映画評「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」

☆☆★(5点/10点満点中)
2017年ブラジル映画 監督マウロ・リマ
ネタバレあり

WOWOWパンフレットでの紹介を0.5秒くらい読み、アントニオ・カルロス・ジョビンの伝記映画と思って録画した。ジョビンはポピュラー音楽だったよなあと思いつつ観始めたところ、ジョアン・カルロス・マルティンスという1940年生まれのクラシック・ピアニストの伝記映画だった。カルロス違いのお粗末。

ブラジル。父親の影響で始めたピアノで物凄い天才ぶりを発揮した幼少年時代に始まり、超一流の指導者ホセ・クリアスの教えを受けて実力を蓄え、当事国ではないアルゼンチンから渡航資金を出して貰った縁からまずアルゼンチンでコンサートを開き、やがてアメリカ音楽業界と契約する。
 若くして子持ちになった頃、ブラジル人の例に洩れずサッカー好きで、憧れの選手と遊んでいたところ手に大怪我を負い、演奏者生命の最初の危機が訪れる。何とか演奏を続けた後リタイア、数年間他の商売をした後、再びピアニストとして復活、やがて妥協を知らぬドイツ人プロデューサーによるバッハ鍵盤楽曲全曲レコード化に応じる。
 しかし、好事魔多し、ブルガリアで暴漢に頭を強く殴打され神経を麻痺する重傷を負い、これも克服するも、遂にはピアノを弾くことが金輪際できなくなる。すると、今度は指揮の勉強を始め、大指揮者となる。

邦題において“奇跡”ではなく“不屈”としたのはなかなか良いと思う。反面、バッハを最初に持ってくるのは違和感がある。

お話はなかなか面白く、Wikipediaでも確認できる上記物語の狭間に、アルゼンチンでの筆卸しに始まるなかなかの女好きぶりが描かれるところが微笑ましいが、音楽家としての業績の描写に比べると私生活の部分に省略が目立って観客と呼吸が合わないのではないかと思えるところがままある。省略という意味では、ブルガリアでの暴漢襲撃事件における女性の行動も相当不可解。

伝記ものとしてお話がエピソードの羅列にすぎて、映画的な妙味は余り求められない。時々幼少時代のフラッシュバックが入るが、さほど効果的と思えず。

この映画のR‐15はちょっと厳しすぎるような気がする。

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