映画評「GAGARINE/ガガーリン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2020年フランス映画 監督ファニー・リアタール、ジェレミー・トルイ
ネタバレあり

5,6年前にロシア製の伝記映画を観たばかりなのに、またユーリ・ガガーリンかと思ったが、伝記映画ではなく、彼の名前に由来するフランスのガガーリン団地なる建物をめぐるお話である。
 余分な説明が一切ないので解りにくいが、ガガーリンの宇宙飛行の直後に、フランス共産党が彼を招くまでして作ったのがガガーリン団地らしい。

この団地が建前は老朽化の為、実際にはパリ五輪の為に解体されることになり、住民たちは団地を去って行く。母親の出奔の後知り合いの小母さんに育てられてきた16歳の少年ユーリ(アルセニ・バティリ)は、結局小母さんの事情でひとりぼっちになり、こっそりそのまま団地に留まり、中を宇宙船のように変えていく。
 フサーム(ジャミル・マクレイヴン)という友人もいるが、そんな彼に興味を持つのがロマの美少女ディアナ(リナ・クードリ)。随時会っては恋心を募らせていくが、彼女のキャンプも(恐らくこれまた五輪絡みで)排除されてしまう。
 やがて団地解体の当日、ユーリが屋上にいるのを知らず、爆破による解体が実行されようとしたその瞬間、爆破が起こる代わりに団地のフロア全体からライトが点滅する。モールス信号を読めるディアナはSOSと読み、人々が団地の中に入って行く。

人々の団地への、あたかも人間に対するような思いを、友情と愛情を軸とした青春模様に透かして見せた内容と言うべし。若い人はその見た目通りに青春模様を楽しめば良いと思う。

上述したように、団地の解体騒動以前については解説等を読まないと解らないことが多く、幕切れの主観的なショットの扱いも作者の一人合点的なところがあるが、マイノリティを巡る情況をそこはかとなく示すだけで社会派映画的に肩肘張って作っていないのが爽やか。ポリ・コレの影響で力み返った映画を大量に見せられるのに疲れたおじさんには有難い。

GAGARINE の最後のEは何なのか? フランス語への変換に際して生まれたものとは解るが・・・

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