映画評「世紀の楽団」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1938年アメリカ映画 監督ヘンリー・キング
ネタバレあり
アーヴィング・バーリン絡みの映画は色々と作られているが、本作は彼が自らの曲を全編にちりばめて案出したお話の映画化である。
出世作「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」に合わせて発端は1911年。
サンフランシスコの酒場に売り込みにやって来たタイロン・パワー率いるバンドが、同僚ドン・アメチーが楽譜を忘れて来た為、同じく売り込みにやって来た美人歌手アリス・フェイが持って来た楽譜を勝手に使って演奏をし始め、怒った彼女もその演奏に合わせて歌い始める。
これが好評で契約を勝ち取った彼らは次第に名を上げると共に、アメチーが彼女の為に作った曲を歌う時の仕草で彼女がパワーを愛していることに気づき、彼は身を引く。が、有力プロデューサーに彼女だけが引き抜かれたことから二人は喧嘩別れ、彼女は味方をするアメチーと共にニューヨークへ去って行き、大成功する。
第一次大戦を怪我なく終えたパワーは思いを復活させて今や大スターのアリスに会いに行くが、そこで彼女がアメチーと結婚していることを知り、悄然と去って行く。やがて、朗々とした美声の女性歌手エセル・マーマンを発掘してバンドは他国にも知られる存在となるが、その間に彼女の思いがパワーにあるのを知ってアメチーは離婚を申し出る。彼女もそうした鬱屈の中でスターの座を放り投げて場末の酒場を歌って歩くようになる。
再びメンバーに加えたアメチーから事情を聞かされたパワーは彼女の行方を探すが、その居場所は杳として知れない。バンドがカーネギー・ホールで演奏をするある日、ニューヨークにいたアリスはタクシーのラジオを聞き、思わず降り立つ。アメチーは彼女を舞台袖に発見、一緒にやって来た思い出の曲「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」に参加させる。
こんなに細かくストーリーを書くまでもない他愛ないお話だが、【譲り合い友情ロマンス】(双葉十三郎先生の表現を借用)として清々しさが満喫できるのが良い。パワーの本心に気付いているエセルがその求婚を断り、アメチーの友情と共鳴し合うのが、そこはかとなく楽しめる。
が、眼目は、言うまでもなく、バーリンの歌曲の数々である。
映画ファンには「ショウほど素敵な商売はない」(1954年)でお馴染みのエセル・マーマンが朗々とした圧巻の歌声を披露する一方、アリス・フェイの穏やかな歌声も魅力的。「ブルー・スカイ」における二人の対照的な歌唱が印象深い。
アリス・フェイは1978年の「ラッシー」で、ドン・アメチーは1985年の「コクーン」で復活してベテラン映画ファンを喜ばせた。僕は先輩たちのそういう声により、この二人を憶えたのだった。
1938年アメリカ映画 監督ヘンリー・キング
ネタバレあり
アーヴィング・バーリン絡みの映画は色々と作られているが、本作は彼が自らの曲を全編にちりばめて案出したお話の映画化である。
出世作「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」に合わせて発端は1911年。
サンフランシスコの酒場に売り込みにやって来たタイロン・パワー率いるバンドが、同僚ドン・アメチーが楽譜を忘れて来た為、同じく売り込みにやって来た美人歌手アリス・フェイが持って来た楽譜を勝手に使って演奏をし始め、怒った彼女もその演奏に合わせて歌い始める。
これが好評で契約を勝ち取った彼らは次第に名を上げると共に、アメチーが彼女の為に作った曲を歌う時の仕草で彼女がパワーを愛していることに気づき、彼は身を引く。が、有力プロデューサーに彼女だけが引き抜かれたことから二人は喧嘩別れ、彼女は味方をするアメチーと共にニューヨークへ去って行き、大成功する。
第一次大戦を怪我なく終えたパワーは思いを復活させて今や大スターのアリスに会いに行くが、そこで彼女がアメチーと結婚していることを知り、悄然と去って行く。やがて、朗々とした美声の女性歌手エセル・マーマンを発掘してバンドは他国にも知られる存在となるが、その間に彼女の思いがパワーにあるのを知ってアメチーは離婚を申し出る。彼女もそうした鬱屈の中でスターの座を放り投げて場末の酒場を歌って歩くようになる。
再びメンバーに加えたアメチーから事情を聞かされたパワーは彼女の行方を探すが、その居場所は杳として知れない。バンドがカーネギー・ホールで演奏をするある日、ニューヨークにいたアリスはタクシーのラジオを聞き、思わず降り立つ。アメチーは彼女を舞台袖に発見、一緒にやって来た思い出の曲「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」に参加させる。
こんなに細かくストーリーを書くまでもない他愛ないお話だが、【譲り合い友情ロマンス】(双葉十三郎先生の表現を借用)として清々しさが満喫できるのが良い。パワーの本心に気付いているエセルがその求婚を断り、アメチーの友情と共鳴し合うのが、そこはかとなく楽しめる。
が、眼目は、言うまでもなく、バーリンの歌曲の数々である。
映画ファンには「ショウほど素敵な商売はない」(1954年)でお馴染みのエセル・マーマンが朗々とした圧巻の歌声を披露する一方、アリス・フェイの穏やかな歌声も魅力的。「ブルー・スカイ」における二人の対照的な歌唱が印象深い。
アリス・フェイは1978年の「ラッシー」で、ドン・アメチーは1985年の「コクーン」で復活してベテラン映画ファンを喜ばせた。僕は先輩たちのそういう声により、この二人を憶えたのだった。
この記事へのコメント
☆ アーヴィング・バーリン
“when that man is dead and gone” しか知らんかな?
“ホワイトクリスマス” もそうでしたか?
と思って読ませてもらいましたが、さっき同居人が私の広げ散らかしたレコードの中から何気に一枚選んで針を落としたら 唐突に ”ブルースカイ” が…
何せ歌詞が”blue skies〜” から始まるからアホでもピンとくるという 😅
どんなレコードか気になりますよね?
『AFTER HOURS WITH MISS “D” 』 ダイナワシントンの1954年の録音です。
何十年ぶりかで聴きましたが、これかなり良いです! 物知らずなので、バックで名前を知っているのはクラークテリーとジュニアマンス位ですがそうそうたるメンツらしいです。
>“when that man is dead and gone” しか知らんかな?
以前紹介されたやつですね!
この映画の原題にもなっている「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」も知っているでしょ?
>“ホワイトクリスマス” もそうでしたか?
そうですね。
アメリカの第二の国歌と言われるGod Bless Americaもそうです。
版権に対象になっているかどうか知りませんが、この二曲に関しまともに印税を払って貰ったら、それだけで、ひと財産ですよね。
>同居人
楽しそうで、良いなあ。
>『AFTER HOURS WITH MISS “D” 』 ダイナワシントンの1954年の録音です。
YouTubeにちゃんとありました。
“凄いなビズリーチ”ならぬ、YouTubeという感じ。
レコードとCDで中身が多少違うケースが多いですけどね。
>「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」も知っているでしょ?
多分知りませんね。
と言う事で手持ちのビリーホリデイのレコードをチェックしてみたら何曲かクレジットがありました。ふぅ…
this year’s kisses
cheek to cheek
say it isn’t so 🎶 割と明るい曲調が多い感じですね。
だから例の「あの男が死んだら」もミルドレッドベイリーや浅川マキでしか聴いた事がなかったので真相に気付くのに何十年もかかってしまったのかもしれません。
昨夜you tube で男性が歌っているのを聴いたら、途中で不遜な笑い声が入るので分かり易いかも…
大体、作曲者まで見てないんですよね。自慢じゃないけど歌の入っていないジャズなんかはタイトルさえちゃんと把握していませんし。
>>「アレクサンダー・ラグタイム・バンド」も知っているでしょ?
>多分知りませんね。
うそーっ(笑)
戦前を舞台にした映画にはやたらに使われる曲ですし、日本の紅白でも3回歌われた(弘田三枝子など)ことがあるようですよ。
古い音楽映画によく出てくるアンドリュー・シスターズのバージョンが有名なようです。
正確には、Alexander's Ragtime Bandと言い、アレクサンダー(アレキサンダー)は所有格でした。
>割と明るい曲調が多い感じですね。
同感。
>大体、作曲者まで見てないんですよね。
>自慢じゃないけど歌の入っていないジャズなんかはタイトルさえちゃんと把握していませんし。
それが普通だと思います。
僕もビートルズ関連以外は、タイトルと曲が一致する曲は案外少ないです。ドアーズでも半分くらいしかタイトルが解らない(恥ずかし!)
>うそーっ(笑)
そんなに吃驚されたらこっちが吃驚しますがな。
聴いたことはあるかもしれませんがこの辺の曲は似たり寄ったりで識別が難しくてタイトルは全く知りませんでした。
残念ながら古い音楽が好きな程には古い映画は好きではないのですよ。
なので本作もちょっとだけ観て(お味見程度)まぁいいわ、オカピー先生も7点しか上げてないし…ということで打ち切りました。収穫は若き日のタイロンパワーの爽やかな二枚目振りが観られた事ですね。
半年ほど前に観た古い日本映画で気に入ったのがありまして、こちらで検索したら10年以上前にレビューされていました。
そちらに明日にでもコメントさせてもらいます。
もっと吃驚させますからご期待下さいませ。
>タイトルは全く知りませんでした。
僕もタイトルと曲が一致していたかと言われれば、結構怪しい(笑)
>残念ながら古い音楽が好きな程には古い映画は好きではないのですよ。
おやおや。