映画評「パーフェクト・ケア」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2020年アメリカ=イギリス合作映画 監督J・ブレイクスン
ネタバレあり

一種の職業紹介映画としても、映画鑑賞論的なアングルからでも、なかなか楽しめる映画である。

ヒロインのロザムンド・パイクは法廷後見人として辣腕をふるっている。と言えば聞こえは良いが、孤独な金持ちを狙って強引に法廷後見人となり、その資産の何割かを合法的にネコババしてしまうのである。彼女に直接的に協力するのは情報提供をする女医だが、悪意はないにしても家庭裁判所の裁判官も半ば騙される形で彼女に協力することになる。
 公私に渡る女性パートナー、エイサ・ゴンザレスと組んで今日も、獲物として見出した縁故のない老女ダイアン・ウィーストの家にやって来て、警察を周囲に配備させて、強引に介護施設に入れてしまう。貸金庫から相当の金額となるダイヤモンドをも発見して有頂天になる。
 ところが、その彼女は死んだことになっているロシアン・マフィアのボス、ピーター・ディンクレイジの母親。彼は、彼女たちの所業に怒り狂い、最初は弁護士を使って合法的に処理しようとするが、ロザムンドが全く妥協しないので、女医を殺して怖がらせた後彼女を誘拐する。それでも折れないので遂には自動車事故で死んだことを偽装する。

アメリカの実際の行政を背景にした正統派スリラーと言っても良い本作は、映画サイトではコメディーとなっている。まあブラック・コメディーということだろうが、マフィア・サイドの間抜けぶりがコメディーとされる所以ではないかと思う。あるいは水没した車から見事脱出したヒロインの店頭での振舞いもコミカルではある。

威風堂々としているが危機管理が全くなっていないディンクレイジはロザムンドたちに誘拐されて薬を投与されて山道に打っちゃられ、(彼女の計算通り)救出されるも暫く身動きが取れない状態に追い込まれる。彼女の高額要求に対し、彼は企業提携を提案し、ロザムンドは業界一の成功者となる。

演劇・映画を鑑賞するに当たり、一般的に観客は主人公が悪党であっても、特に危難を迎えた時に主人公を半ば応援(=ヒヤヒヤ)しながら見るものである。本作ではマフィアが彼女の周囲に出没する辺りからそうした心境に陥る人が多いであろう(僕は彼女の余りの悪党ぶりにどうやられるか楽しみだったのだが)。しかるに、マフィア側の描写が多くなり、彼の母親への想いが解ると、どちらを応援して良いか解らなくなるのではないか? 
 そこが本作の弱いところかもしれないが、しかるにここまで利己的に弱者を利用する悪党であるから、一般的な映画鑑賞態度が余り意味をなさない可能性を否定できない。

僕は、ハリウッド的と否定的に判断する人もいる幕切れが気に入った。勧善懲悪的に見えるが、作者が見せたかったのは “油断大敵” という皮肉な教訓である。油断もぬかりもなく別種の悪と手を結んで天下を取ったと思った時に思わぬ弱者たる伏兵が現れる。しかも忘れた頃にやって来る。これが良い。本当の敵は、ずる賢い巨悪ではなく、窮鼠であるという皮肉。
 従って、ディンクレイジが “伏兵” を遣わしたのかという疑問はドラマツルギー的にナンセンス。行動原理的にも、彼女を失うことは今や彼にとってもマイナスだから、あり得ない。

兄はまだ若いのに熱中症から施設暮らしになってしまった。血液の病気も持っているからコロナはかなり怖い。現在は毎週輸血しているが、昨年8月以降僕が会ったのは本年5月の一度きり。ところで、コロナ第7波は今週ピークアウトするだろう、と読んでいる。一種の集団感染に近づいて来た。いずれにしても旧型インフルエンザのように有効な安い薬が2種類くらい出ていない現状では、一般的な五類感染症にしてはいけない。二類でも五類でもない中間的な措置(金銭面を二類扱いにした五類)が実際的。

この記事へのコメント

2022年08月06日 15:31
<どちらを応援して良いか解らなくなる

この感覚を大いに楽しみました。
他の映画ではなかなかない感覚です!




<“油断大敵” という皮肉な教訓

まさにそういうラストでしたね!
オカピー
2022年08月06日 21:56
onscreenさん、こんにちは。

>この感覚を大いに楽しみました。
>他の映画ではなかなかない感覚です!

映画鑑賞論的に実に興味を覚えた部分で、一般的な態度では測れないところが新鮮でしたね。

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