映画評「五匹の紳士」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・五社英雄
ネタバレあり
五社英雄シリーズ第2弾。
初期の彼の良い点は上映時間が短いところだ。本作も90分で、「グロリア」(1980年)「レオン」(1994年)に先んじるような子連れサスペンスになっていくアイデアの面白さもあって、退屈する間もなく終わる。
父娘を撥ね殺す交通事故で全てを棒に振った一流企業の会社員・仲代達矢が、刑務所で知り合った元証券マン平幹二朗に信用されて、麻薬ディーラーの大金を横取りした元仲間の三人を殺す役目を負わされ、彼の指示する女のところへ赴くように言われる。
しかし、彼が手を下すまでもなく、麻薬関係者の天本英世と辰巳八郎が、その三人即ち井川比佐志、田中邦衛、中谷一郎を殺していく。
井川が殺された為に残された9歳くらいの娘・上原ゆかりを連れて歩く羽目になった仲代は、出所した卑怯な平と、大金の隠し場所に赴き、独り占めしようとする。誘拐した娘と交換する天本の要求に応える為である。平は高圧線に触れて死ぬが、その前に争奪の際に仲代も撃たれる。引き渡す直前に天本が交通事故で拘束される。
重傷の仲代はかくして無償で取り戻した娘を、大金ともども、(彼女に自分の娘を見出した)事故被害者遺族の桑野みゆきに送ると、街角で息絶える。
昨日の侍たちに似て、四人の男たちの人生は彼ら自身にとって不条理なところがある。社会が不条理であると思わせる程ではないにしても、不運な人生に切なくなるところが多い。
僕に言わせれば、四人の紳士と一匹の紳士で、一匹の紳士とは弱みを握って四人を巻き込んだ平幹二朗にほかならない。獣とは正に彼のことである。
作劇的に面白いのは、殺される男が別の仲間への言伝を仲代に頼むリレー形式になっているところ。言伝がなくても仲代はその男の許へ行くわけだが、心理の交錯にちょっとしたニュアンスを与えて一定の効果を出しているように思う。
一番収穫だったのは、上原ゆかりとの再会だ。多分この映画を観なければ、永遠に僕は、子供時代にお馴染みだった上原ゆかりの名前を思い出すこともなかっただろう。
「三匹の侍」に引きずられたタイトルでござる。
1966年日本映画 監督・五社英雄
ネタバレあり
五社英雄シリーズ第2弾。
初期の彼の良い点は上映時間が短いところだ。本作も90分で、「グロリア」(1980年)「レオン」(1994年)に先んじるような子連れサスペンスになっていくアイデアの面白さもあって、退屈する間もなく終わる。
父娘を撥ね殺す交通事故で全てを棒に振った一流企業の会社員・仲代達矢が、刑務所で知り合った元証券マン平幹二朗に信用されて、麻薬ディーラーの大金を横取りした元仲間の三人を殺す役目を負わされ、彼の指示する女のところへ赴くように言われる。
しかし、彼が手を下すまでもなく、麻薬関係者の天本英世と辰巳八郎が、その三人即ち井川比佐志、田中邦衛、中谷一郎を殺していく。
井川が殺された為に残された9歳くらいの娘・上原ゆかりを連れて歩く羽目になった仲代は、出所した卑怯な平と、大金の隠し場所に赴き、独り占めしようとする。誘拐した娘と交換する天本の要求に応える為である。平は高圧線に触れて死ぬが、その前に争奪の際に仲代も撃たれる。引き渡す直前に天本が交通事故で拘束される。
重傷の仲代はかくして無償で取り戻した娘を、大金ともども、(彼女に自分の娘を見出した)事故被害者遺族の桑野みゆきに送ると、街角で息絶える。
昨日の侍たちに似て、四人の男たちの人生は彼ら自身にとって不条理なところがある。社会が不条理であると思わせる程ではないにしても、不運な人生に切なくなるところが多い。
僕に言わせれば、四人の紳士と一匹の紳士で、一匹の紳士とは弱みを握って四人を巻き込んだ平幹二朗にほかならない。獣とは正に彼のことである。
作劇的に面白いのは、殺される男が別の仲間への言伝を仲代に頼むリレー形式になっているところ。言伝がなくても仲代はその男の許へ行くわけだが、心理の交錯にちょっとしたニュアンスを与えて一定の効果を出しているように思う。
一番収穫だったのは、上原ゆかりとの再会だ。多分この映画を観なければ、永遠に僕は、子供時代にお馴染みだった上原ゆかりの名前を思い出すこともなかっただろう。
「三匹の侍」に引きずられたタイトルでござる。
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