映画評「TOVE/トーベ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年フィンランド=スウェーデン合作映画 監督ザイダ・バリルート
ネタバレあり

「ムーミン」で有名なフィンランドの女流画家トーヴェ・ヤンソン(1914-2001)の伝記映画。

一流彫刻家の娘であるトーヴェ(アルマ・ポウスティ)は、なかなか奔放で父親が求めるようには画業に打ち込まず、戦時中の苦闘のうちに自然に生まれた、後にムーミン(正確にはムーミントロール)として知られるようになる漫画が一部で好評を得る。社会主義系の政治家アトス・ヴィルタネン(シャンティ・ローニー)もこれを気に入ってその新聞(機関紙)に連載され、二人も昵懇の間柄になる。
 終戦直後、上流階級の女性演劇演出家ヴィヴィカ・バンドラー(クリスタ・コソネン)と知り合い、初めて女性を恋人とする。パリで再会した後、泥沼に入るのを恐れてか、彼女の許を去ってヴィルタネンと結婚するが、不幸感に苛まれ、1952年英国イブニング・ニュースと契約してムーミンに本腰を入れる。
 3年後パーティーで女性デザイナーのトゥーリッキ・ピエティラ(ヨハンナ・ハールッティ)と知り合い、信頼を置くパートナーに迎え、画家として新たな旅立ちを決意する。Wikiによれば、これは1960年の出来事である。

現在、ドラマに分類される欧米映画は殆ど実話ものか伝記なので、トーヴェ・ヤンソンがこの現在に取り上げられるのは怪しむに足りないのだが、少なからぬ伝記映画がLGBTを必要以上に導入している印象があるのは些か気になる。
 1970年代以降同性愛者(男性が多い)を描いた作品は、その指向を政治的に云々するというよりは、純粋に恋愛映画として作られていたような気がする。そのピークが「ブロークバック・マウンテン」(2005年)である。男性同性愛者の絡みを苦手とする僕も、“これは見事な純愛映画だ”と鑑賞年の1位にした。
 それに比べ、近年この手の作品は多く扱いが悪く、LGBTのプロバガンダ映画を超えるものがなかなか見当たらない。本作では、彼女の両性愛者(映画の作り方のせいか、どちらか言えば同性愛者に見える)ぶりが、彼女の特徴と言えるのであろう、自由を求める生き方の中で突出してい過ぎるのである。

お話の繋ぎもぎくしゃくしていて、残念ながら良い伝記映画とは言いにくい。同じく北欧の児童文学者アストリッド・リンドグレーンの伝記映画「リンドグレーン」は見事と思ったが、どちらにも出てくる保守的な親(本作では父親)との確執に対する扱いが本作は定石的に過ぎる。

実は「ムーミン」はTVアニメの主題歌しか知らない。TVアニメの主題歌を集めたレコードに入っていたのだ。従って、ムーミンのイメージで余り良い評価をしていないのではありません。

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