映画評「柔らかな頬」
☆☆★(5点/10点満点中)
2000年日本映画 監督・長崎俊一
ネタバレあり
WOWOWによる天海祐希主演映画特集(と言っても3本だけ)のうちの一本。
TV系のイメージのある天海祐希には余り興味がないものの、原作が桐野夏生で監督が長崎俊一なので観ることにしたが、何とBS-i制作のTV映画だった。TVはまあ良いとして、201分という長尺に腰が引けた。
東京の営業マン?石山(三浦友和)と、取引先社長森脇(渡辺いっけい)の夫人かすみ(天海祐希)が男女の関係になる。石山がその進展の為に購入したと言っても良い北海道の別荘に、二家族がこぞって向かう。しかし、二人が深夜にこっそり楽しんだ翌朝、森脇家の長女有香が姿を消す。この事件により二夫婦は完全に崩壊する。
4年後依然娘を探すかすみは、30歳くらいにして末期がんで余命少ない元刑事内海(松岡俊介)に協力すると言われ、二人は事件の起き、そしてかすみが18年前家出した北海道へ向かうと早々に、借金で姿をくらましたことになっている石山が風俗嬢のヒモとして楽しくやっているのに出会う。
内海は関係者に事件の感想を聞くと称して行方を探そうとするが、結局行方を(即ちその生死も)掴めないまま帰らぬ人となる。その前に彼女は事件に繋がるかもしれないと、18年前に出た家に戻ってみる。
結構本格的なミステリーであるが、事件は解決しない。元刑事が病魔と闘う中で夢に見る形で3つの可能性(仮説)が出て来るだけである。その中でかすみの両親が誘拐したという(彼女が出身地に戻るのは少しそれに関連する)のと、官憲関係者が出世の為に犯行に及んだというのが面白い。
しかし、これだけやっても何も掴めないヒロインは、比較的早めに脳裡に浮かんだように、彼女が情事中に “子供は捨てても良い(かもしれない)” とふと洩らした声を聞いた有香が逆に自分を捨てた(にちがいない)、という確信を抱くのである。
即ち、この作品は、ヒロインが子供を探すうちに自分の人生を遡る物語と言って良いだろう。
北海道から家出した娘が熟した女性になって北海道に戻り、自分が家を捨てたことと娘が自分を捨てたこととをダブらせていく。それは現実に向かい合えない女性が同じような状況の男と探偵じみたことをしてやがて人間の、或いは自分の本性に気付く旅でもある。彼女は親より子供より自分を大事にして生きて来た、というのが彼女の本性である。しかし、その気付きによって彼女は遂に自由を得るかもしれない。
構成力の高い物語である。原作の直木賞受賞は伊達ではないと思わせる。
しかし、映像作品としては、余りにも画面が平べったく腰がない。近年は映画も高解像度のビデオ機材で撮りフィルムを全く通さず作られることが多くなっているが、それでも本作のようなビデオの質感とは全然違う奥行きと濃度があるのである。
脚本も共同編集もしている長崎俊一はなかなかしっかり作っているものの、上記理由で、絵に魅力がない。劇場用映画で観たい素材と言って良く、リメイクを希望する。
三浦夫妻絡みが続く。片や伝説として、片や実際の出演者として。
2000年日本映画 監督・長崎俊一
ネタバレあり
WOWOWによる天海祐希主演映画特集(と言っても3本だけ)のうちの一本。
TV系のイメージのある天海祐希には余り興味がないものの、原作が桐野夏生で監督が長崎俊一なので観ることにしたが、何とBS-i制作のTV映画だった。TVはまあ良いとして、201分という長尺に腰が引けた。
東京の営業マン?石山(三浦友和)と、取引先社長森脇(渡辺いっけい)の夫人かすみ(天海祐希)が男女の関係になる。石山がその進展の為に購入したと言っても良い北海道の別荘に、二家族がこぞって向かう。しかし、二人が深夜にこっそり楽しんだ翌朝、森脇家の長女有香が姿を消す。この事件により二夫婦は完全に崩壊する。
4年後依然娘を探すかすみは、30歳くらいにして末期がんで余命少ない元刑事内海(松岡俊介)に協力すると言われ、二人は事件の起き、そしてかすみが18年前家出した北海道へ向かうと早々に、借金で姿をくらましたことになっている石山が風俗嬢のヒモとして楽しくやっているのに出会う。
内海は関係者に事件の感想を聞くと称して行方を探そうとするが、結局行方を(即ちその生死も)掴めないまま帰らぬ人となる。その前に彼女は事件に繋がるかもしれないと、18年前に出た家に戻ってみる。
結構本格的なミステリーであるが、事件は解決しない。元刑事が病魔と闘う中で夢に見る形で3つの可能性(仮説)が出て来るだけである。その中でかすみの両親が誘拐したという(彼女が出身地に戻るのは少しそれに関連する)のと、官憲関係者が出世の為に犯行に及んだというのが面白い。
しかし、これだけやっても何も掴めないヒロインは、比較的早めに脳裡に浮かんだように、彼女が情事中に “子供は捨てても良い(かもしれない)” とふと洩らした声を聞いた有香が逆に自分を捨てた(にちがいない)、という確信を抱くのである。
即ち、この作品は、ヒロインが子供を探すうちに自分の人生を遡る物語と言って良いだろう。
北海道から家出した娘が熟した女性になって北海道に戻り、自分が家を捨てたことと娘が自分を捨てたこととをダブらせていく。それは現実に向かい合えない女性が同じような状況の男と探偵じみたことをしてやがて人間の、或いは自分の本性に気付く旅でもある。彼女は親より子供より自分を大事にして生きて来た、というのが彼女の本性である。しかし、その気付きによって彼女は遂に自由を得るかもしれない。
構成力の高い物語である。原作の直木賞受賞は伊達ではないと思わせる。
しかし、映像作品としては、余りにも画面が平べったく腰がない。近年は映画も高解像度のビデオ機材で撮りフィルムを全く通さず作られることが多くなっているが、それでも本作のようなビデオの質感とは全然違う奥行きと濃度があるのである。
脚本も共同編集もしている長崎俊一はなかなかしっかり作っているものの、上記理由で、絵に魅力がない。劇場用映画で観たい素材と言って良く、リメイクを希望する。
三浦夫妻絡みが続く。片や伝説として、片や実際の出演者として。
この記事へのコメント