映画評「ジャニス・ジョプリン」

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督デーヴィッド・ホーン
ネタバレあり

ジャニス・ジョプリンが自分を語るという形式で進められるブロードウェイ・ミュージカルをそっくりカメラに収めたTV作品。

とりあえず映画評とはしたものの、本稿は映画評ではないし、ステージ評でもない。敢えて言えばその中間という感じでしょうか。

参りました。ジャニスを演ずるメアリー・ブリジット・デーヴィスがジャニスそっくりなのである。声、歌い方、喋り方、挙措のどれをとっても文句なしに似ている。太めのジャニスよりさらに一回りくらい大きなおデブちゃんですが、元々ジャニスの歌を聞くだけで泣けてくる僕が、その再現性の高さという別の理由も加わって、泣けて来た。

時々カメラに入って来る劇場の観客も、特にご年配の方は、ジャニス・ジョプリンのライブを聴いている錯覚に陥ったのではあるまいか? ステージを観ているのかライブを聴いているのか解らなくなるような印象により感動を増幅させていった人が多いような気がする。少なくとも僕はそうなのだ。

死の1週間前のジャニスが語り進めるライブという体裁で進むのだが、その過程で彼女に影響を与えたベッシー・スミス、オデッタ、ニーナ・シモン、アレサ・フランクリン、エタ・ジェームズが現れて歌う。特に、ベッシー・スミスについては、普通の映画ならレコードで済まされるであろうところを、ご本人が登場して歌うという幻想的なムードを感じさせて素晴らしかった。

既に全員が故人だが、ジャニスはほぼ同世代のアレサより48年も早く亡くなったと思うと、今でもぐっと来る。

ブルースは欠如を歌う、という主旨の発言も印象深い。

有名な「ジャニスの祈り」はかからない。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック