映画評「ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド」

☆☆★(5点/10点満点中)
2021年アメリカ映画 監督スティーヴン・カヤック
ネタバレあり

1985年くらいから97年くらいまで、仕事が忙しく(残業が月50~100時間)、かつFM放送による良質な音源が乏しくなってきた為、僕の洋楽鑑賞史から抜け落ちているアーティストが多い。この間(かん)の洋楽は今盛んに追いかけているところで、ザ・スミスも昨年全オリジナル・アルバム(4枚)を YouTube からダウンロードしてCD化し、昨年と今年二回に分けてかなり集中的に聴いた。

何故こういう枕から始めたかと言えば、本作がザ・スミス(単にスミスでも良いのだが、70年代初めに文字通りスミスという短期間の活動で終わった一発屋バンドがあり、区別する為。シュレルズの曲をカバーしたビートルズの「ベイビー・イッツ・ユー」のカバーで有名。シュレルズではなく、ビートルズのカバー・バージョンをさらにカバーした感じ)の大ファン二人の動向を中心に、彼らの解散したのを知った直後の若者たちの一日を描いた青春映画だからである。

色々と若者たちが出てくるが、作品が描きたかったのは単に次のことである。

1987年のアメリカ。英国のバンド、ザ・スミスの大ファンであるレコード店万引き黒人美人ヘレナ・ハワードが、その事実を知って悲嘆に暮れ、しかも周囲が無関心なのにがっかり、レコード店へ行って仲の良い店員エラー・コルトレーンにその思いを伝える。
 彼女の思いを知った彼は、ヘビメタ専門のラジオ局へ銃を持って押しかけ、ザ・スミスの曲を次々とかけさせる。事が終わって彼は逮捕されるが、今では彼の好きな音楽を理解したDJの配慮があって翌朝には釈放される。ヘレナはコルトレーンを車に乗せてどこかへ連れていく。

彼が何故押しかけたのか言えば、バンドへの思いもあるが、恐らく、実は彼らをこよなく愛するヘレナを思っているからである。映画はこれだけを描きたかったのだ。

群像劇的に、マドンナに傾倒しているギリシャ系美人エレナ・カンプーリスや、化粧好きでゲイと間違えられる男性たちも描かれ賑やかすが、それは時代ムードを醸成する為の手段である。マドンナの曲名などが幾つか台詞になったり、当時の映画が話題に出てくるのと同じ。

作品は4章に分かれていて、ザ・スミスの曲の歌詞から章名がつけられている。
 映画としては、格闘場面でアクション映画よろしくカメラが揺れるなど、余り褒められないが、ロック音楽とくにザ・スミスがお好きな方は観るべし。

本作タイトルになった曲は知らない、と思ったら、僕がCD化した彼らの全スタジオ・アルバムには入っていないシングル曲なのであった。アルバムとシングルを区別して録音・発表する傾向のあるアーティストに関しては、シングルをカバーする為にベストをチェックする必要を大いに感じる今日この頃であります。

この記事へのコメント

十瑠
2022年09月26日 10:30
ウェブリブログ無くなっちゃうんですか。
移行作業ご苦労様です。
一新した「オカピーの部屋」も楽しみですね。
ぼちぼちやって下さい。

>70年代初めに文字通りスミスという短期間の活動で終わった一発屋バンドがあり

当方、そのスミスの「♪baby it's you」にノックアウトされたくちです。というか、リードボーカルのゲイル・マコーミックの可愛い容姿と迫力あるボーカルのギャップにぞっこんでした。解散後に出したソロアルバムも買いましたもんね。
ウィキで調べたら2015年に67歳で亡くなってました(涙)
オカピー
2022年09月26日 19:33
十瑠さん、こんにちは。

>ウェブリブログ無くなっちゃうんですか。

そうなんですよ。

>一新した「オカピーの部屋」も楽しみですね。
>ぼちぼちやって下さい。

ウェブリとseesaaは提携しているというか、同じフォーマットを使っているので、大分イージーに移行できそうなんです。とは言え、最初で最後になりそうな作業、失敗が怖いです。移行時間は不明(その間は何をやっていても自由。数日かかる例もあるらしいが、当方記事数が多いといえども、容量は大したことないので、数時間?)。
 体裁もそのまま移行するのかも知れず、もしかしたら似たようなブログになるかもしれません(この辺は全く不明)。
 コメントも移行するので、一応27日に区切りました。移行以降(洒落?)になされたコメントは新ブログには反映されませんので。

>当方、そのスミスの「♪baby it's you」にノックアウトされたくちです。

ほーっ、そうでしたか!
結構売れましたものねえ。70年頃のヒット曲を振り返ると、割合よく出てくる曲。

>ゲイル・マコーミック。
>ウィキで調べたら2015年に67歳で亡くなってました(涙)

現在としては、ちょっと早いですねTT

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