一年遅れのベスト10~2020年私的ベスト10発表~

 群馬の山奥に住み、持病もあり、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、僕の2020年私的ベスト10は皆様の2019年にほぼ相当する計算でございます。
 スタンスとして初鑑賞なら新旧問わず何でも入れることにしており、新作が弱いこともあり、今年も古めの作品を入れました。

 2020年鑑賞本数は昨年より3本増えて364本、再鑑賞は78本でした。従って、本稿対象となる初鑑賞作品は286本。30年来の付き合いであるWOWOWが若者、あるいはティーンエイジャー以下の子供と暮らす家族をターゲットに大きくシフトしている為、新作鑑賞は年々減る一方です。知らないうちに入ってしまったプライムビデオの無償映画のおかげで昨年よりわずかに増えた形。昨年はよく観る高校野球がまともに開催されなかったのも本数増加に繋がりました。今年はオリンピックが開かれればぐっと減るのは確か。

 下記の顔ぶれを見れば解るように、2020年は欧米日バランスよく選出される結果に。英国映画系列がここ数年同様に強い感じがします。

 それでは、ラインアップに参りましょう。


1位・・・ディリリとパリの時間旅行
アルセーヌ・ルパンのようなロマンティックな冒険談が好物の僕にはたまらないフランス製アニメ。細密画のような背景にも目が釘付けでしたよ。アニメは自由度において実写より有利なので、いつもは少し順位をいじるのですが、ドキュメンタリーを別にして唯一の☆☆☆☆★作品の名誉の為に今回は採点通り1位即ち作品賞に。因みに、優れたドキュメンタリーを何本も観ましたが、ドラマ映画と一緒に語るのは難しいので、全て除きました。

2位・・・ラストレター
子供の頃から成就しない、若者によるロマンスものが大好きで「若きウェルテルの悩み」「みずうみ」「春の嵐」に耽溺した僕には、この映画は正に御馳走でした。散文的な映画ばかり見せられる中、こんな作品は実に貴重です。ブラボー、岩井俊二!

3位・・・マイ・ブックショップ
今では映画鑑賞以上に読書が楽しみとなった僕は、本絡みの映画に惹かれます。この作品は、英国映画(監督はスペイン人のイザベル・コイシェですが)らしい上品な佇まいがあり、魅力満載。主演のエミリー・モーティマーも好きな女優です。

4位・・・リチャード・ジュエル
日本では本国に比べて評価が高すぎる気がしないでもないクリント・イーストウッドですが、これくらいがっちり見せれば文句なし。文句なしと言いつつ、あの女性記者の扱いは良くないと思ったわけですが、お話の進め方は淀みなくさすがに達者です。

5位・・・天国でまた会おう
1位にした「ディリリとパリの時間旅行」同様ロマンあふれるフランス製冒険映画でして、女性を囲んで二男性の友情がその間に見られるところは傑作「冒険者たち」と似たところも。あの作品にまで到達しないのは、女性が子供であってロマンス気分がないこと、アラン・ドロン程の超絶美男子がいないこと、陶酔させる素晴らしい音楽がないことによります。

6位・・・マザーレス・ブルックリン
さほどドライではないハードボイルドものと言うべき作品で、実に僕の好みに合いました。思わず本音を洩らしてしまう主人公の病気もうまく活用して楽しめる一編。自分の好悪で取り上げた作品が例年以上に多いのも今年の特徴でしょう。

7位・・・メアリーの総て
「フランケンシュタイン」を書いたメアリー・シェリーの伝記映画。文学ファンなので、この手の作品は楽しめるわけです。一種のフェミニズム映画ですが、女性の権利が甚だ制限されているサウジアラビア出身の女性監督ハイファ・アル=マンスールの思いが伝わり、ジャンル映画の形で必要以上に女性を前面に出したがるハリウッド映画のそれとは違い、嫌味のないところが良いですね。

8位・・・ふるさと
これはプライムビデオのおかげで無償で観られて正に僥倖。観たつもりが実は観ていなかった作品です。1983年製作の古い作品ながら大古典でもないので、若い人の目に触れる可能性もあると思い、ここに置きました。社会派要素が底流に置かれ、ノスタルジーに留まらない秀作ではあるものの、爺となった僕には昔流の人の交流を懐かしむ気持ちが湧き上がりましたよ。

9位・・・ガーンジー島の読書会の秘密
本作もまた英国映画の良さが発揮された一編で、しかも本絡み。ナチス・ドイツに占領された英国王室領という史実が興味深く、終盤のロマンスへの傾斜に多少甘さを感じるものの、「マイ・ブックショップ」同様に上品さに惹かれるところ大。

10位・・・グリーンブック
これも本絡み、というのは嘘で、ブックはブックでもアメリカにあった黒人ドライバーがなるべく不快な事態に遭わないように書かれた指南書みたいなもの。上の作品同様、映画にはなかなか知るチャンスのない知識を与えてくれる面があります。黒人アーティストと白人ドライバーによるバディもののようなところも普遍的に楽しめる要素でした。

次点・・・ジョーカー

画像

ワースト・・・超・少年探偵団NEO BEGINNING
ご承知のように、ワースト=一番出来の悪い作品、とは限りませんが、これは内容空疎で出来栄えも一番感心しなかった作品かもしれません。ミステリー好きとして乱歩絡みで期待したものの、ミステリーというよりは若者が独り相撲をする話に終始した感じ。


****テキトーに選んだ各部門賞****

監督賞・・・ミシェル・オスロ~「ディリリとパリの時間旅行」
男優賞・・・池松壮亮~「映画 夜空はいつでも最高密度の青空だ」「宮本から君へ
女優賞・・・シアーシャ・ローナン~「レディ・バード」(今年に入って観た「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」も後押し)
脚本賞・・・岩井俊二~「ラストレター」
撮影賞・・・ウカシュ・ジャル~「COLD WAR あの歌、2つの心
音楽賞・・・下田逸郎~「火口のふたり

この記事へのコメント

2021年01月17日 21:17
我が家は娯楽ものメインのせいもあるのか、4、7、10位しか観ていませんね…。
1位のは、タイトルさえ知りませんでした!
「メアリーの総て」は2018年度マイベスト15位ですが、けっこう印象に残っています。
イーストウッド氏のは、ちゃんとしすぎて最近おもしろく思わないですね…。
浅野佑都
2021年01月18日 06:52
1位「ディリリとパリの時間旅行」 は、昨年の「この世界の片隅に」に続いてのアニメ作品でして、アニメの可能性を今後も予想させるような快挙と言えましょう。
ベスト10なので当然ですが) オール8点以上の作品群は、映画の魅力をあらためて感じさせてくれるものばかりで嬉しくなりますね!

言わずもがなですが、再鑑賞の映画は、除外というか割り引いて評価されるのでしょう。昨年1月アップの「キネマの天地」などは、十分にここに割って入る力のある作品ですし‥。

僕の年度1位は、斬新さと物語の面白さで断然秀でた「天国でまた会おう」で、「すわ、プロフェッサーも9点か?」と思いコメントもしました。
なるほど、画竜点睛を欠いたのは、ドロンの不在と音楽の弱さでしたか(笑)

クリント・イーストウッドに関しては、ポーさんと全く同意見ですね!
昔の彼は、なんというかもっと『歌舞いていた』と思います。「許されざる者」なんか凄い外連を感じたものですし、評判の悪い「真夜中のサバナ」なども僕は好きです。齢90ですからね、彼は・・。ご存命してるだけですでに縁起物ですかね(笑)

シアーシャ・ローナンは、今、もっともアカデミー主演女優賞に近い人でしょう(僕はマーゴット・ギターにも高い評価をしています)
彼女たちが共演した「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」もまた昨今の例に漏れず、いささかポリ・コレ臭が強いですが・・。
オカピー
2021年01月18日 20:12
ぼーさん、こんにちは。

>1位のは、タイトルさえ知りませんでした!

フランス製のアニメですからねえ。アメリカさんと違って業界の扱いが地味です。日本製ともアメリカ製とも違うフランス製にご注目あれ。

>イーストウッド氏のは、ちゃんとしすぎて最近おもしろく思わないですね…。

僕も世評よりイーストウッドには辛口(と言うか日本の世評が高すぎると思います)で、ここ数年ベスト10には絡みませんでしたが、「リチャード・ジュエル」は筋運びが確かで楽しめましたので、久々に。
オカピー
2021年01月18日 20:28
浅野佑都さん、こんにちは。

>アニメの可能性を今後も予想させる

自由度が高いので、巧く作れば本当に素晴らしい作品になりますね。ただ、日本製もアメリカ製も一部を除くと型にはまっている感じが強いです。その点日本に輸入されるフランス製アニメは本当に“我が道を往く”ですね。

>再鑑賞の映画は、除外というか割り引いて評価されるのでしょう。

いや、最初から除外ですよ^^
ブログなんてものを始める前は、観たものすべて対象にベスト30を選んでいましたが、すると毎年のように出て来る作品も出て来て、さすがに他人(ひと)様に紹介するには問題があるだろう、と。
「キネマの天地」は上手いし人情醸成も抜群なので、去年くらいの内容であれば、かなり上位に食い込みますね。

>「天国でまた会おう」で、「すわ、プロフェッサーも9点か?」

すこぶる僕好みのお話ですから、9点でも良いくらい。浅野さんも気に入っているようで、僕も嬉しいデス。

>クリント・イーストウッドに関しては、ポーさんと全く同意見ですね!

昔の彼は良い意味で素人っぽさがあったのだと思います。「リチャード・ジュエル」は完成度が高く、正にプロの作品という感じですから、その点大分違います。

>シアーシャ・ローナンは、今、もっともアカデミー主演女優賞に近い人でしょう
>(僕はマーゴット・ギターにも高い評価をしています)

シアーシャちゃんはマスクは僕好みではないのですが、少女時代から表情が良くてね。
 あれっ、浅野さんも僕と同じ間違いをしている。僕もマーゴット・ロビーを「スーパーマン」に出演したあのマーゴットとよく間違えるのですよ。
モカ
2021年01月19日 16:14
こんにちは。

「ディリリとパリの時間旅行」
 >細密画のような背景

 今現代のパリの写真を使っていますね。少しデジタル加工していますか・・・?  
 ジョルジュ・スーラの「グランドジャット島の日曜日の午後」から抜け出てきたようなシルエットの人達の静止画が写真の街角に佇んでいて、主人公達だけが街角を三輪車?で走り抜けて行くというちょっと不思議な光景に目を奪われていましたが・・・
 何だかだんだんパリの観光案内兼過去の有名人自慢のように見えてきてしまいました。
 極め付けが誘拐犯の親方がどう見ても東洋人なのが気に障りました。 昔の樟脳の袋に書かれていた閻魔大王か当地の千本ゑんま堂のゑんまさんをフランス風にデフォルメした感じ? (笑)

  堂々1位に水を差すようで書こうか迷いましたがひねくれ者の婆の戯言ということでご容赦くださいませ。
「ヴェルディブ・ランデブー」は好きなんですけどね・・・
 続きに「幸せはシャンソニア劇場から」(一瞬ですが前にカートのついた三輪車が出てきます)を観て気を取り直しました。

 ちなみに私の昨年の劇場で観た映画のベスト1は「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」です。
 シアーシャ・ローナンは歴代最高の ”ジョー” でした。
 年々映画館に足を運ばなくなって、特に昨年はコロナの事もあり2本しか観ていませんが・・・
モカ
2021年01月19日 19:28
こんばんは。 どうでもいい訂正です。
樟脳のパッケージに描かれていたのは閻魔大王じゃなくて「鍾馗さん」でした。
オカピー
2021年01月19日 21:50
モカさん、こんにちは。

>今現代のパリの写真を使っていますね。
>少しデジタル加工していますか・・・?

おーっ、予告編で確認しましたが、背景の大変はほぼ写真のようです。仰るように多少いじっているかもしれません。かなりTVから離れて見たせいか、気づかなったなあ。
しかし、エッフェル塔に接近する時など、精密画のようなアニメもあるにはあるようです。

>ジョルジュ・スーラの「グランドジャット島の日曜日の午後」

時代背景も近いですし、意識している可能性はありますーら(笑)

>何だかだんだんパリの観光案内兼過去の有名人自慢のように見えてきてしまいました。

居ながらパリを旅行できるのは楽しみですし、有名人もフランス人ばかりではないので気になりませんでした。

僕が少々気になったのはフランス流ポリ・コレ的な視点ですが、しかし、その散文的な気分を冒険模様が取り払ってくれました。大デュマ、ジュール・ヴェルヌ、ガストン・ルルー、モーリス・ルブランを輩出したフランスのロマン的冒険小説の伝統を感じさせる内容にゴキゲンでしたよん。

>極め付けが誘拐犯の親方がどう見ても東洋人なのが気に障りました。

西洋人のそういうつまらない偏見は、いつも笑い飛ばしちゃいます。

>「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」です。

シアーシャ・ローナンでは意見が合うようです^^
プライムビデオに行きましたら399円でしたので、WOWOWに出るのを待ちます。年内には出るでしょう。


ところで、例の井上陽水・奥田民生の曲「ショッピング」について。
最近突然" Come On a My House"を意識しているような気がしてきました。医者の息子の陽水は、子供の頃、この手の曲を聴いていたのではないかなあ?
モカ
2021年01月20日 16:14
こんにちは。

新年早々先生に盾突いてばかりですが・・・

>「天国でまた会おう」
 傑作「冒険者たち」と似たところも。あの作品にまで到達しないのは、女性が子供であってロマンス気分がないこと、アラン・ドロン程の超絶美男子がいないこと、陶酔させる素晴らしい音楽がないことによります。

この二つは同じ土俵に載せてはいかん物件じゃございませんでしょうか? 大人の女と超絶美男子と素晴らしい音楽を投入しても無理でしょう。(笑) やはりフランス映画はかつての輝きはほぼ失ってしまったと思います・・・残念ですけど・・・
(単にこちらが歳をとって感性が衰えてしまっているのでは?という見方もできますが・・)

「家へおいでよ」"Come on a My house"
はい、これはもう確かに似ています。 異議なしです!
ご本家ローズマリー・クルーニーバージョンはさすがに聴いていたかどうかわかりませんが、当時日本人がカバーしていたのは当然聴いていたでしょうね。 知らない間にアメリカのポップスが体にしみ込んでしまった団塊世代ですかね。
今、1954年の江利チエミで聴いていますが、解説によると1939年に作曲されたがさほど話題にならず、51年にクルーニーが歌って全米№1になったと書いてあります。
オカピー
2021年01月20日 22:31
モカさん、こんにちは。

>やはりフランス映画はかつての輝きはほぼ失ってしまったと思います・・・残念ですけど・・・

それは僕も感じます。しかし、フランスだけでなく、全ての国でそんな感じがあります。英国は結構頑張っているかもしれません。
まあ、そういうざれ事も言わないと、格好がつかなかったという感じです。

>知らない間にアメリカのポップスが体にしみ込んでしまった団塊世代ですかね。

宇崎竜童もそんなことを言っていますね。実際彼の曲は欧米を問わず、色々と取り込んでいるように感じます。
2021年01月23日 10:35
女優賞の、シアーシャ・ローナン最新作良かったですよ〜

シアーシャ・ローナンの一言が今作の出来を体現
=「脚本を読んだ時、ジョーは私だ!と思った」
オカピー
2021年01月23日 21:18
onscreenさん、こんにちは。

>女優賞の、シアーシャ・ローナン最新作良かったですよ〜

評判良いですねえ。きっと年内に見られると思いますので、ベスト10に入るかもしれません。楽しみです。

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