映画評「アイダよ、何処へ?」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2020年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=オーストリア=ルーマニア=オランダ=ドイツ=ポーランド=フランス=トルコ=ノルウェー合作映画
監督ヤスミラ・シュバニッチ
ネタバレあり
この作品が作られ、公開された時、まだウクライナ戦争は起きていなかったわけだが、本作が扱ったユーゴスラヴィア解体後のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦争は状況的にかなり似ている。どちらも隣人同士による戦争であるということである。
本作の隣人というのは、ウクライナ戦争以上に、昨日まで文字通り隣人として交際していた人々が、民族の違いにより対立状態に陥ったわけで、その意味で想像しがたいものがある。
1995年7月、オランダ軍から成る国連平和維持軍が設営した安全地帯に、セルビア軍から逃避しようとムスリム人が殺到する。
小学校のベテラン女性教師アイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)が国連軍と逃避して来た市民やセルビア軍の通訳として活躍しているが、そこへセルビア軍が武器を携えて入構してきた為、彼女は、夫と二人の息子を匿い、さらに逃そうと構内を駆けずり回り、懸命に国連軍と交渉を続ける。
しかし、結局三人は安全に移送するという名目で乗せられたバスで辿り着いた先で他の人々と共に銃殺される。
というお話は単純ながら、戦争中から10年間くらい頻繁に作られ、その後もコンスタントに扱われるボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦争に関する作品群の中で、トップクラスに圧倒される作品と言うべし。
なりふり構わず東奔西走するヒロインの姿に胸が打たれる。こんな時に一般的な道徳を持ち出しても意味がなく、懸命に家族を守ろうとする彼女の姿こそ最も人間的であると言わなければならない。
不勉強にも僕は知らなかったが、8000人近くが惨殺された“スレブレニツァの虐殺”と言われる事件があり、それをモチーフにしている。
映画はその残虐ではなくヒロインの懸命な姿に焦点を絞ったことで、極めて純度の高い人間劇になったと思う。
最後の場面は、戦前なのか戦後なのか判然としないが、いずれにしても、三つの民族が暮らす土地である同地の隣人性を象徴するラスト・シーンとなっている。
ウクライナ戦争が早く終戦することを祈る!
2020年ボスニア・ヘルツェゴヴィナ=オーストリア=ルーマニア=オランダ=ドイツ=ポーランド=フランス=トルコ=ノルウェー合作映画
監督ヤスミラ・シュバニッチ
ネタバレあり
この作品が作られ、公開された時、まだウクライナ戦争は起きていなかったわけだが、本作が扱ったユーゴスラヴィア解体後のボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦争は状況的にかなり似ている。どちらも隣人同士による戦争であるということである。
本作の隣人というのは、ウクライナ戦争以上に、昨日まで文字通り隣人として交際していた人々が、民族の違いにより対立状態に陥ったわけで、その意味で想像しがたいものがある。
1995年7月、オランダ軍から成る国連平和維持軍が設営した安全地帯に、セルビア軍から逃避しようとムスリム人が殺到する。
小学校のベテラン女性教師アイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)が国連軍と逃避して来た市民やセルビア軍の通訳として活躍しているが、そこへセルビア軍が武器を携えて入構してきた為、彼女は、夫と二人の息子を匿い、さらに逃そうと構内を駆けずり回り、懸命に国連軍と交渉を続ける。
しかし、結局三人は安全に移送するという名目で乗せられたバスで辿り着いた先で他の人々と共に銃殺される。
というお話は単純ながら、戦争中から10年間くらい頻繁に作られ、その後もコンスタントに扱われるボスニア・ヘルツェゴヴィナ戦争に関する作品群の中で、トップクラスに圧倒される作品と言うべし。
なりふり構わず東奔西走するヒロインの姿に胸が打たれる。こんな時に一般的な道徳を持ち出しても意味がなく、懸命に家族を守ろうとする彼女の姿こそ最も人間的であると言わなければならない。
不勉強にも僕は知らなかったが、8000人近くが惨殺された“スレブレニツァの虐殺”と言われる事件があり、それをモチーフにしている。
映画はその残虐ではなくヒロインの懸命な姿に焦点を絞ったことで、極めて純度の高い人間劇になったと思う。
最後の場面は、戦前なのか戦後なのか判然としないが、いずれにしても、三つの民族が暮らす土地である同地の隣人性を象徴するラスト・シーンとなっている。
ウクライナ戦争が早く終戦することを祈る!
この記事へのコメント
コメントをいただき、さっきこちらへの引っ越しを始めていますが、かなり時間がかかりそうですね。前にはてなブログにデータ移行をしたときは1週間くらいかかりました。
のんびりとやっていきます!
ではまた!
>引越し
seesaaへの引越しなら、案外簡単ですよ。
事前にseesaaのブログをテキトーに作っておき、webryの編集ページの指示に従えば、後はwebryとseesaaの提携関係により自動的にやってくれます。フォーマットもほぼウェブリのままで行けます。
7100件くらい記事がありましたが、画像が少ないせいもあって、30分くらいで移行が完了しました。
当方は画像がかなり多く、そのために容量プレミアムオプションがあったため、2時間ほどかかりましたが、はてなに比べると十倍以上の速さで完了しています。ウェブリの最後のグッドサービスだったかもwww
ではまた!
移行作業、ご苦労様でした。
細かい点は調整する必要があるでしょうが、まずは一安心ですね!