映画評「ある人質 生還までの398日」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2019年デンマーク=ノルウェー=スウェーデン=フィンランド合作映画 監督ニールス・アルデン・オプレヴ、アナス・W・ベアデルセン
ネタバレあり
後藤健二氏より1年程前にイスラム国(ISIS)に拘束されていたデンマークの写真家ダニエル・リュー氏の苦難を扱った伝記映画。邦題が全て明らかにしてしまうように、結局彼は13か月の拘束の後に解放される。
彼(エスベン・スメド)は体操選手だったが負傷、師匠について得意としていた写真家になる。やがて彼はトルコ国境に近いシリア貧民を活写する為に赴くが、イスラム国構成員に発見されて、CIAと因縁を付けられて拷問を受ける。
が、最終的に殺されなかったところを見るとCIAではないと、CIAやアメリカを無条件に敵視する彼らも信じたのだろう。
世界の先進国の例に洩れず、デンマーク政府は、要求された高額な身代金を払わない。しかし、家族は寄付や融資などを募ってなるべく満額に近い額を払おうと東奔西走する。ベテラン交渉人アートゥア(アナス・W・ベアデルセン)が懸命に尽力した結果、増額された身代金を用意できたこともあって、拘束から13か月後に解放される。
リューは、直後に殺されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー(トビー・コベル)が口頭で彼に託した最後の言葉を伝える。
こうして映画になっている以上、邦題の件を持ち出すまでもなく、主人公が生還したことは予想されるので、それほど大騒ぎすることではないものの、サスペンスを感じる上でマイナスである。
同時に、映画の狙いはそれ以上に、主人公の苦難の様子と家族・交渉人の頑張りを描くのが目的である筈で、それを指摘するのは的外れかもしれない。
この映画が我々にもたらすのは、それらによる感動というわけ(だけ)でもないだろう。やはり、日本のような世界的に見てもかなり平和な場所に生きている者にとって、反人道的な狂信集団イスラム国への憤怒が一番先に来る。
それと共にこの類の話を聞くたびにいつも思うことがある。この1年弱後に殺される後藤健二氏に浴びせられた国家主義者による “国に迷惑をかけるな” という発想の発言である。残念、というより実に馬鹿げている。彼らは、国は国民を守る(為にある)と言いながら、危ないところに出かける彼らを批判する。国は身代金を払えなどとは僕も言わないが、全て自己責任で済ますのは違うであろう。彼のようなジャーナリストがいることで世界や日本に資することが少なくない、と思うのである。
閑話休題。
この内容に必要ではないということもあり、特に大胆な映画的手法や撮影方法を採っていないが、お話の進め方はがっちりしている。カメラも堅実と思う。
北欧四か国が全て絡み、他に出資国がない合作映画は初めて観たような気がする。
2019年デンマーク=ノルウェー=スウェーデン=フィンランド合作映画 監督ニールス・アルデン・オプレヴ、アナス・W・ベアデルセン
ネタバレあり
後藤健二氏より1年程前にイスラム国(ISIS)に拘束されていたデンマークの写真家ダニエル・リュー氏の苦難を扱った伝記映画。邦題が全て明らかにしてしまうように、結局彼は13か月の拘束の後に解放される。
彼(エスベン・スメド)は体操選手だったが負傷、師匠について得意としていた写真家になる。やがて彼はトルコ国境に近いシリア貧民を活写する為に赴くが、イスラム国構成員に発見されて、CIAと因縁を付けられて拷問を受ける。
が、最終的に殺されなかったところを見るとCIAではないと、CIAやアメリカを無条件に敵視する彼らも信じたのだろう。
世界の先進国の例に洩れず、デンマーク政府は、要求された高額な身代金を払わない。しかし、家族は寄付や融資などを募ってなるべく満額に近い額を払おうと東奔西走する。ベテラン交渉人アートゥア(アナス・W・ベアデルセン)が懸命に尽力した結果、増額された身代金を用意できたこともあって、拘束から13か月後に解放される。
リューは、直後に殺されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー(トビー・コベル)が口頭で彼に託した最後の言葉を伝える。
こうして映画になっている以上、邦題の件を持ち出すまでもなく、主人公が生還したことは予想されるので、それほど大騒ぎすることではないものの、サスペンスを感じる上でマイナスである。
同時に、映画の狙いはそれ以上に、主人公の苦難の様子と家族・交渉人の頑張りを描くのが目的である筈で、それを指摘するのは的外れかもしれない。
この映画が我々にもたらすのは、それらによる感動というわけ(だけ)でもないだろう。やはり、日本のような世界的に見てもかなり平和な場所に生きている者にとって、反人道的な狂信集団イスラム国への憤怒が一番先に来る。
それと共にこの類の話を聞くたびにいつも思うことがある。この1年弱後に殺される後藤健二氏に浴びせられた国家主義者による “国に迷惑をかけるな” という発想の発言である。残念、というより実に馬鹿げている。彼らは、国は国民を守る(為にある)と言いながら、危ないところに出かける彼らを批判する。国は身代金を払えなどとは僕も言わないが、全て自己責任で済ますのは違うであろう。彼のようなジャーナリストがいることで世界や日本に資することが少なくない、と思うのである。
閑話休題。
この内容に必要ではないということもあり、特に大胆な映画的手法や撮影方法を採っていないが、お話の進め方はがっちりしている。カメラも堅実と思う。
北欧四か国が全て絡み、他に出資国がない合作映画は初めて観たような気がする。
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