映画評「略奪者たち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2020年イタリア映画 監督ピエトロ・カステリート
ネタバレあり

二日続けて正式には日本で劇場公開されていないイタリア映画。昨日の作品と違ってぐっとお話があるどころか、あり過ぎるくらいかもしれない。

高齢女性が息子の友達を騙る男に事実上時計を高額で買わされてしまう。この老婦人が交通事故に遭う。それを助けたのが外科医のマッシモ・ポポリツィオである。老婦人の息子で銃器販売のジョルジョ・モンタニーニが彼に感謝をし、銃に絡んで特別に沙汰することができると言う。
 それを聞いていた医師の息子でニーチェ狂いのピエトロ・カステリート(本作の脚本・監督でござる)が、ニーチェのけしからぬ銅像を壊す為に、彼から銃ではなく爆弾をこっそり買うが、爆発に失敗して自分が負傷する。
 暗黒街の大立者たるモンタニーニの叔父クラウディオ・カミッリは、この件から自分の身に危険が及ぶのを怖れて、若者を殺害させようとさせる。モンタニーニはその現場で彼が母の件でお世話になった医師の息子と知って犯行に及ばず、逆に自分を縛って来た叔父をまだ少年の息子に(過失を装って)殺させる。
 医師の妻である映画監督マヌエラ・マンドラッキアは、新作の上映後、一時期彼の愛人であったアニタ・カプリオーリから新しい恋人を紹介される。その恋人は開巻直後に老婦人を騙した男である。

開巻してリレー形式に次々と人物を繋げていく見せ方は、本編の内容にも応用される形で、この最後になって見事に円環する。
 この円環する形が着想の最初にあったのではないかと思わせ、匠気を感じさせる手法は良いとも悪いとも断じかねる一方、序盤の幾つかの挿話はバラバラで、意図的ではあっても要領を得ない感じが強い。ここで退屈すると眠くなってお話が解らなくなるわけで、結果的に作者の損になる。もう少しダイレクトに解りやすくお話を繋いでいったほうが良かったのではないかと思う。策士策に溺れるといったところだろう。

今回のヴェネツィア映画祭特集は、どうもいま一つでした。

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