映画評「霧の旗」(1977年版)

☆☆★(5点/10点満点中)
1977年日本映画 監督・西河克己
ネタバレあり

松本清張の有名小説の二度目の映画化(TV映像化は9回)。映画界で三度目の清張ブームの頃に作られたが、当時映画館まで観に行った人の大多数は山口百恵主演のアイドル映画として観たはずである。

九州で金貸しの老女(原泉)が撲殺され、彼女に借金のあった小学校教師・柳田正夫(関口宏)が逮捕される。兄の無罪を信じる妹・桐子(山口百恵)は、東京の辣腕弁護士・大塚欣三(三國連太郎)であれば無罪が勝ち取れるかもしれないと聞かされ、遥々東京まで出かけるが、多忙を理由にすげなく断られる。
 兄が有罪判決の後に獄死すると、再度上京して高級クラブで働き始める。クラブの同僚・信子(児島美ゆき)に頼まれて尾行したその恋人(夏夕介)の部屋の前で、彼の死体を発見して激しく動揺するレストラン経営者・河野径子(小山明子)と出くわす。彼女が去った後、落ちていたライターを拾ってしまい込み、別の所に落ちていた彼女の手袋を死体のそばに置く。
 桐子は、状況証拠から径子が犯人として逮捕された為彼女を愛人とする大塚弁護士に証言を懇願されるが、知らぬ存ぜぬと一点張り。遂に屈して証拠のライターを返すと思いきや、寄って貰った家での行為を材料に彼を奈落の底に突き落とす。

原作や山田洋次が監督した1965年版と変わらず壮絶な物語だが、大きく違うのは、梗概で出すところがなかった雑誌記者・阿部啓一(三浦友和)の出番がぐっと増えたことである。
 勿論、百恵=友和のコンビ作として作る為で、当然の如くロマンス要素が加わっている。しかし、これが実に夾雑物的で、ミステリー・サスペンスとしての純度を損なう。彼がもう少し彼女の行動をサスペンス的に左右する存在であるように改変していれば良かったのだが。

いずれにしても、大塚弁護士は獄死を知って事件を調べ直そうという気にもなったくらいの人物だから、ヒロインの逆恨みに近い内容で、ヒロインを含め誰一人この結果に良い気分になった登場人物がいない為、後に残るのはヒロインの復讐心の壮絶さばかり。
 しかし、記者が周囲で動くために、復讐ムードが1965年版ほど上手く醸成されず、観客がその復讐心に慄く前に事が終わってしまうという感じである。

原作由来だが、65年作でも指摘したように、偶然に頼るところがあるのが最大の弱点か。

これっきり これっきり もうこれっきりの旗。「横須賀ストーリー」はイタリアン・ツイストの要素が入っている。この曲が入ったLPのA面はイタリアン・ツイスト(1960年代初めに大流行した「太陽はひとりぼっち」主題曲や「サンライト・ツイスト」など)を意識していて、直後の「自転車の上の彼」もツイストしている。面白いよ。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック