映画評「風雲児アドヴァース」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1936年アメリカ映画 監督マーヴィン・ルロイ
ネタバレあり

先日の「相続人」のように観たと思っていたら観ていない作品がある一方、本作のように観た記憶がないのに観ている作品が結構ある。印象が弱ければそういう傾向があるのは言うまでもなく、本作もその類であろう。

原作はハーヴィー・アレンの歴史小説。時代背景はフランスで大革命が起きる前後で、イタリアから始まり世界各地に展開していく。

スペイン大公(クロード・レインズ)と強引に結婚させられた大商人ボニフェザー(エドマンド・グウェン)の令嬢(アニタ・ルイーズ)が真に愛する男性の子供を産んで亡くなる。
 大公は子供を捨て、捨てられた子供は修道院で育てられ、思春期前に偶然にも祖父たるボニフェザーに雇用人に出される。その関係は誰も知らない。祖父は娘の面影を宿す少年を可愛がり、アンソニー・アドヴァースと名付ける。
 成長したアドヴァース(フレドリック・マーチ)は、歌の上手な雇用者の娘アンジェラ(オリヴィア・デ・ハヴィランド)と深く愛し合い、密かに結婚する。しかるに、恩人たる祖父の回収しきれない債権の為に彼はキューバへ向かうことになり、突然公演に出されたアンジェラとすれ違いになったまま、キューバを追われる形で向かったアフリカで奴隷商人になり数年を過ごす。
 債権回収が終わったと聞かされた彼は既に恩人(祖父)のいないイタリアに戻るが、青年の正体に気づいた大公と商館の元家政婦(ゲイル・ソンダ―ガード)は遺産を得ようと、パリへ向かう青年をアルプスの崖で殺そうとしたり、冒険模様を繰り広げる。
 最後は今や皇帝ナポレオンの愛する歌姫となった妻アンジェラと再会して旧交を温めるが、権力者の前に諦めざるを得ず、彼は妻に託された息子と共に新大陸アメリカへ向かう。

141分の長尺で、濃厚な恋愛から新大陸や暗黒大陸での冒険、遺産をめぐる権謀術数などロマン溢れる内容は一通り見応えあるものの、その長尺をもってしてもダイジェスト的な印象が否めず、面白いというレベルには達していない。

アドヴァースは、adversity 即ち逆境のことです。偶然にもこの日読んだバルザックの「ふくろう党」も全く同じ時代を舞台にしていた。

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