映画評「君は永遠にそいつらより若い」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・吉野竜平
ネタバレあり
2009年に芥川賞を受賞した津村記久子のデビュー作(2005年発表)の映画化。脚色も担当している監督の吉野竜平は全く初めて観るが、なかなか感じが良い。
京都。児童福祉士という就職も決まった大学4年生・佐久間由衣が、卒論のアンケート絡みで、他学科の3年生・奈緒と知己になる。それまでも他者を理解する力を欠落していると感じていたが、いつも特殊な帽子を被る彼女の中学生時代の経験に基づく耳の傷跡を見せられて、自分の足りないものはやはり他者を見る力なのだと確信する。
少し前に飲み会で知り合った同学科・小日向星一の友人・笠松将が自殺した後に発見された、笠松君のネグレクトの児童への思いを知った彼女は、目張りされた窓を突き破って少年を救出する。
複雑な精神性を持つ奈緒は大学を休学して、離婚した両親から引き取ってくれた祖母のいる小豆島に戻る。就職後の由衣は自分から力を引き出してくれたにちがいない彼女に会いに小豆島へのフェリーに乗る。
この映画のキーワードは案外 “とっちらかっている” なのかもしれない。そのとっちらかっているヒロインが自分を見つめて少し変わって行く内容を綴っているので、内容もとっちらかっているのだが、そのスケッチ的な描写の積み重ねが青年期の混乱した感じをよく出している。
この作品には普遍性があると思う。本作に出てくる登場人物は、一見あっけらかんと生きているヒロインやそのバイト先の後輩学生・葵揚を含めて、内面に苦痛を抱えている。葵青年の場合は殆どお笑いながら、それでも本人にしてみれば苦しいわけで、そのヒリヒリ感にその年頃を40年前に過ごした僕も辛くなるものを覚える。この感覚は時代を超えるものがある。
本作の通奏低音は“気付くこと”、実質的に“気付かないこと”。“気づかないこと”はヒロインを新しい階段を上る契機を与える。 “気付くこと”に精神を傾けるようになった彼女は、児童虐待の可能性のある家の前に凛とした態度で立つのである。
タイトルの “君” は10年くらい前に誘拐された少年を指し、ヒロインはその少年の事件が何故か心にひっかかって児童福祉士を目指したということ。ヒリヒリした感じはあるが、重くないのが良い。この内容なのに軽快さを残すのは、吉野監督の殊勲と言うべし。
身長差15cmの凸凹コンビ。奈緒ちゃんも157cmだから、ほぼ日本人女性の平均なのだけど。
2020年日本映画 監督・吉野竜平
ネタバレあり
2009年に芥川賞を受賞した津村記久子のデビュー作(2005年発表)の映画化。脚色も担当している監督の吉野竜平は全く初めて観るが、なかなか感じが良い。
京都。児童福祉士という就職も決まった大学4年生・佐久間由衣が、卒論のアンケート絡みで、他学科の3年生・奈緒と知己になる。それまでも他者を理解する力を欠落していると感じていたが、いつも特殊な帽子を被る彼女の中学生時代の経験に基づく耳の傷跡を見せられて、自分の足りないものはやはり他者を見る力なのだと確信する。
少し前に飲み会で知り合った同学科・小日向星一の友人・笠松将が自殺した後に発見された、笠松君のネグレクトの児童への思いを知った彼女は、目張りされた窓を突き破って少年を救出する。
複雑な精神性を持つ奈緒は大学を休学して、離婚した両親から引き取ってくれた祖母のいる小豆島に戻る。就職後の由衣は自分から力を引き出してくれたにちがいない彼女に会いに小豆島へのフェリーに乗る。
この映画のキーワードは案外 “とっちらかっている” なのかもしれない。そのとっちらかっているヒロインが自分を見つめて少し変わって行く内容を綴っているので、内容もとっちらかっているのだが、そのスケッチ的な描写の積み重ねが青年期の混乱した感じをよく出している。
この作品には普遍性があると思う。本作に出てくる登場人物は、一見あっけらかんと生きているヒロインやそのバイト先の後輩学生・葵揚を含めて、内面に苦痛を抱えている。葵青年の場合は殆どお笑いながら、それでも本人にしてみれば苦しいわけで、そのヒリヒリ感にその年頃を40年前に過ごした僕も辛くなるものを覚える。この感覚は時代を超えるものがある。
本作の通奏低音は“気付くこと”、実質的に“気付かないこと”。“気づかないこと”はヒロインを新しい階段を上る契機を与える。 “気付くこと”に精神を傾けるようになった彼女は、児童虐待の可能性のある家の前に凛とした態度で立つのである。
タイトルの “君” は10年くらい前に誘拐された少年を指し、ヒロインはその少年の事件が何故か心にひっかかって児童福祉士を目指したということ。ヒリヒリした感じはあるが、重くないのが良い。この内容なのに軽快さを残すのは、吉野監督の殊勲と言うべし。
身長差15cmの凸凹コンビ。奈緒ちゃんも157cmだから、ほぼ日本人女性の平均なのだけど。
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