ポール・サイモンの「僕のコダクローム」Codakrome、レーナード・スキナードのアルバム Street Survivors など。名曲「フリー・バード」Free Birdにも関わったらしい。

一方、優秀なミュージシャンを失ったホールはスタジオ・ミュージシャンに声をかけ、フェイム・ギャング・リズムセクションなるスタジオ・ミュージシャン・グループを作る。それ以前、彼が無名時代にスライド・ギターの名手デュアン・オールマンをアレサ・フランクリンやウィルソン・ピケットのレコーディングに参加させたのも慧眼と言うべし。

インタビュー形式だが、スピード満点に人物を連ね、人物をいつまで見せるようなつまらない見せ方をしていない編集は出色の出来。また、音楽と土地との関連性に言及し、それに即してマッスル・ショールズの風景を大量に取り込んでいるのも新鮮。僕同様に60年代の洋楽が好きな方には、出て来る楽曲を聞くだけでも楽しめると思う。

インタビューされるアーティストの方々も豪華なので、一部紹介しましょう。アレサ・フランクリン、キース・リチャーズ、ミック・ジャガー、ウィルソン・ピケット(アーカイヴ出演)、エタ・ジェームズ、スティーヴ・ウィンウッド、ボノ、ジミー・クリフ、クラレンス・カーター、パーシー・スレッジ、グレッグ・オールマン、アリシア・キーズ(この中では断然と言うか唯一の若手)等々。

モカさんの推薦にハズレなしです。

この記事へのコメント

モカ
2020年11月27日 17:32
こんにちは。

>モカさんの推薦にハズレなしです。

  ありがとうございます! 
  照れるなぁ~ エヘッ・・(クレヨンしんちゃん風で)

 もしオカピー先生のレビューを読んで観てみようかと思われた方(というか先生のお墨付きをもらったので自信をもって言いますが、60年~70年代のロック、ソウル好きの方は必見かと思います)ぜひエンドクレジットを最後まで観てくださいね。
 リック・ホールの最後の言葉が綺麗ごとではなく感動的です。

 

ボールドウィンの「私はあなたのニグロではない」も無料です。
オカピー
2020年11月27日 22:22
モカさん、こんにちは。

>もしオカピー先生のレビューを読んで観てみようかと思われた方

微力のブログで甚だ恐縮です。
音楽好きに人種も民族も何の区別もない。音楽は良いものですね。

>ボールドウィンの「私はあなたのニグロではない」も無料です。

メモメモ。超多忙ですが、これも観ないといけないかな^^

この記事へのトラックバック