映画評「炭坑」(1931年)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1931年ドイツ=フランス合作映画 監督ゲオルク・ヴィルヘルム・パプスト
ネタバレあり

ゲオルク・ヴィルヘルム・パプスト(G・W・パプスト)は戦前ドイツの名監督である。戦後も作っているが、何分戦後ドイツ映画が日本で紹介されることが激減していて全く輸入されていないので、戦後どの程度の作品を作っていたかは解らない。
 本作は全盛期即ちトーキー初期の秀作で、【キネマ旬報】の1932年度外国映画4位に選出されている。因みに3位の「三文オペラ」もパプストの作品だ。

1906年に実際に起きた炭坑事故を映画化したものだが、第一次大戦後の独仏国境地帯ザール地方に背景を変えている。

敗戦で物資の少ない時期、ドイツ炭鉱夫3人組がフランス側へ買い物に赴き、立ち寄ったカフェでフランス女性にすげなくされて面白くない。その直後、地下で独仏をまたがっている炭坑で爆発事故が起きる。
 同業者仲間ということでドイツの炭鉱夫たちが救援部隊を結成して駆けつけ、フランス側から入る。フランスを面白く思っていない例の3人組もドイツ側から入り、孫を助けようと勝手に炭坑に入った老人とその孫を発見するが、閉じ込められてしまう。
 全員救われたとされた後、電話連絡で彼らが残されていることを知り、正式部隊が救援に駆け付ける。

というお話で、国境地帯の地下で炭坑がまたがっている設定が大いに生かされたヒューマンなお話で、当時のコミンテルンが喜んだにちがいない内容であるが、実際には、労働者万歳という以上に、反国家権力を訴える内容である。というのも、地上で独仏の労働者が国境を超えた活動を賛美している同じ時期に、地下では独仏官憲が国境に柵をがっちりと作って国境を確認し合っているのである。
 途中に僅かに描かれる大戦時代の回想場面を考え合わせると、反戦映画として見ることができる。

パプストの見せ方は同時代のハリウッド映画に比べると淡々と写実的に描出していて映画的に秀逸。ドイツ救援隊が駆けつけるシークエンスではカメラ・アングルの工夫とシーンの積み重ねで迫真的であるし、事故の再現は実に見事なスペクタクルで大いに見応えある。
 今さら言うまでもないが、いかに素晴らしい内容を含んでいても、こうした映画的要素の卓抜さを欠いては絵に描いた餅に終わってしまう。

本作製作の2年後にナチス政権が生れる。

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