映画評「ボレロ」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1934年アメリカ映画 監督ウェズリー・ラッグルズ
ネタバレあり
「暗黒街の顔役」(1931年)の為に暗黒街映画のイメージが強いジョージ・ラフトが、主演した芸道ものである。しかるに、彼のバイオグラフィーを紐解けば、ダンサーを仕事としていた時代があるので、何の意外性もないことになる。同時に暗黒街との関係が実際にもあったようで、この辺は大変面白い。
第一次大戦前、セオドア・ルーズベルトの帰還を祝って開催された素人演芸会でのタップを披露したラフトが、やがてプロとなってクラブでグロリア・シーと組んでワルツを踊り、パリに渡ってフランシス・ドレイクとタンゴ、ロンドンで最初はサリー・ランド、続いてキャロル・ロンバートでジャズ・ダンスとボレロを披露する。
キャロルを引き連れてパリに戻って自分のクラブを開くや否や第一次大戦が勃発、自らの宣伝になる見込んで、また、すぐに終戦になると思い、実はベルギー出身なので母国の為に出征するが、思わぬ長期戦でマネージャーをする兄ウィリアム・フローリーと共に苦労を重ねるうち、心臓と肺をやられてしまう。
終戦後の1919年、5年ぶりに踊りを披露する日、パートナーのサリーが泥酔状態で踊れず、祝福に訪れた今は既婚者のキャロルが夫レイ・ミランドに許可を貰ってパートナーを務めることにする。彼女を得て素晴らしいボレロを披露した彼は、しかし、無理しすぎて帰らぬ人となる。
楽屋で芸人が亡くなって幕切れという設定の作品は少なくなく、最近観た中でも「喝采」(1929年)が似た感じである。あるいは映画館で映画に関係する人物が亡くなる、山田洋次監督の「キネマの天地」(2021年)や「キネマの神様」(1986年)のラストはそのヴァリエーションと言いたくなる。
因みに川口松太郎はこの映画に影響されて「鶴八鶴次郎」を書いたらしい(本作の本邦公開後の数か月後に発表している)。
ストーリー自体は陳腐と言えば陳腐、同時代的にも新味があるとは言えないレベルであろうが、いずれにしても、見どころはダンスである。色々なダンスが楽しめるのが良く、その中で白眉なのはラヴェルの同名曲に乗った演じられるボレロだ。白いドレスのキャロル・ロンバートと黒い服のラフトが踊り様が妖艶で、圧倒される。クロースアップを大々的に加えたのが効果的だったと思う。
ボレロと言えば、僕らの世代には「愛と哀しみのボレロ」(1981年)です。
1934年アメリカ映画 監督ウェズリー・ラッグルズ
ネタバレあり
「暗黒街の顔役」(1931年)の為に暗黒街映画のイメージが強いジョージ・ラフトが、主演した芸道ものである。しかるに、彼のバイオグラフィーを紐解けば、ダンサーを仕事としていた時代があるので、何の意外性もないことになる。同時に暗黒街との関係が実際にもあったようで、この辺は大変面白い。
第一次大戦前、セオドア・ルーズベルトの帰還を祝って開催された素人演芸会でのタップを披露したラフトが、やがてプロとなってクラブでグロリア・シーと組んでワルツを踊り、パリに渡ってフランシス・ドレイクとタンゴ、ロンドンで最初はサリー・ランド、続いてキャロル・ロンバートでジャズ・ダンスとボレロを披露する。
キャロルを引き連れてパリに戻って自分のクラブを開くや否や第一次大戦が勃発、自らの宣伝になる見込んで、また、すぐに終戦になると思い、実はベルギー出身なので母国の為に出征するが、思わぬ長期戦でマネージャーをする兄ウィリアム・フローリーと共に苦労を重ねるうち、心臓と肺をやられてしまう。
終戦後の1919年、5年ぶりに踊りを披露する日、パートナーのサリーが泥酔状態で踊れず、祝福に訪れた今は既婚者のキャロルが夫レイ・ミランドに許可を貰ってパートナーを務めることにする。彼女を得て素晴らしいボレロを披露した彼は、しかし、無理しすぎて帰らぬ人となる。
楽屋で芸人が亡くなって幕切れという設定の作品は少なくなく、最近観た中でも「喝采」(1929年)が似た感じである。あるいは映画館で映画に関係する人物が亡くなる、山田洋次監督の「キネマの天地」(2021年)や「キネマの神様」(1986年)のラストはそのヴァリエーションと言いたくなる。
因みに川口松太郎はこの映画に影響されて「鶴八鶴次郎」を書いたらしい(本作の本邦公開後の数か月後に発表している)。
ストーリー自体は陳腐と言えば陳腐、同時代的にも新味があるとは言えないレベルであろうが、いずれにしても、見どころはダンスである。色々なダンスが楽しめるのが良く、その中で白眉なのはラヴェルの同名曲に乗った演じられるボレロだ。白いドレスのキャロル・ロンバートと黒い服のラフトが踊り様が妖艶で、圧倒される。クロースアップを大々的に加えたのが効果的だったと思う。
ボレロと言えば、僕らの世代には「愛と哀しみのボレロ」(1981年)です。
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