映画評「ペトルーニャに祝福を」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年北マケドニア=ベルギー=スロヴェニア=クロアチア=フランス合作映画 監督テオナ・ストルガル・ミテフスカ
ネタバレあり
僕は、(右派の嫌いな?)ジェンダー平等こそ、右派の好きな “国の発展” に寄与するともう何十年も前から言っているが、男女平等を主張する映画ばかりになれば映画ファンとして良い顔ばかりもしていられない(逆に言えば、男性社会がまだまだ続いているということ。男性として謝るしかない)。
作りの巧さで見落とされがちだろうが、先日の「プロミシング・ヤング・ウーマン」もその類であった。珍しくも北マケドニアがフランスなどの協力を得て作られた本作も同様だ。
32歳になる今日まで正業についたことのない大卒未婚女性ペトルーニャ(ゾリツァ・ヌシェヴァ)は、母親に勧められて出かけた縫製工場でのセクハラめいた面接の後、取った者が幸福になると言われる “十字架投げ” の祭りに遭遇、司祭が川に投げ込んだ十字架を“掟”に反して、最初に取ってしまう。
怒ったのは参加した男性の諸君だが、教会も当惑し、警察まで出てくる始末。逮捕ではなく事情聴取されることになるが、やがて外で大騒ぎが起きると警察も態度を変え、男たちを拘留し、代わりに彼女を十字架所持を認めたまま無罪放免する。彼女は、幸福を求める男性たちの為に十字架を返す。
という、実に言いたいことが理解しやすい寓話。男性優位社会で幸福を求めていたペトルーニャが、実は自信も幸福も持たない男性たちと色々やり取りするうちに得心して、寧ろ女性より可哀想な男性たちを憐れむほどにまでなるのである。
実話にアイデアを得たと言っても、実社会ではこんな寓話通りに行かないが、実社会へのアンチテーゼとして女性監督テオナ・ストルガル・ミテフスカが皮肉をぶつけていると理解できる次第。作者のやりたいことが解りやすい作品が好きであると先月の「鳩の撃退法」評で言ったものの、余りに露骨すぎるのもどうかと思うくらいで、少々興醒める。
女性ジャーナリスト役のラビナ・ミテフスカは監督の妹。
北マケドニアの男女差別を云々している人が多いが、日本において大相撲の土俵に女性が上がれないのと外形的には大して変わらない。伝統というのは、そういう意味で非常に馬鹿らしくも恐ろしくもある。
2019年北マケドニア=ベルギー=スロヴェニア=クロアチア=フランス合作映画 監督テオナ・ストルガル・ミテフスカ
ネタバレあり
僕は、(右派の嫌いな?)ジェンダー平等こそ、右派の好きな “国の発展” に寄与するともう何十年も前から言っているが、男女平等を主張する映画ばかりになれば映画ファンとして良い顔ばかりもしていられない(逆に言えば、男性社会がまだまだ続いているということ。男性として謝るしかない)。
作りの巧さで見落とされがちだろうが、先日の「プロミシング・ヤング・ウーマン」もその類であった。珍しくも北マケドニアがフランスなどの協力を得て作られた本作も同様だ。
32歳になる今日まで正業についたことのない大卒未婚女性ペトルーニャ(ゾリツァ・ヌシェヴァ)は、母親に勧められて出かけた縫製工場でのセクハラめいた面接の後、取った者が幸福になると言われる “十字架投げ” の祭りに遭遇、司祭が川に投げ込んだ十字架を“掟”に反して、最初に取ってしまう。
怒ったのは参加した男性の諸君だが、教会も当惑し、警察まで出てくる始末。逮捕ではなく事情聴取されることになるが、やがて外で大騒ぎが起きると警察も態度を変え、男たちを拘留し、代わりに彼女を十字架所持を認めたまま無罪放免する。彼女は、幸福を求める男性たちの為に十字架を返す。
という、実に言いたいことが理解しやすい寓話。男性優位社会で幸福を求めていたペトルーニャが、実は自信も幸福も持たない男性たちと色々やり取りするうちに得心して、寧ろ女性より可哀想な男性たちを憐れむほどにまでなるのである。
実話にアイデアを得たと言っても、実社会ではこんな寓話通りに行かないが、実社会へのアンチテーゼとして女性監督テオナ・ストルガル・ミテフスカが皮肉をぶつけていると理解できる次第。作者のやりたいことが解りやすい作品が好きであると先月の「鳩の撃退法」評で言ったものの、余りに露骨すぎるのもどうかと思うくらいで、少々興醒める。
女性ジャーナリスト役のラビナ・ミテフスカは監督の妹。
北マケドニアの男女差別を云々している人が多いが、日本において大相撲の土俵に女性が上がれないのと外形的には大して変わらない。伝統というのは、そういう意味で非常に馬鹿らしくも恐ろしくもある。
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