映画評「夫は偽者」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1951年アメリカ映画 監督ウォルター・ラング
ネタバレあり
正確には「南仏夜話 夫は偽者」と言うのだが、 “南仏夜話” の部分は所謂つのがき(角書)なので、加えても、 “な行” にはしないのが常識。因みに、夫と書いてハズと読むはず(笑)。
結構お気に入りなので、再鑑賞することにした。二度見る気にはならない作品が多いウォルター・ラングの作品では珍しい。
南仏はリビエラで活躍しているヴォードヴィル芸人ジャック・マーティン(ダニー・ケイ)は、偉業を成したばかりの飛行家アンリ・デュラン(ケイ二役)を見てびっくり、自分にそっくりなのである。早速彼に扮してショーをやると、本人夫婦も楽しんだ模様。
実はデュラン氏は飛行機作りの資金繰りに苦しみ、談判の為にロンドンへ向かう。その間に開かれることになっていたレセプションに彼と商談をしに実業家ペリトン(ジャン・ミュラー)が訪れるのに困った仲間二人(マルセル・ダリオ、アンリ・ルトンダル)が、細君リリー(ジーン・ティアニー)にも内緒でそっくりのジャックを代打に起用、粗が出ないようにあれやこれや指示する。
しかし、そこそこ上手くやっているところへ、ジャックとコンビを組む女性芸人コレット(コリンヌ・カルヴェ)がやって来たり、ご本人がご帰還して、色々と混乱する。
というお話で、眼目は勿論ケイの二役なのであるが、具体的に、二組のカップルがこのそっくりぶりを利用して駆け引きをする面白さに尽きる。女性陣は勘が良く、リリーは疾うにお見通しであるし、コレットはジャックの特徴である近眼用眼鏡に気づいて罠に揶揄ったりする。
結果的にジャックの応対が奏功してペリトンから資金を得ることに成功するのだが、それとは無関係に、デュラン氏はこのそっくりぶりがお気に入りで、上手(うわて)のリリーを騙してやろうと、逆アリバイ作りをする。
結局は嘘や誤解は全て解けてハッピー・エンドになるわけだが、僕は、この酷似による嘘と誤解をコン・ゲームの域まで高めずにぐっと内輪にして、大騒ぎにしなかったところを逆に買っている。
ジャックとデュラン氏の性格の差を上手く利用してもっとハラハラドキドキする見せ方も出来たと思うが、腹八分目の感じが僕には好感触。
ダニー・ケイのヴォードヴィリアン的ショーも、デュラン氏に扮して世界の様相を反映させたものや人形に扮するものなど割合楽しいものが多い。
フランス映画をアメリカ映画がリメイクするというのは1980年代から始まったと思うのは早計で、実は昔からたくさんある。本作も「シュヴァリエの巴里っ子」(1935年)のリメイクらしい。
コリンヌ・カルヴェはフランスの女優だが、アメリカ映画が主な活躍の場だった珍しい女優。先般観た「欲望の砂漠」にも出ていました。
1951年アメリカ映画 監督ウォルター・ラング
ネタバレあり
正確には「南仏夜話 夫は偽者」と言うのだが、 “南仏夜話” の部分は所謂つのがき(角書)なので、加えても、 “な行” にはしないのが常識。因みに、夫と書いてハズと読むはず(笑)。
結構お気に入りなので、再鑑賞することにした。二度見る気にはならない作品が多いウォルター・ラングの作品では珍しい。
南仏はリビエラで活躍しているヴォードヴィル芸人ジャック・マーティン(ダニー・ケイ)は、偉業を成したばかりの飛行家アンリ・デュラン(ケイ二役)を見てびっくり、自分にそっくりなのである。早速彼に扮してショーをやると、本人夫婦も楽しんだ模様。
実はデュラン氏は飛行機作りの資金繰りに苦しみ、談判の為にロンドンへ向かう。その間に開かれることになっていたレセプションに彼と商談をしに実業家ペリトン(ジャン・ミュラー)が訪れるのに困った仲間二人(マルセル・ダリオ、アンリ・ルトンダル)が、細君リリー(ジーン・ティアニー)にも内緒でそっくりのジャックを代打に起用、粗が出ないようにあれやこれや指示する。
しかし、そこそこ上手くやっているところへ、ジャックとコンビを組む女性芸人コレット(コリンヌ・カルヴェ)がやって来たり、ご本人がご帰還して、色々と混乱する。
というお話で、眼目は勿論ケイの二役なのであるが、具体的に、二組のカップルがこのそっくりぶりを利用して駆け引きをする面白さに尽きる。女性陣は勘が良く、リリーは疾うにお見通しであるし、コレットはジャックの特徴である近眼用眼鏡に気づいて罠に揶揄ったりする。
結果的にジャックの応対が奏功してペリトンから資金を得ることに成功するのだが、それとは無関係に、デュラン氏はこのそっくりぶりがお気に入りで、上手(うわて)のリリーを騙してやろうと、逆アリバイ作りをする。
結局は嘘や誤解は全て解けてハッピー・エンドになるわけだが、僕は、この酷似による嘘と誤解をコン・ゲームの域まで高めずにぐっと内輪にして、大騒ぎにしなかったところを逆に買っている。
ジャックとデュラン氏の性格の差を上手く利用してもっとハラハラドキドキする見せ方も出来たと思うが、腹八分目の感じが僕には好感触。
ダニー・ケイのヴォードヴィリアン的ショーも、デュラン氏に扮して世界の様相を反映させたものや人形に扮するものなど割合楽しいものが多い。
フランス映画をアメリカ映画がリメイクするというのは1980年代から始まったと思うのは早計で、実は昔からたくさんある。本作も「シュヴァリエの巴里っ子」(1935年)のリメイクらしい。
コリンヌ・カルヴェはフランスの女優だが、アメリカ映画が主な活躍の場だった珍しい女優。先般観た「欲望の砂漠」にも出ていました。
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