映画評「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2018年アメリカ映画 監督ボー・バーナム
ネタバレあり

エイス・グレードというのはアメリカ教育制度における8年生のことである。どうも現在のアメリカは大体4-4-4制らしいので、中学(Middle)の最終学年ということ。

間もなく高校へ進む大人しい少女ケイラ(エルシー・フィッシャー)は、自信を持つことや大人になることといった自己啓発テーマで、SNSに投稿を続けているが、勿論それは自分に向けたメッセージである。
 中学では結局友達ができず、高校見学(面白い習慣!)でペアを組んだ気の置けない高校4年生の女生徒に好感を覚えるが、男子にちょっかいを出されかけた時に上手く反応できなかった自分に大いに落胆する。
 入学時に卒業時の自分に向けたメッセージを収めたタイムカプセルを燃やし、娘の反撥に戦々恐々(笑)の父親(ジョシュ・ハミルトン)にうまく慰められた彼女は気取らないことが一番という境地に達し、高校に臨む。

最近は年に数本、若者文化をふんだんに取り入れて十代の現実を切り取る作品が紹介される。
 日本との違う文化・風俗への興味と相まって、楽しく見られるが、何分片足を半分棺桶に突っ込んでいる老人には内容だけで満足というわけには参らぬ。少なくとも、一昔前の「JUNO/ジュノ」(2007年)くらいの映画的呼吸の面白さが欲しい。SNSという小道具活用だけではちと物足りない。

エルシーちゃんは「怪盗グルー」シリーズの最初の2本で可愛らしい末娘アグネスの声を当てたらしい。声は大分大人っぽくなりました。

中学生の時ビートルズのLP「サージェント・ペッパー」に収められた“ゲッティング・ベター”の歌詞”The teachers who taught me weren't cool"を“僕を教えた先生方は冷たくなかった”という意味と思った。しかし、高校生の終りくらいになってcoolに“いかしてる”という意味があると知って、膝を打ったのだった。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック