映画評「牙狼之介 地獄斬り」
☆☆(4点/10点満点中)
1967年日本映画 監督・五社英雄
ネタバレあり
シリーズ第2弾のモチーフは御用金ではなく、2年前の第二作「獣の剣」と同じく、砂金である。しかし、実際にはお話はこの砂金と殆ど関係なく進行する。
金鉱の見張り役を斬った素浪人孫兵衛(西村晃)や莫連女のお蓮(楠侑子)ら3人が唐丸駕籠に乗せられて移送されていく。これを興味深そうに見ていたのが、知恵の足りない娘お照(藤留美子)を助ける為に道場の不良分子を斬ったばかりの牙狼之介(夏八木勲)である。お照の父親が孫兵衛を裏切った男・甚六(天津敏)。
剣の腕の立つ狼之介が役人に仰せつかった護送警護の役目を無事果たすと、道場主(中谷一郎)が弟子の仇の為に狼之介の前に現れる一方、孫兵衛とお蓮は油断した役人を殺して逃亡する。
不覚を取って甚六一味に捕えられて吊るされた狼之介は、懸命に彼を救おうとするお照に参る。道場主を倒す際にお照は一太刀浴び、狼之介は重傷の彼女を孫兵衛と対峙するその父親・甚六の許に届ける。しかし、砂金に目のくらんだ孫兵衛はお照を人質にするように暴れ回り、結局甚六一味とお照は死んでしまう。
最後に狼之介は孫兵衛を倒すと、空しく現場を去って行く。
これまで観た作品の原案を全て考え出した五社英雄はとにかく金(きん、かね)が好きで、似たような設定ばかりで苦笑が洩れるが、それでも本作は途中まではそれなりに面白い。
ところが、狼之介が護送の役目を終えて孫兵衛と別れる辺りからお話が混乱気味になり、作品の性格も曖昧になって、それが幕切れまで続く。
恐らく眼目は、お蓮の孫兵衛に対する愛情と、狼之介のお照を愛おしいと思う感情が、二重奏を構成しつつ最後のアクションになだれ込んでいくというちょっと気取った見せ方にあるように思うが、一般観客のアクションへの関心と監督の文芸趣味的な狙いが齟齬して空転している感じが強い。
相変わらず俯瞰があるが、今回は五社が好んで撮る女斗美(キャットファイト)はない。
第一作において思い付きで名乗ったような名前が、第二作では本当の名前になったようだ。
1967年日本映画 監督・五社英雄
ネタバレあり
シリーズ第2弾のモチーフは御用金ではなく、2年前の第二作「獣の剣」と同じく、砂金である。しかし、実際にはお話はこの砂金と殆ど関係なく進行する。
金鉱の見張り役を斬った素浪人孫兵衛(西村晃)や莫連女のお蓮(楠侑子)ら3人が唐丸駕籠に乗せられて移送されていく。これを興味深そうに見ていたのが、知恵の足りない娘お照(藤留美子)を助ける為に道場の不良分子を斬ったばかりの牙狼之介(夏八木勲)である。お照の父親が孫兵衛を裏切った男・甚六(天津敏)。
剣の腕の立つ狼之介が役人に仰せつかった護送警護の役目を無事果たすと、道場主(中谷一郎)が弟子の仇の為に狼之介の前に現れる一方、孫兵衛とお蓮は油断した役人を殺して逃亡する。
不覚を取って甚六一味に捕えられて吊るされた狼之介は、懸命に彼を救おうとするお照に参る。道場主を倒す際にお照は一太刀浴び、狼之介は重傷の彼女を孫兵衛と対峙するその父親・甚六の許に届ける。しかし、砂金に目のくらんだ孫兵衛はお照を人質にするように暴れ回り、結局甚六一味とお照は死んでしまう。
最後に狼之介は孫兵衛を倒すと、空しく現場を去って行く。
これまで観た作品の原案を全て考え出した五社英雄はとにかく金(きん、かね)が好きで、似たような設定ばかりで苦笑が洩れるが、それでも本作は途中まではそれなりに面白い。
ところが、狼之介が護送の役目を終えて孫兵衛と別れる辺りからお話が混乱気味になり、作品の性格も曖昧になって、それが幕切れまで続く。
恐らく眼目は、お蓮の孫兵衛に対する愛情と、狼之介のお照を愛おしいと思う感情が、二重奏を構成しつつ最後のアクションになだれ込んでいくというちょっと気取った見せ方にあるように思うが、一般観客のアクションへの関心と監督の文芸趣味的な狙いが齟齬して空転している感じが強い。
相変わらず俯瞰があるが、今回は五社が好んで撮る女斗美(キャットファイト)はない。
第一作において思い付きで名乗ったような名前が、第二作では本当の名前になったようだ。
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