映画評「サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がTV放映されなかった時)」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督アーミル・トンプスン
ネタバレあり
1969年夏、ウッドストックに先行するように、黒人系の錚々たるメンバーが出演する “ハーレム・カルチュラル・フェスティヴァル” が開催されたが、まともに紹介されることなく封印されてしまった。それを発掘して再編したのが本ドキュメンタリーである。
僕は単純に音楽フェスとして観たかったわけだが、作り手は必ずしもそこだけに関心があったのではないことは内容を見るとよく解る。
今の人種差別問題は、50年前と殆ど変わっていず、逆にこのフェスにおけるパフォーマーたちの言動から改めて人種差別(主に黒人問題)を考えてみようということだ。
純粋に音楽ライブを観たい人には、随時重ねられる外の声が邪魔になると感じられるはずである。逆に、映画として若しくは社会派ドキュメンタリーとして観る向きには、ライブと外の声とがなかなか上手く組み合わされていると思わせるところが多い。
出演者にも政治問題に一家言を持つ人が多く、本作のハイライトとも言うべきニーナ・シモンのパフォーマンスでは、ビル破壊に言及する激しいアジテーションまである。ジャズ・ドラマーのマックス・ローチとアビー・リンカーンの組み合わせもその系列である。
音楽面のクライマックスは、ゴスペルのマヘリア・ジャクソンとステイプル・シンガーズのメイヴィス・ステイプルズの共演だろうか? まだ発展途上のスティーヴィー・ワンダー(当時19歳)は12歳でのデビュー・アルバムでパーカショニストとしての面が目立っていたように、後年余り見られなくなったドラミングも見られるが、キーボードの演奏の仕方がまるで打楽器に当たるような感じであると妙に納得した。
ファンキーでプログレッシブ・ソウルとでも言いたくなるスライ&ザ・ファミリー・ストーンもいかす(この時代のCDを二枚所有)。このバンドは女性のトランぺッター兼シンガーや白人が加わった当時としては変わったバンドで、多様性が叫ばれている現在を先どっているような感じがする。
僕の小中学時代に日本でも人気のあったフィフス・ディメンションやグラディス・ナイト&ザ・ピップス、ブルースのB・B・キング、ラテン系モンゴ・サンタマリア(「ウォーターメロン・マン」で有名)等、出演者は豪華にして多彩、いずれのパフォーマンスも胸を熱くするものがある。
やはりこれは独立して、純然たる音楽ライブ映像としても紹介されるべきだ。
常連のモカさんの一押しがニーナ・シモン。彼女はこの翌年にアメリカを出ることになる。政治的事情だけではないのだろうが、色々と問題があったようだ。
2021年アメリカ映画 監督アーミル・トンプスン
ネタバレあり
1969年夏、ウッドストックに先行するように、黒人系の錚々たるメンバーが出演する “ハーレム・カルチュラル・フェスティヴァル” が開催されたが、まともに紹介されることなく封印されてしまった。それを発掘して再編したのが本ドキュメンタリーである。
僕は単純に音楽フェスとして観たかったわけだが、作り手は必ずしもそこだけに関心があったのではないことは内容を見るとよく解る。
今の人種差別問題は、50年前と殆ど変わっていず、逆にこのフェスにおけるパフォーマーたちの言動から改めて人種差別(主に黒人問題)を考えてみようということだ。
純粋に音楽ライブを観たい人には、随時重ねられる外の声が邪魔になると感じられるはずである。逆に、映画として若しくは社会派ドキュメンタリーとして観る向きには、ライブと外の声とがなかなか上手く組み合わされていると思わせるところが多い。
出演者にも政治問題に一家言を持つ人が多く、本作のハイライトとも言うべきニーナ・シモンのパフォーマンスでは、ビル破壊に言及する激しいアジテーションまである。ジャズ・ドラマーのマックス・ローチとアビー・リンカーンの組み合わせもその系列である。
音楽面のクライマックスは、ゴスペルのマヘリア・ジャクソンとステイプル・シンガーズのメイヴィス・ステイプルズの共演だろうか? まだ発展途上のスティーヴィー・ワンダー(当時19歳)は12歳でのデビュー・アルバムでパーカショニストとしての面が目立っていたように、後年余り見られなくなったドラミングも見られるが、キーボードの演奏の仕方がまるで打楽器に当たるような感じであると妙に納得した。
ファンキーでプログレッシブ・ソウルとでも言いたくなるスライ&ザ・ファミリー・ストーンもいかす(この時代のCDを二枚所有)。このバンドは女性のトランぺッター兼シンガーや白人が加わった当時としては変わったバンドで、多様性が叫ばれている現在を先どっているような感じがする。
僕の小中学時代に日本でも人気のあったフィフス・ディメンションやグラディス・ナイト&ザ・ピップス、ブルースのB・B・キング、ラテン系モンゴ・サンタマリア(「ウォーターメロン・マン」で有名)等、出演者は豪華にして多彩、いずれのパフォーマンスも胸を熱くするものがある。
やはりこれは独立して、純然たる音楽ライブ映像としても紹介されるべきだ。
常連のモカさんの一押しがニーナ・シモン。彼女はこの翌年にアメリカを出ることになる。政治的事情だけではないのだろうが、色々と問題があったようだ。
この記事へのコメント
当地ではまだ劇場で上映中ですよ。
この夏に、これとアレサフランクリンの「アメイジンググレイス」と「BILLIE ビリー」を観ました。どれも長年埋もれていたフィルムが発掘されたもので、埋もれていた事への疑問が無いわけではありませんが、こうして観ることが出来た僥倖を素直に喜ぶべきですね。
1969年ハーレムの熱気が画面から溢れていますね!
スライ、私も好きでした。ファンクのグルーブがヒュンヒュンと空気を切り裂いてましたね。
ニーナシモンはあのままアメリカにいたらサムクックのような不可解な最期を迎えていたと思います。ビリーホリデイが脅迫にもめげずにストレンジフルーツを歌うのをやめず、それが彼女のキャリアや人生をより困難な物にしてしまった事もBILLIEを観てよく分かりましたが、そのストレンジフルーツをニーナシモンは歌い継ぎました。
勇気のいる事だったと思います。私の知る限り当時の黒人歌手は誰も歌っていないんじゃないですかね? 知っている方がおられたら教えてください。スコセッシのブルース誕生100年のプロジェクトではインディア アリーが歌っていましたが。
色々書き出すとキリがないんですが、BBキングの素敵なエピソードを思い出したので聞いてもらえると嬉しいです。確かこの次の年1970年に初来日していて、京都会館での公演に行ったという人に聞きましたが、客席は安い席を買った高校生や大学生がパラパラといる程度の入りでしたが、BBは皆んなにもっと前の席にくる様に促して熱演したとの事です。
チケットの売れ行きが悪くて公演キャンセルした某歌手とは器が違うわ(笑)
>WOWOWお仕事が早いですね!
少しずつ公開日とのスパンが縮まっている傾向にあるように思いますが、この作品は異常に早いです。
しかし、モカさんがご無沙汰でしたので、この作品は打ってつけであろうと、期待してアップしました!
>「アメイジンググレイス」と「BILLIE ビリー」を観ました。
これも早く観たい。
>サムクックのような不可解な最期
暗殺だった?
>知っている方がおられたら教えてください。
モカさんがご存知ないものを僕が知っている筈が・・・(笑)
>BBキング
>チケットの売れ行きが悪くて公演キャンセルした某歌手とは器が違うわ(笑)
KS氏(笑)
BBキングときくと、ビートルズの“Dig It"という曲を思い出すブルース初心者の僕です。
先生の予想通り大好物の餌に食いついたmocafish でした。
最近大昔の映画と邦画、それもここ2、3日はロマンポルノと来ては食いつく隙がなかったのです。ノマドランドは視聴リストに入っていますが、何だか構えてしまって放置してしまってます。そういえば、最近編み物の新刊本でノマドセーターというタイトルを見つけました。中身は遊牧民風セーターでしたが、ノマド、流行語になってるんですかね?
サムクックの不可解な死。今となっては闇の中なのでしょうが、不可解である事は確かなようで…
正しくは「ノマドのニット」でした。どうでもいい話ですが。
サムクックの死に関しては検索すれば閲覧注意の写真なども出てきます。
悪名高いロス市警が牛耳っていた時代ですからね… LAコンフィデンシャル?
ビートルズ DIG IT 聞きました。なるほど…レコードを売っぱらって以来半世紀近く全く聴いていませんでしたのでこの曲は記憶になかったです。ビートルズファンの風上にも置けない奴ですね。(好きな時期もありましたが、ずっとファンだった訳ではないという事でして)
半世紀経って色々な情報に触れるようになって分かったのですが、ビートルズの中のパワーバランスがポールに傾いていった頃から徐々に私のビートルズ離れが始まっていったようです。
>最近大昔の映画
その大昔の「らせん階段」は、ゴシック・ホラーの伝統も感じさせるスリラーなので、悪くないですよ。
>ノマドランドは視聴リストに入っていますが、何だか構えてしまって放置してしまってます。
「ノマドランド」は良い映画と思いますが、好きか嫌いかで言えば、必ずしも上位に来ない。
>閲覧注意の写真
心臓に良くないので、見ないことにします。
>Dig It
LP「レット・イット・ビー」は不協和音が聞こえて好かないなどと言ってきましたが、好きな「ホワイト・アルバム」より余程全員一緒に演奏しているんですよね。最近は、セッションをずっと聴いていたせいもあり、昔より好きになりました。
>パワーバランスがポールに傾いていった頃から徐々に私のビートルズ離れが始まっていったようです。
なるほど、タイミング的には確かに一致するかもですね。
色々説がありますが、「サージェント・ペパーズ」からという人もいます。
「らせん階段」近日中に観る予定です。
あのぉ…お恥ずかしい質問ですが、アマゾンプライムの検索画面で半濁点ってどこにあるんですか? 「パリ」とかが出てこないので困ってます。
>「らせん階段」近日中に観る予定です。
つまらなかったら“ごめんなさい”デス。
>あのぉ…お恥ずかしい質問ですが、アマゾンプライムの検索画面で半濁点ってどこにあるんですか? 「パリ」とかが出てこないので困ってます。
スマートTVの類で検索しているなら、
あいうえお
かきくけこ
・・・・・
らりるれろ
わをん゜゛
のような形でありました。先程確認しました。
”は”を打った後に゜を打つ(決定を押す)と“ぱ”になります。
abcで打つ形もあります(変換はできませんが、候補は出てきます)
いずれにしても面倒臭くて、もっと簡単にできると良いのですがねえ。
申し訳ないです。最初からGoogle君に聞くべきでした。
世間にはご同類がおられると見えて、Q&Aが見つかり問題解決しました。