映画評「思い出の瞳」

☆☆★(5点/10点満点中)
1948年フランス映画 監督ジャン・ドラノワ
ネタバレあり

ヌーヴェルヴァーグ以前のフランス映画は濃厚な香りがする。ジャン・ドラノワのメロドラマである本作も主演俳優二人のおかげで香りは良いものの、出来栄えが伴わない。この程度の出来でも初見であれば嬉しいが、Imdbに行ったら採点済みだった。

スチュワーデスのミシェル・モルガンが、ヒコーキ野郎ジャン・マレーを機内に発見する。3年前の演劇生時代に別れたきりの元恋人である。
 やがて彼女の勤める航空会社のパイロットになった彼が今度は彼女に強い気持ちを覚え、実は彼女に思いを寄せている彼の上司ジャン・シュヴァリエは争わない態度を取るが、3年前に自殺未遂をした彼女の心は燃えず、上司と結婚する道を選ぶ。
 が、ダカールへの飛行の最中、飛行機がエンジン・トラブルを起こし、機長のマレーが最善を尽くす様子にミシェルの気持ちは再び傾く。

終盤の数分間、航空パニック映画の先鞭を付けたとも言えるサスペンスフルな場面が見られるが、終戦直後ではさすがにパニック場面の狭間に恋愛模様を挟むというアイデアはなかったようで、パニック場面は二人のロマンスの行方を左右する要素に留まっている。尤も、パニックの狭間に人生模様を見せるという趣向はサスペンスを停滞させるだけで全く感心できないので、そうなっていたらば映画的に良くなったということでもない。

とにかく、3年前と現在とで立場を入れ替えた男女のロマンスの行方を狙いとしているが、二人の恋愛心理が極めて表面的にしか描出されない為、冗長に感じられる場面が多い。

題名からカーペンターズがカバーしたボビー・ヴィー「燃ゆる瞳」The Night Has a Thousand Eyes を思い出した。YouTubeで久々に聴いてみよう。

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