映画評「ジョゼと虎と魚たち」(2020年アニメ版)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2020年日本映画 監督タムラコータロー
ネタバレあり

田辺聖子の同名小説は2003年に犬童一心監督により実写映画化され、実感を伴うなかなかの佳作に仕上がっていた。本作はアニメによる再映画化だが、最初に言ってしまうが、実写版にあった社会や人間の汚れた部分は最小限(ほぼないと言って良い)に抑えられている。ターゲットをアニメ映画を見る標準的な年齢の少年男女(中学生から高校生くらい)にしているということだろう。

メキシコに留学して好きな魚の研究をする(一緒に泳ぐ)のを目標としている男子大学生・恒夫(声:中川大志)が、坂道を車椅子で落ちて来る若い身体障碍者女性・自称ジョゼ(声:清原果耶)を受け止める。社会は悪ばかりと彼女を外に出さないように監視している祖母チヅに感謝されて、彼女を管理するバイトを提案される。
 夢の実現の為資金の必要な彼は申し出を受けるが、ジョゼは嫌がらせのように無理な注文ばかり出して彼を閉口させる。その実頭でっかちの彼女は、彼に連れて行ってもらった海での体験に素直に感動を示し、次第にその距離は縮まるのである。バイト先の同僚である舞(声:宮本侑芽)は彼を慕ってい、潜在的にジョゼとライバル関係になる。
 ある時幹線道路で車椅子で立ち往生したジョゼを助けようとした恒夫は交通事故で大怪我を負い、夢を諦めるところまで追い込まれる。ライバル心を発揮した舞が、絶望する彼に何もできないでいるジョゼをけしかける。これに背を押された彼女は画力を生かして、「人魚姫」のお話をベースにした新作紙芝居を書いて図書館で読み聞かせをする。悪友・隼人に呼ばれた恒夫もその話を聞く。
 それは彼女と恒夫の実話をもじったお話で、俄然彼は発奮、メキシコ留学の夢を実現する。かくして二人は恋仲になるのである。

実写版は苦味を伴う内容だったが、こちらは毒がなく、結末も完全なハッピーエンド。ジョゼの障害に伴うひねくれぶりと内包する孤独は実写版と大差ないにしても、その心情はぐっと単純化されていると思う。恒夫は夢を追う理想的な若者で、これは実写版の今時の大学生ぶりとは大分異なる。
 冒頭に述べたようにターゲットが違い、畢竟目的が違うわけで、その差異があることにのみ言及すれば十分であろう。

青春アニメにありがちな恋の成就が目的となった感があるのは物足りないが、子供たち以上に恒夫に向けられたジョゼの紙芝居の内容がなかなか素晴らしく、案外純情な僕はひたすら感動した。自分の利害を超えた舞たちの協力関係も好感が持てる。

かかるお話を実写版でするとそらぞらしくなるが、その点アニメでは許容の範囲が広がり、素直に楽しめることが多い。但し、やっと一人で歩けるようになったばかりの恒夫が再び落下するジョゼを受け止めるのはやりすぎという気がする。

翻案に近い再映画化でした。

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