映画評「レミニセンス」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督リサ・ジョイ
ネタバレあり

リサ・ジョイという女性監督はクリストファー・ノーランの弟の細君だそうで、時間と記憶にかかわる本作の内容などはその影響かと想像したくなる。

環境問題のせいで多くの土地が水没した、しかも、戦争後という近未来のマイアミ。
 退役軍人のヒュー・ジャックマンは、元戦友らしい黒人女性タンディー・ニューマンと、望む人に見たい記憶を呼び起こす商売を営んでいる。それは立体映像としてジャックマンらにも見える仕組みで、その為に本人が記憶もしくは注目していない情報を知ることができる。
 ある時鍵を忘れたという美人レベッカ・ファーガスンが訪れ、彼と恋に落ちるが、やがて彼女は失踪する。どうも麻薬ギャングの麻薬転売に関わったようなのである。彼女の映像にも別の顧客の映像にも映った警官クリス・カーティスを追跡すれば失踪の謎と居場所が理解できると踏んだ彼は、危険な目に遭いながらもやっと捉えたカーティスから情報を得る。

というお話で、途中まではゴキゲンである。本格的なハードボイルド・スタイルに入って行くからである。夢の中の夢を見せられている感じがくどくなくもないが、全体としては悪くない。本人も意識していない細部がジャックマンらにも解るという設定が生きて、探偵ものらしい気分が大いに出てくるところが良いのである。
 しかし、主人公がカーティスに突き当たると彼との格闘がかなり長くなって胃がもたれ、オルフェウスの伝説を改竄してまでの些かソフトに過ぎる終わり方をするところでガックリくる。

水を湛えた景観を筆頭にSFらしい造形的な画面に魅力的なところが多いが、僕は Allcinema の投稿者KE氏と違って、 映画は絵が良ければ全て良しとは考えない。かと言って話が良ければカメラなどどうでも良いという立場でもない。映画によってバランスは任意に考えるが、どんなに偏って見るにしても7:3が限度である。本作は6:4くらいで絵のほうが重要としても次第にお話が残念な方向に進むので、このくらいの☆★とせざるを得ない。

“『チャイナタウン』に向かう『バニラ・スカイ』のどこかで、『マルタの鷹』と『インセプション』が出会ったかのような独創的で野心的な作品”としたリチャード・ローパーという批評家の表現は見事に正鵠を射てい、大いに感心した。今度何かの作品においてこの手を使ってみよう。

偶然にもハメット「マルタの鷹」を図書館で借りて来た。長期休館のため調整弁として借りて来たので、読むかどうかは他の長い本の進捗次第なのですがね。

この記事へのコメント

2022年07月03日 23:39
2021年度のマイベスト16位。この年は17本しか劇場で観ていませんので、めでたい、ブービー賞です!
唯一、期待したレベッカさんが魅力的でなかったので、もうね、しゅわしゅわ空気抜けました…。
オカピー
2022年07月04日 20:13
ボーさん、こんにちは。

>期待したレベッカさんが魅力的でなかったので、もうね、しゅわしゅわ空気抜けました…。

それはご愁傷さまでした<(_ _)>

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