映画評「ベイビーブラザー」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2010年イギリス映画 監督マーク・マンデン
ネタバレあり
二日続けて英国製TV映画をプライムビデオ無償枠にて鑑賞。
14歳の少年トーマス・ブロディ・サングスター君が生後10カ月の異父弟を里親の家から誘拐、亡くなった母親の遺した現金を会ったことはないが現住所だけ知らされている父親宛てに送付した後、赤ん坊を連れてその父親の家を目指そうとする。
その金は自分のものだとこれまた父親の違う18歳の兄アーロン・テイラーが追いかけて来るが、一緒に過ごすうちに二人の弟と別れ難くなり、一緒に父親のいる北を目指す旅に出る。
というロード・ムービーで、愛情深い弟君が迷子の羊を連れていたのが却って幸いしてトラックに拾って貰いその迷子羊を仲間のいる野に放つ、という辺りは牧歌的なロード・ムービーらしさが満点でゴキゲン。
これまた二人の家出少女もどきミシェル・アサンテとマンディープ・ディロンと意気投合し、赤ん坊を含めたこの5人は、以前アーロン君が電車の中で教えてもらったアフガニスタン出身の元軍人エイメン・ハムドゥーチの家に退避する。
このシークエンスでは、少女たちとの連係プレイの呼吸よろしくバスに乗り込んできたサングスター君目当ての警官をうまくまくところが良い。
しかし、気ままで牧歌的なロード・ムービーのムードもこの辺りで終わり、赤ん坊の娘との将来を語るハムドゥーチがあっけなくトラックにはねられて死んでシュンとさせられた後、テイラー君はミシェルに唆されて警察に渡そうとした弟を見捨てられなくなって引き返す。
この場面は、兄弟の関係が子供時代とは違って複雑になってきた僕の胸を熱くする。
兄は警察に手配されているであろう弟の代りに会いに行った父親に冷たく引き取りを拒否された為、彼に父親は亡くなっていたと嘘をつく。しかし、頭を打った赤ん坊を病院に連れて行ったのが運の尽き、弟二人の面倒は自分が見ると言うテイラー君の懸命の訴えも却下され、赤ん坊は恐らく里親に引き取られ、サングスター君は施設に送られることになる。この後三人は一緒に暮らせる日がやって来るのだろうか?
という内容は、少年版「スケアクロウ」(1973年)という感じがする。旅をする間に二人が絆をどんどん深めていく関係性も似ているが、特に父親が引き取りを拒否される終盤の場面は、「スケアクロウ」でアル・パチーノが楽しみにしていた妻子との再会を敢えなく拒絶されて正気を失い、相棒のジーン・ハックマンが庇護する幕切れを思い出させるのである。
ミシェル・アサンテの利己的な少女も人生の苛酷さの一端をうまく見せてい、兄弟愛を際立たせる効果がある。
僕が断然気に入ったのは、テイラー君が弟の元に戻ったのに呆れた彼女が兄弟の母親が残した金(送付した業者から引き取る)を持ち逃げするが、それが偽札と判明、歩道橋の上から投げ捨てると、その紙吹雪の散る道を二人の車が通り過ぎる、という見せ方だ。
これば皮肉な実景と考えても良いが、極めて巧妙な場面転換と考える方が興奮する。これぞ映画(TV映画だが)てなものである。
「メイズ・ランナー」シリーズで有名になったサングスター君(本作製作当時20歳くらい、童顔)もなかなか良いが、日本では本作以外に観られる作品がないアーロン・テイラーが好演。
ベイビーと言えば、ビートルズの「ドライブ・マイ・カー」。誰ですか、赤ん坊が車が運転したら怖いと仰るのは?(笑)
2010年イギリス映画 監督マーク・マンデン
ネタバレあり
二日続けて英国製TV映画をプライムビデオ無償枠にて鑑賞。
14歳の少年トーマス・ブロディ・サングスター君が生後10カ月の異父弟を里親の家から誘拐、亡くなった母親の遺した現金を会ったことはないが現住所だけ知らされている父親宛てに送付した後、赤ん坊を連れてその父親の家を目指そうとする。
その金は自分のものだとこれまた父親の違う18歳の兄アーロン・テイラーが追いかけて来るが、一緒に過ごすうちに二人の弟と別れ難くなり、一緒に父親のいる北を目指す旅に出る。
というロード・ムービーで、愛情深い弟君が迷子の羊を連れていたのが却って幸いしてトラックに拾って貰いその迷子羊を仲間のいる野に放つ、という辺りは牧歌的なロード・ムービーらしさが満点でゴキゲン。
これまた二人の家出少女もどきミシェル・アサンテとマンディープ・ディロンと意気投合し、赤ん坊を含めたこの5人は、以前アーロン君が電車の中で教えてもらったアフガニスタン出身の元軍人エイメン・ハムドゥーチの家に退避する。
このシークエンスでは、少女たちとの連係プレイの呼吸よろしくバスに乗り込んできたサングスター君目当ての警官をうまくまくところが良い。
しかし、気ままで牧歌的なロード・ムービーのムードもこの辺りで終わり、赤ん坊の娘との将来を語るハムドゥーチがあっけなくトラックにはねられて死んでシュンとさせられた後、テイラー君はミシェルに唆されて警察に渡そうとした弟を見捨てられなくなって引き返す。
この場面は、兄弟の関係が子供時代とは違って複雑になってきた僕の胸を熱くする。
兄は警察に手配されているであろう弟の代りに会いに行った父親に冷たく引き取りを拒否された為、彼に父親は亡くなっていたと嘘をつく。しかし、頭を打った赤ん坊を病院に連れて行ったのが運の尽き、弟二人の面倒は自分が見ると言うテイラー君の懸命の訴えも却下され、赤ん坊は恐らく里親に引き取られ、サングスター君は施設に送られることになる。この後三人は一緒に暮らせる日がやって来るのだろうか?
という内容は、少年版「スケアクロウ」(1973年)という感じがする。旅をする間に二人が絆をどんどん深めていく関係性も似ているが、特に父親が引き取りを拒否される終盤の場面は、「スケアクロウ」でアル・パチーノが楽しみにしていた妻子との再会を敢えなく拒絶されて正気を失い、相棒のジーン・ハックマンが庇護する幕切れを思い出させるのである。
ミシェル・アサンテの利己的な少女も人生の苛酷さの一端をうまく見せてい、兄弟愛を際立たせる効果がある。
僕が断然気に入ったのは、テイラー君が弟の元に戻ったのに呆れた彼女が兄弟の母親が残した金(送付した業者から引き取る)を持ち逃げするが、それが偽札と判明、歩道橋の上から投げ捨てると、その紙吹雪の散る道を二人の車が通り過ぎる、という見せ方だ。
これば皮肉な実景と考えても良いが、極めて巧妙な場面転換と考える方が興奮する。これぞ映画(TV映画だが)てなものである。
「メイズ・ランナー」シリーズで有名になったサングスター君(本作製作当時20歳くらい、童顔)もなかなか良いが、日本では本作以外に観られる作品がないアーロン・テイラーが好演。
ベイビーと言えば、ビートルズの「ドライブ・マイ・カー」。誰ですか、赤ん坊が車が運転したら怖いと仰るのは?(笑)
この記事へのコメント
「スケアクロウ」鋭いご指摘!
言われてみれば正にそうですね。
私は現代イギリスという事でケン・ローチのあれこれが浮かんできて「スケアクロウ」のスの字も浮かびませんでした。
ケン・ローチに較べるとこちらの方がティースプーン半分くらいはお砂糖が多いのが救いというか・・・
>日本では本作以外に観られる作品がないアーロン・テイラーが好演。
アーロン・テイラーって「ノーウェア ボーイ」でジョン・レノンをやってませんでした? サングスター君がポール役でしたよ。 ノーウェア・ボーイの監督さんと映画をきっかけに結婚したので(すごい年の差婚・・・)その後「アーロン・テイラー=ジョンソン」になったらしく検索をかけても出てきにくいようです。
「ノクターナル・アニマルズ」で冷血殺人犯役とかもありました。ちょっとカメレオン系みたいで作品ごとに顔が違う(笑)
昨日に引き続きありがとうございます。そして昨日に引き続きこれがテレビのドラマだというのがすごいですね。
最近地上波のTVをほとんど見ないので何とも言えませんが日本のTVはもう末期症状が出ているように思います。
アーロン ジョンソン? アーロン テイラー?
アーロン テイラー ジョンソン? 別人かもです。
すいません。 写真を見ても分からなくなってきました。
HELP!
やはり間違えていました。
ノーウェア ボーイのはアーロン ジョンソン でした。
作品ごとに顔が変わるので、てっきり同じ人だと勘違いしていました。
とっても繊細な表現ができる人なので有名人だと思ってしまいましたが、TVの人なのかなぁ。 だとしたら向こうのTV界は奥が深いですね。
>ケン・ローチに較べるとこちらの方がティースプーン半分くらいはお砂糖が多いのが救いというか・・・
親に問題があるような子供や、虐げられる人が出て来る作品を観ますと、どうしてもケン・ローチを思い出してしまいますね。実際に影響を受けている人は多いと思います。ローチほどシビアではないのは確か。
僕は、兄が弟に嘘をつく場面を見て「スケアクロウ」を思い出しました。
>テレビのドラマだというのがすごいですね。
質だけで言えば映画と遜色ありません。この作品は画面を含めて劇場公開に堪えますよ。
>日本のTVはもう末期症状が出ているように思います。
そう思います。一部のクイズ番組だけ観ています。今面白いのは「東大王」だけ。自分より賢い人を見たい。
>ノーウェア ボーイのはアーロン ジョンソン でした。
リプライする前に正解が出てきましたね。
リプライと言えば名曲「ノー・リプライ」。「ノー・リプライ」のTake 1(demo)が傑作です。間違えた歌詞your face(本来はyour door)を後になってもわざと繰り返すお茶目なジョン。
ノーリプライのtake1ですか~
どこで聴けますか?
リアルタイムのお話。当時はお金がないので日本のシングル盤を買って次にお年玉でEP(4曲入って33回転)が買えるようになって、最後に高校生くらいでやっとLPが買えてというのが一般的流れでした・・・(うちは高校生の兄がいたのでほぼリアルタイムに聴くことができましたが)・・・という事をしているとなぜか同じ曲なのに違うバージョンに出くわす事があったりして・・この頃はビートルズに限らず、何というか統制が取れてなかったというかええ加減なところがありましたね。
Drive My Car は当時のギター小僧を悩ませた裏拍子スタートの典型的な曲ですが No Reply もそうですかね?
家にあるビートルズの楽譜本にはNo Reply は載っていないので分かりませんが・・
そういえば ハードデイズナイトのイントロの「ジャーン」も当時の小僧たちが再現するのに試行錯誤していました。
あれはギターだけでは出せないというのが最近の定説?のようですが。
>ノーリプライのtake1ですか~
>どこで聴けますか?
幾つか聴けるところがありますが、下記が、コメントの殆どが”your face"に触れていて面白いのでお薦め。
https://www.youtube.com/watch?v=w41M3rgEqyo
間違いの件以外でも、ややテンポが速くて新鮮な感じがしますよ。他の箇所でもジョンは歌詞を間違えているのに、本当にいい加減(笑)。
それを残したまま何曲も公式に発表させたジョージ・マーティン若しくはレコード会社はあっぱれ。
>EP(4曲入って33回転)
うんうん。
我が家も貧乏で、姉貴が限られた小遣いの中から、LP「プリーズ・プリーズ・ミー」の最初の4曲を収録したEPを買ってきました。ただ、バラード派の姉は「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」がハード・ロックだったので余り気に入らなかったみたいで、専ら僕が聴いていたな。
それから暫くしてLPを買ったのでした。
>Drive My Car は当時のギター小僧を悩ませた裏拍子スタートの典型的な曲
おおっ、なるほど。
専ら聴く人だった(一時はベースをやろうとしたけど)僕は、言われて初めて解りました。
>No Reply もそうですかね?
テイク1には1,2,3,4、1という掛け声が入っているので、解るかもです。
>あれはギターだけでは出せないというのが最近の定説?のようですが。
調べましたが、色々説があるようですね。
まあ、他の二人が亡くなってしまったので、ポールに聞くのが一番でしょうね(笑)
"No Reply " 聴きました! ラフな(笑)演奏ですね。
"I saw her standing there" 好きですよ~ (スペル間違ってませんかね?) ちょっと歌ってみたところ続きに "P.S.I love you "
が浮かんできましたが・・・この順番だったかな・・・?
you you you~ i love you~ ♬
そうそう、昔同級生でジョン・レノンにかなり似た男子がいましたよ。 特に横顔のラインがそっくりで。ポールに似た男子もいたのですが、彼はもてましたねぇ~
ジョンのそっくり君は全くもてませんでしたがその後東京大学に進学して、一度同窓会で会いましたが大人になるとあんまり似ていませんでした。
>"No Reply " 聴きました! ラフな(笑)演奏ですね。
まあデモですからね。
しかし、この気軽な雰囲気に、“連中の気の良さが俺は大好き”といった意見が目立ちます。
僕もこのデモ・バージョンが好きです。
テイク2はいきなり最終形と近くなりますが、相変わらずyour faceで笑っています(思い出すんでしょうね)。
>"P.S.I love you "
日本版ではそうですね。
僕はLP“Please Please Me”で初めてまともに聴いたので、“Love Me Do”の後という記憶しかないんです。
初めて聞いた時キャッチーな実に良い曲だと思いましたね。
>そっくり君
僕の知り合いのそっくり君は、高校の時の友人二人。一人は五木ひろし、一人は城みちる。城みちる君がブログにも時々登場する僕の映画の友達K君です。