映画評「嘘喰い」

☆★(3点/10点満点中)
2022年日本映画 監督・中田秀夫
ネタバレあり

2022年10月のWOWOWは稀に見るほど不作なので無理無理に観てみたものの、洋の東西を問わず、YAファンタジー系映画は面白くない。お話の為のお話という印象を全く回避できないから、面白くない。
 「007」の嘘、例えば陰謀を企む謎の組織は、実際に存在するかもしれない組織を透かし見せ観客の生活感情に訴えることが多々あるのに対し、この類にはそれがない。最初の、政府をも動かしうる賭け集団という紹介時点でもう見る気が失せた。

原作は有名なコミック(作:迫稔雄)らしいが、原作との比較は映画ファンにはどうでも良い。映画として面白いことが大事である。

その賭け集団を賭郎と言い、そのメンバーを外された横浜流星が、落ちこぼれの若者・佐野勇斗を相棒に加え、台頭著しい元学者・三浦翔平と闘うことに執念を燃やす。その為には賭郎のメンバーシップを取り戻す必要があり、佐野君をだしに命がけの冒険に繰り出す。これ即ち人間狩りが見せ場の第一弾で、やがて本番のトランプゲームに入って行く。

尽くギャンブルに命がかかっているというのが全く嘘っぽくて馬鹿らしい。サスペンスが醸成できているか否か以前の問題である。自信満々の主人公の持つ正義感もそらぞらしい。

YAファンタジーがディストピア的に生命を絡めてくることが多いのは、現実に若者が抱えている現状を反映しているように考えたくなるが、その社会学的な分析が正しいとしてもそれで映画の価値が上がるわけではなく、同じディストピア的賭け映画では一昨年の暮れに観た「カイジ ファイナルゲーム」のほうが大分面白いと思われる。

本作は、若いアイドル系(?)演者がかなり拙い上に、BGMがうるさくて台詞が聞き取りにくいところもあり、どうもいけない。聞き取れたところでこの程度の内容では評価が上がるわけではないものの、音楽の五月蠅さといったマイナスの部分はわざわざハリウッド・メジャー映画を真似しなくてもよろし。

中田秀夫監督作品だがホラーではないと知って観たのだった。しかるに、これなら気分の乗らないホラーのほうがまだ良い気がする。 

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