映画評「ファーストラヴ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年日本映画 監督・堤幸彦
ネタバレあり
島本理生の小説を映画化した作品としては「ナラタージュ」より上出来。かの作品は潜在力はあったが、内容に比して長すぎ☆★を増やせなかった。
島本理生のイメージに反して、本作は純ロマンス映画ではなく、心理サスペンスである。
TVの女子アナを目指して入社試験を受けたばかりの女子学生・芳根京子が、その足で向った美術大学で美術家の父親・板尾創路を刺殺した罪で逮捕される。
国選弁護士に若手・中村倫也が選ばれる。彼の義姉である公認心理士・北川景子が “何故殺したのか教えてくれ” と挑発的な態度を取ったという女子学生に興味を持ち、彼女の気持ちを引き出すと共に本にしようと接見する。裁判に有利に働くと見込んで、昔交際していた時期もある同級生たる中村は共同歩調を取る。兄は写真家の窪塚洋介だが、両親不在で引き取ってくれた伯母夫婦の息子なので、本当は従兄なのだ。
という辺りの状況が説明されるに及んで、ややこれは法廷ものをダシにした恋愛心理映画になっていくかと嫌な予感がしたが、北陸に住む父親の元生徒・石田法嗣が登場し、被告の小学生だった10年前を語るところから、そうならないことが解って一安心した。
父親の美術塾で全裸の男性モデルを横に配置され、7~8名の男子の視線に晒される女子学生の小学生時代のトラウマと、小学生時代に父親の買春を知らされ成人式の日に正しく認識して男性不信に陥ったヒロインのトラウマとが相似形を呈するうち、女子学生が真相を告白する。
このヒロインの真情が法廷場面のハイライトとなり、僕の胸を打った。概ね同じような感想を持つAllcinemaの投稿者KE氏の意見において、僕と大きく乖離するのはこの部分である。彼は彼女のサイコパス性を望んでいたらしいが、僕は通常の女性の心理を観る方が精神衛生的に良いので、この映画の方針を好むのだ。
芳根京子のこの場面の演技は良いと思うが、ヒロインの北川景子は明らかにオーヴァーアクトが続く。
監督の堤幸彦はシリアス・ドラマにおいて、神の視点を意識しているのか、空撮や高所撮影を使って終わる傾向にあるが、本作は開巻早々ヒッチコックの「フレンジー」(1972年)を小ぶりにしたような見せ方(ドローンもコンピューター技術もない時代にあのような画面を構成したのは凄いと思う)をして面白がらせる。クレーンかと思ったが、どうもドローンを使ったようである。そして、最後は空撮である。
原作者の男性敵視ぶりが少々気になるが、最近はそういう意見を言うだけでも炎上しかねない。弊ブログのように影響力のないブログでは滅多にないが、アカデミー賞の多様性基準に少々難癖をつけた時にお叱りを受けたことがある。
その方は多様性基準に作品の中身は関係ないとしたが、実際には大ありで、そのうち有色人種が絡む筈のない史劇に有色人種が出てくるだろうという僕の予想は全く正しかった(厳密には、僕が観た二作では、白人役を有色人種がやっているということらしいのだが、知識のない人がその当時に有色人種が闊歩していたと勘違いする可能性があるので、僕は、本編の始まる前にその旨を通知しない限り、そのようなものをも歓迎しない)。
「ファースト・ラブ」という邦題の映画は過去に二つあるが、本作はヴですよ。
2021年日本映画 監督・堤幸彦
ネタバレあり
島本理生の小説を映画化した作品としては「ナラタージュ」より上出来。かの作品は潜在力はあったが、内容に比して長すぎ☆★を増やせなかった。
島本理生のイメージに反して、本作は純ロマンス映画ではなく、心理サスペンスである。
TVの女子アナを目指して入社試験を受けたばかりの女子学生・芳根京子が、その足で向った美術大学で美術家の父親・板尾創路を刺殺した罪で逮捕される。
国選弁護士に若手・中村倫也が選ばれる。彼の義姉である公認心理士・北川景子が “何故殺したのか教えてくれ” と挑発的な態度を取ったという女子学生に興味を持ち、彼女の気持ちを引き出すと共に本にしようと接見する。裁判に有利に働くと見込んで、昔交際していた時期もある同級生たる中村は共同歩調を取る。兄は写真家の窪塚洋介だが、両親不在で引き取ってくれた伯母夫婦の息子なので、本当は従兄なのだ。
という辺りの状況が説明されるに及んで、ややこれは法廷ものをダシにした恋愛心理映画になっていくかと嫌な予感がしたが、北陸に住む父親の元生徒・石田法嗣が登場し、被告の小学生だった10年前を語るところから、そうならないことが解って一安心した。
父親の美術塾で全裸の男性モデルを横に配置され、7~8名の男子の視線に晒される女子学生の小学生時代のトラウマと、小学生時代に父親の買春を知らされ成人式の日に正しく認識して男性不信に陥ったヒロインのトラウマとが相似形を呈するうち、女子学生が真相を告白する。
このヒロインの真情が法廷場面のハイライトとなり、僕の胸を打った。概ね同じような感想を持つAllcinemaの投稿者KE氏の意見において、僕と大きく乖離するのはこの部分である。彼は彼女のサイコパス性を望んでいたらしいが、僕は通常の女性の心理を観る方が精神衛生的に良いので、この映画の方針を好むのだ。
芳根京子のこの場面の演技は良いと思うが、ヒロインの北川景子は明らかにオーヴァーアクトが続く。
監督の堤幸彦はシリアス・ドラマにおいて、神の視点を意識しているのか、空撮や高所撮影を使って終わる傾向にあるが、本作は開巻早々ヒッチコックの「フレンジー」(1972年)を小ぶりにしたような見せ方(ドローンもコンピューター技術もない時代にあのような画面を構成したのは凄いと思う)をして面白がらせる。クレーンかと思ったが、どうもドローンを使ったようである。そして、最後は空撮である。
原作者の男性敵視ぶりが少々気になるが、最近はそういう意見を言うだけでも炎上しかねない。弊ブログのように影響力のないブログでは滅多にないが、アカデミー賞の多様性基準に少々難癖をつけた時にお叱りを受けたことがある。
その方は多様性基準に作品の中身は関係ないとしたが、実際には大ありで、そのうち有色人種が絡む筈のない史劇に有色人種が出てくるだろうという僕の予想は全く正しかった(厳密には、僕が観た二作では、白人役を有色人種がやっているということらしいのだが、知識のない人がその当時に有色人種が闊歩していたと勘違いする可能性があるので、僕は、本編の始まる前にその旨を通知しない限り、そのようなものをも歓迎しない)。
「ファースト・ラブ」という邦題の映画は過去に二つあるが、本作はヴですよ。
この記事へのコメント