映画評「ビートルズと私」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2012年アメリカ映画 監督セス・スワースキー
ネタバレあり

昨年YouTubeからダウンロードした音源を使って所謂“ゲット・バック・セッション”を大量にCD化して以来、僕の中でビートルズ愛が再燃している。勿論ずっと好きだったのだが、今世紀に入って聴く頻度はそれまでに比べると大分減っていたのだ。
 若い人におけるビートルズ人気も相当のもので、20代以下(つまり30歳未満)が80%、40代以下が95%を占める洋楽アーティスト人気投票で2位の3倍もの得点を稼ぎ出したビートルズの凄さ。僕もここまでとは想像できなかった。オアシスを聴いても、ニルヴァーナを聴いても、レディオヘッドを聴いてもその元を辿るとビートルズがある、ということなのだろう。凄いねえ。日本のスピッツにおいて、ご本人たちはそれほど聴いていなかったということなのにビートルズっぽい曲が少なくないのは、彼らが聴いていた楽曲にビートルズの影響を受けたものが多いということにちがいない。

ところで、YouTubeに置かれていたセッションの音源が昨年8月頃に突然削除の憂き目にあった。どうもこの8月末から劇場公開される予定だったドキュメンタリー映画「ゲット・バック」とダブる音源だったためにちょうど一年前に削除されたようである。セッション一日目は現在聴ける模様。
 しかるに、久しぶりに映画館へ行ってでかい音がビートルズを聴こうと思っていたら、突然配信に変わってしまった。憎きディズニーめ! 

閑話休題。

この映画は、三十数名に渡ってビートルズ好きの著名人やジョージ・マーティンら関係者から色々なお話を聞き出すドキュメンタリー。
 このインタビューを敢行し映画としたセス・スワースキーは音楽家で、映画作りは素人らしいが、余分な話をだらだらさせないで肝心なところだけを流すというスタイルが気が利いている。要点を表したタイトルめいたものが一々出て来るのもユーモラスだ。インタビュー・ドキュメンタリーとしての出来栄えは寧ろ良い部類だろう。

内容としては、楽曲そのものに関わるものは案外少なく(グラハム・ナッシュが「愛こそはすべて」の世界同時録音の現場に呼んでくれたポール・マッカートニーに感謝すると言っていたのが印象的なくらい)、四人のメンバーの行動や人柄に触れるものが多い気がする。
 その他で印象的なのは、ポール・サイモンと再結成的にやったことにジョン・レノンが触れ、“そっちのポールとこっちのポールという話になった”というアート・ガーファンクルの回想(多分S&Gが5年ぶりに一緒に演奏した「マイ・リトル・タウン」を出した1975年のこと)。
 ヤンキーズのバーニー・ウィリアムズが出て来たのにはビックリ、英国人なのにポールはヤンキーズ・ファンなのだそうだ。当然松井も知っているだろう。野球場でコンサートをしたのをきっかけに野球好きになった模様。
 ジョンが小野洋子に追い出された時期に同棲していたメイ・パンも出て来る。

ビートルズ・ファン以外には余り価値がないかもしれないが、ファンには相当面白く観られるはずだ。多分まだプライムビデオにあるので、ご契約者の方は是非どうぞ。

奇しくも「マイ・リトル・タウン」を収めたポール・サイモンのソロ・アルバム「時の流れに」Still Crazy After All These Years をチェンジャーに入れて。この一か月間、4日に一度ほどの頻度で聴いていたところ。

この記事へのコメント

モカ
2021年09月30日 16:52
こんにちは。
何だか見たことがあるなぁと思ったら、数年前にCSで観ていました。タイトルが違っていたかも? ですが。
先日の蟷螂の斧様とのやり取りにあった「長髪のルーツはビートルズ?」っというのを読んで小松成美がインタビューを元に書いた「アストリットキルヒヘア ビートルズが愛した女」を思い出して読み返していた所でした。
このドキュメントはビートルズとの関わりの光の部分しか見せていませんが、(そこまで深く関わっていない人も登場していますから)こちらの本は物事(青春)の光と影がちゃんと記録されています。お読みになりましたか? もしまだなら是非どうぞ。
ちなみにアストリットから前髪を下ろしていわゆるモップトップヘアにするように勧められて真っ先に従ったのがジョージで、最後まで抵抗したのがジョンでしたとさ!
ジョンレノンは意外とマッチョ? (笑)
オカピー
2021年09月30日 21:35
モカさん、こんにちは。

>先日の蟷螂の斧様とのやり取りにあった

うっかりテキトーな答えはできませんねえ^^;

>「アストリットキルヒヘア ビートルズが愛した女」
>こちらの本は物事(青春)の光と影
>最後まで抵抗したのがジョンでしたとさ!

図書館に当たりましたら、「アストリット・Kの存在 ビートルズが愛した女」というタイトルでありました。
彼女の名前は、ドキュメンタリーか伝記映画で知りました。

こういうネタを知っていると後で役に立つかもですね。後で読んでみます。

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