映画評「ラストナイト・イン・ソーホー」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2021年イギリス=アメリカ=中国合作映画 監督エドガー・ライト
ネタバレあり
地方のファッション・デザイナー志願の美少女トーマシン・マッケンジーが、ロンドンの服飾学園に合格して上京する。ルームメイトが意地悪なので、寮を出て厳しい大家ダイアナ・リッグが監視する部屋を間借りし、クラブへ遊びに出てみたところ、感受性が強くてよく亡母を感じるように、60年代の同世代美人の歌手志願アニャ・テイラー=ジョイと感応し始める。
この映画が良いのはこの辺りまでで、クラブでアニャとトーマシンが交互に後に女衒の正体が明らかになるマット・スミス(役名ジャック)と踊る場面が画面的にハイライト。ジャックは後段の展開を暗示する名前である。
この後から映画はエドガー・ライトらしく(?)次第にホラーに傾いていき、トーマシンは、アニャがジャックに殺される場面を幻視したり、複数の亡霊のようなものに付きまとわれる気分に苛まれる。
きっと半世紀前にアニャ(役名アレクサンドラ、サンディー)は女衒に殺されたにちがいないと、探偵の真似事をして、彼女の周囲をうろちょろし始めた銀髪の紳士(テレンス・スタンプ)を疑うが、彼が元警官と判明した後、彼女はロンドンを後にすることを決意、その話をする為に大家の部屋を訪れる。
ここが実はホラー映画としてのクライマックスであるが、詳細は言わぬが花と思われるので伏せておく。
サイコロジカル・ホラーとして夢を見る形で見せる場面が多いのは型に落ち、かつ、くどい感じでつまらず。ヒロインがアニャを感応するのも序盤は素晴らしいものの、ホラーになってからは手詰まりで、発展的な面白い扱いはない。
配役の美人二人が魅惑的で得点源となっているとともに、先日亡くなったダイアナ・リッグ(「女王陛下の007」ヒロイン)、テレンス・スタンプ、そして祖母役のリタ・トゥシンハムの60年代トリオが懐かしい。まあスタンプはよく見るので懐かしいという感じでもないが、近年のダイアナとリタは出演していても気づかないことが多く、実際にも懐かしいという印象が強い。
何と言っても御機嫌なのは60年代のポップスでござる。ビートルズは(権利料の問題等で)当然のように出て来ないが、その代わりポール・マッカートニーが提供した弟分ピーター&ゴードンの「愛なき世界」A World Without Love もあるし、ビートルズの妹分シラ・ブラックの曲が三曲かかる。どうぜならポールの書いた「ラブ・オブ・ザ・ラブド」Love of the Loved が聞きたかった。シラはかなり売れた歌手だが、“この曲はビートルズが歌えばもっと売れたんでしょうね” と嘆息した(と誰かが言うのを聞いた)。
その他、キンクス絡みで2曲、サーチャーズ、ゼム、ペトゥラ・クラーク「恋のダウンタウン」Downtown など。本作で使われたオールディーズは大体知っているが、皮肉にもタイトルに使われたデイヴ・ディー・ドージー・ビーキー・ミック・アンド・ティックの曲は知らない。
僕は1960年代の小学生の時から、ラジオで洋楽を聞いていたので、年齢の割にこの時代の洋楽を同時代的によく知っている。強く記憶に残っているのは、ビートルズ「ヘイ・ジュード」、ドアーズ「ハートに火をつけて」、ジェファーソン・エアプレイン「あなただけを」だ。
2021年イギリス=アメリカ=中国合作映画 監督エドガー・ライト
ネタバレあり
地方のファッション・デザイナー志願の美少女トーマシン・マッケンジーが、ロンドンの服飾学園に合格して上京する。ルームメイトが意地悪なので、寮を出て厳しい大家ダイアナ・リッグが監視する部屋を間借りし、クラブへ遊びに出てみたところ、感受性が強くてよく亡母を感じるように、60年代の同世代美人の歌手志願アニャ・テイラー=ジョイと感応し始める。
この映画が良いのはこの辺りまでで、クラブでアニャとトーマシンが交互に後に女衒の正体が明らかになるマット・スミス(役名ジャック)と踊る場面が画面的にハイライト。ジャックは後段の展開を暗示する名前である。
この後から映画はエドガー・ライトらしく(?)次第にホラーに傾いていき、トーマシンは、アニャがジャックに殺される場面を幻視したり、複数の亡霊のようなものに付きまとわれる気分に苛まれる。
きっと半世紀前にアニャ(役名アレクサンドラ、サンディー)は女衒に殺されたにちがいないと、探偵の真似事をして、彼女の周囲をうろちょろし始めた銀髪の紳士(テレンス・スタンプ)を疑うが、彼が元警官と判明した後、彼女はロンドンを後にすることを決意、その話をする為に大家の部屋を訪れる。
ここが実はホラー映画としてのクライマックスであるが、詳細は言わぬが花と思われるので伏せておく。
サイコロジカル・ホラーとして夢を見る形で見せる場面が多いのは型に落ち、かつ、くどい感じでつまらず。ヒロインがアニャを感応するのも序盤は素晴らしいものの、ホラーになってからは手詰まりで、発展的な面白い扱いはない。
配役の美人二人が魅惑的で得点源となっているとともに、先日亡くなったダイアナ・リッグ(「女王陛下の007」ヒロイン)、テレンス・スタンプ、そして祖母役のリタ・トゥシンハムの60年代トリオが懐かしい。まあスタンプはよく見るので懐かしいという感じでもないが、近年のダイアナとリタは出演していても気づかないことが多く、実際にも懐かしいという印象が強い。
何と言っても御機嫌なのは60年代のポップスでござる。ビートルズは(権利料の問題等で)当然のように出て来ないが、その代わりポール・マッカートニーが提供した弟分ピーター&ゴードンの「愛なき世界」A World Without Love もあるし、ビートルズの妹分シラ・ブラックの曲が三曲かかる。どうぜならポールの書いた「ラブ・オブ・ザ・ラブド」Love of the Loved が聞きたかった。シラはかなり売れた歌手だが、“この曲はビートルズが歌えばもっと売れたんでしょうね” と嘆息した(と誰かが言うのを聞いた)。
その他、キンクス絡みで2曲、サーチャーズ、ゼム、ペトゥラ・クラーク「恋のダウンタウン」Downtown など。本作で使われたオールディーズは大体知っているが、皮肉にもタイトルに使われたデイヴ・ディー・ドージー・ビーキー・ミック・アンド・ティックの曲は知らない。
僕は1960年代の小学生の時から、ラジオで洋楽を聞いていたので、年齢の割にこの時代の洋楽を同時代的によく知っている。強く記憶に残っているのは、ビートルズ「ヘイ・ジュード」、ドアーズ「ハートに火をつけて」、ジェファーソン・エアプレイン「あなただけを」だ。
この記事へのコメント
だらだらしたかんじになってた。
ちょっと思い出すのは「エルム街の悪夢」でしたか、あれも最初女の子が夢の中で怖い目に遭って、そして目が覚めると夢の中から帽子を取ってきてた、あそこはおもしろかった、あの夢の中から帽子取ってきたところだけはよく覚えています。映画自体はあのころはやったスプラッタでしたが。
>だらだらしたかんじになってた。
この辺りの感想は全く同じ。
>ちょっと思い出すのは「エルム街の悪夢」
「13日の金曜日」のような直球すぎて面白味を感じなかったのに対し、スプラッター系では楽しめたシリーズでしたね。仰るように夢の中に入って行くという発想が新鮮でした。
それなりのサスペンスは面白かったし、女の子どちらかが好きだったらプラス効果になりますね!
曲がもっとわかっていたら、もっと楽しかったと思います。
>ブロガーさんの選ぶ年間ベスト
後半に手詰まり感があり、僕はそこまでは買えなかったかなあ。
>女の子どちらかが好きだったらプラス
僕は、宅麻伸ならぬ、トーマシンが好みです^^
>曲がもっとわかっていたら、もっと楽しかったと思います。
そうなんです。
昔の音楽を知っているかどうか、この手の作品を見る時は結構重要です。